LINKED plus

LINKED plus 明日への挑戦者

医療と生活を繋ぐ
医療現場の福祉のプロを育てる。

超高齢社会で重要性を増す
医療ソーシャルワーカーを輩出していくために。

日本福祉大学

ソーシャルワーカーは、日常生活を送るなかで困難や課題を抱えた人とともに、
その解決に向けた活動をする専門家。
そのなかでも、医療機関や介護老人保健施設で活躍するソーシャルワーカーを、
医療ソーシャルワーカーという。
超高齢社会を迎え、さらなる活躍が期待される医療ソーシャルワーカーを
育てるために、社会福祉学部開設60周年の伝統を誇り、全国に多くの人材を
輩出してきた日本福祉大学が、次代を見据え新たな挑戦を始めている。

さまざまな実習機会や模擬カンファレンスなどを通じて
多職種連携の力を養う。

日本福祉大学 社会福祉学部 医療福祉コース(現・医療専修)で学ぶ藤岡千夏は、まもなく卒業を迎える4年生。平成30年度から医療ソーシャルワーカーをめざして第一歩を踏み出すことが決まっている。4年間の学びを振り返り、「貴重な経験がいっぱいでした。とくに医療現場での実習や地域研究、サークル活動などを通じて、ソーシャルワークの広さ、深さを学んだのはとても有意義でした」と話す。藤岡が見学、体験した施設は、病院、精神・身体障害者の支援施設、高齢者のサロン、知的障害児・者の余暇支援と、実に多彩。「さまざまな現場に触れ、仕事のやりがいや大変さを実感しました」(藤岡)。もちろん、キャンパス内でも、仕事に直結する学びを経験した。とくに印象に残るのは、「3年生前期に行った模擬事例のカンファレンス」だと言う。これは、さまざまなゼミの学生が集まり、医師、看護師、医療ソーシャルワーカー、セラピストなどの役にわかれて、複雑な生活課題を持つ患者の事例を検討する、独創的なプログラムだ。「私たちの配役は、医療ソーシャルワーカーでした。まずは数カ所の病院へ取材にでかけ、プロの意見を収集。それを基に、他職種の人とどんな問題を議論すべきか、みんなで頭をひねりました。準備は大変でしたが、情報収集の大切さ、他職種との協働の仕方など、学ぶべきものが多かったですね」(藤岡)。この3年生が行う模擬カンファレンスを見るのは、2年生たち。さらに2年生は後日、同じテーマで、専門職が行う模擬カンファレンスも見学する。学生とプロのカンファレンスを両方見ることで、知識を深める仕組みになっている。

同大学および大学院のOB(平成16年3月修了)で、現在、医療ソーシャルワーカーとして活躍する樋渡(ひわたし)貴晴は、「学生の頃から、多職種連携について学ぶことは非常に素晴らしい経験」と感想をもらす。樋渡自身、大学の学びをサポートするOBの一人。大学に出向き、学生たちと事例について意見交換する機会もあると言う。「僕たちOBとディスカッションすることで、学生のみんなは、医療ソーシャルワークをより強くイメージしてもらえると思います」。

地域医療連携の繋ぎ役として医療のさまざまな場面で
活躍が期待される医療ソーシャルワーカー。

樋渡は大学院修了後、医療法人豊田会に入職。介護老人保健施設で5年、刈谷豊田総合病院で8年勤務してきた。その間に、病院の医療ソーシャルワーカーの仕事はどのように変化してきただろうか。「退院支援は8年前から行っていましたが、違いは入院期間が短縮したことですね。今では、入院中だけで支援が終わらず、医療ソーシャルワークを次のステージ(回復期、慢性期、在宅など)へ引き継ぐ連携が重要になってきました」と話す。また、樋渡は、複雑な問題を抱える人が増えてきたことも実感するという。「たとえば、無保険、身寄りなし、ホームレス、自殺未遂、アルコール依存症、虐待、シングルマザーの妊娠など...。難しい問題を複数抱えるケースも多くあります。そうした場合、医療ソーシャルワーカーが濃厚に介入し、地域の福祉事務所、児童相談所など、あらゆる関係機関と連絡を取り合い、どうすれば患者さんの生活の基盤を作れるかを模索します」。樋渡は病院に勤務しているが、その業務はほとんど院内では完結しない。「ですから、視線は常に地域に注いでいます。大学時代の恩師の言葉を借りれば、〈主戦場は地域にある〉と肝に銘じています。ゆくゆくは医療ソーシャルワーカーも、訪問看護師などと同じように患者さんの自宅を訪問したり、関係機関に患者さんと同行する場面も増加すると思います」と樋渡は将来を展望する。

