LINKED plus シアワセをつなぐ仕事
気づける看護師、考える看護師、
提案する看護師を育てたい。
西尾陽子/
集中ケア認定看護師
社会医療法人 大雄会 総合大雄会病院
社会医療法人 大雄会 総合大雄会病院のICUにいる一人の看護師、
西尾陽子集中ケア認定看護師。「私はダメな看護師でした」。
自らを自嘲気味に語る彼女は、今やICUばかりか、
看護部全体の意識を変える存在になろうとしている。
西尾が考える〈看護とは? 看護の可能性とは?〉をレポートする。
「新人の頃は、ただ言われたことをやる、本当にダメな看護師だったんです」と、笑顔で語る西尾陽子看護師。集中治療室(以下、ICU)の主任として、現場の中核を担う現在の姿からは、と ても想像できない言葉である。
本人が言うダメな看護師が、ICUのスペシャリストになるきっかけは何だったのだろう。「以前私は、大学病院の一般病棟に勤めていました。命を左右する状態でICUに入っていた患者さんが、私の病棟を経て、元通りの生活に戻っていく。その姿をたくさん見ながら、ICUって一体どんな看護をしているんだろう?と、ずっと興味を持ってきました」。
その後、平成20年に大雄会に入職した西尾は、翌年、自ら希望して念願のICU勤務となり、高度な全身管理で、重症疾患や手術を終えた患者の生命維持を支える、まさにICUならではの集中ケアに没頭した。そのなかで気づいたことがあると言う。「状態を看る知識、技術とは、基本は一つ。A(気道)B(呼吸)C(循環)D(中枢神経)E(外表や体温)をいかに観察するかです。そしてそれはモニターや検査の数値だけでなく、フィジカルアセスメント、つまり実際に患者さんの身体に触れながら、症状を把握し、異常の早期発見に繋げること。その大切さを知りました」。
さらに、自らの気づきをもっと論理的に理解したいと感じた西尾は、平成25年、集中ケア認定看護師の資格を取得する。集中ケア認定看護師は、患者の病態変化を予測した重篤化予防をはじめ、廃用症候群など二次的合併症の予防、そして、回復のための早期リハビリをリードする、集中ケアのスペシャリストである。
資格取得後、西尾はICU看護の向上に乗り出す。まず力を注いだのが早期リハビリ。「当時のICU看護師にリハビリの意識はほぼありませんでした。ICUの患者さんは状態の変化が激し く、みんなそちらばかり看ていた。しかし、寝たきりだと筋肉はすぐに衰えるので、生活復帰を考えると、早期リハビリは不可欠です。ただし、患者さんの安全も担保しなければならない。そのため、リハビリの開始基準と中止基準を作ったんです。同時に、早期離床ワークショップやシミュレーションを通して、早期リハビリの必要性・注意点を広く周知。それでスタッフの意識が変わり、行動に結びつきました。現在では、スタッフ全員が積極的にリハビリに取り組めるようになっています」。
急性期病院では、全身状態の変化が激しい患者に、濃密な治療や看護を提供し、回復へと導く。だが、高齢患者が急増する今日、ただ治すだけでは許されない。急性期の段階から、患者の生活背景などに目を向け、社会復帰を見据えた医療提供が求められているのだ。
では、看護はどうあるべきか。西尾は言う。「当院では、ICUの段階から医療ソーシャルワーカーが関わる退院支援が始まっています。私たちも退院後の生活を見据えた看護提供に、もっと意識を傾けなければなりません」。
そうした西尾が現在力を注ぐことが二つある。一つは、呼吸ケアサポートチーム。医師・看護師・理学療法士らがチームを組み、呼吸に問題のある患者を対象に、病棟看護師と共同で最良のケア を提供するものだ。もう一つは、ラピッドレスポンス。これは患者が重症化する前徴を発見し、いち早く看護師が介入することで予後を改善する取り組みである。
どちらも、西尾の目的は、ICU看護師の立場から、〈気づける看護師〉〈考える看護師〉〈提案できる看護師〉を育成することにある。「急性期の患者さんがきちんと生活に戻るために、看護師には患者さんの状態を〈悪くさせない〉、〈良くなることを助ける〉ことが求められます。ただ、自らの考える最善の看護を提案し提供するためには、時として医師と議論することも必要です。そのためにも、看護師が知識と技術を高め、その裏づけを持つことが重要になるのです」。
看護部の各種研修では講師役を務める西尾。「机上だけでなく現場に入り込んで、看護の実践に〈活きる教育〉を行うのが私のスタイル」。そう語る自身は特定行為研修
※ 医師の指示のもと、特定行為を手順書により実施することが可能となる。
西尾陽子集中ケア認定看護師。「患者さんに興味を持つこと」の大切さを語る。「患者さんの背景、今の状況をどれだけ理解するか。それを解った上で観察する。そうすれば気づき、考える、そして多職種に提案する。それができるはずです」。
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