日本福祉大学が多職種連携教育に力を注ぐのも、そうした医療ソーシャルワークの広がりへの対応が目的の一つだ。社会福祉学部の山口みほ准教授に話を聞いた。「病院、在宅医療など、さまざまな現場で、ソーシャルワークが求められています。そして、そこには必ず、多職種連携が問われます。医療の専門職はもちろん、地域の介護、福祉関係者と協働していく力が必要不可欠なのです」。

同大学の多職種連携教育は、先に紹介した模擬カンファレンスのほかに、他大学との連携プログラムもある。医学部や薬学部を持つ他大学と協力し、医学生、看護学生、薬学生、社会福祉学生などが一緒にグループワークをする機会を用意している。「医療・福祉に関わる多様な専門職の卵と一緒に学ぶことで、学生たちはお互いの距離を縮めます。実はそこが非常に重要で、学生の頃から他職種の卵と出会い、親しみや尊敬の気持ちを持つことが、将来の多職種連携の基盤になると考えています」と山口は説明する。

また、医療ソーシャルワーカーの専門性を高める実習にも力を注ぐ。一般に、社会福祉学部では、社会福祉士(国家資格)になるための実習プログラムが用意されるが、同大学ではその一歩先を行き、医療ソーシャルワーカーをめざす人のための病院実習プログラムを豊富に揃えているのだ。「毎年30人ぐらいの学生が全国各地の病院で実習しています。幸い、本学の場合、OBが全国各地で活躍しているので、実習先ともスムーズに連携できます」と山口は強みを語る。専門性と多職種連携マインドを兼ね備え、地域社会のニーズに応える医療ソーシャルワーカーを輩出するために、同大学はこれからも新たな教育にチャレンジしていく方針だ。

「病院は、福祉と出会える場なんです」と樋渡は言う。「たとえば、経済的に困窮している人が、入院をきっかけに社会保障制度や人と繋がり、貧困から脱け出せることもあります。いろいろな人が訪れる病院は、多様なソーシャルワークを横断的に実践できる舞台です」。

  • ソーシャルワークとは、そもそもどんな意味なのか、山口准教授に聞いた。「ソーシャルワークは、その人らしい生活を送れるように、一緒に考えていく作業だと思っています。そして、その人らしい生活を実現するには、まずその人の生活の基盤づくりが必要。衣食住という生活の基盤をいかに組み立てるかが重要になります」。
  • さらに山口は「実はソーシャルワークとは、非常に創造的な仕事」だと言う。「困りごとを解決する方法は多彩なバリエーションがあります。どんな工夫をするか、というところに個々のクリエイティビティが問われます。そこに仕事のやりがいもあります。また、社会福祉学には、ヘルパーセラピーの原則〈援助する人が、援助される人よりもっと多くのものを得る〉という考え方がある。ソーシャルワークは、いろいろな人生との出会いを、自分の人生の糧にできる素晴らしい仕事です」。

時代のニーズに応える
医療と福祉の新しい教育。

  • かつて病院の役割は、患者の病気を治すことだった。しかし、慢性的な病気、治らない病気を抱える高齢患者が増えた今、病院も治癒だけをめざす施設ではなくなった。患者の生活を見つめ、病気を持ちながらでも在宅で暮らせるように、退院後への道筋を支援することが重要になってきたのだ。そこで問題になるのが、多様な生活課題である。老老介護や低所得、一人暮らしなど、患者が抱える課題は多岐にわたる。
  • 日本福祉大学は、そうした時代の変化を的確にとらえ、生活課題の解決に向けた活動をする専門家、医療ソーシャルワーカーの育成に力を注いでいる。とくに、同大学の特徴は、独創的で実践的な多職種連携教育の推進にある。学生の頃から育んだ多職種連携マインドは必ずや、プロになったときも色褪せることなく、地域医療連携の絆を育んでいくことだろう。

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