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LINKED plus 病院を知ろう

認知症になっても
安心の地域づくり。

岡崎市民病院

認知症の診断・治療、相談業務を担う
拠点病院として、地域に貢献する。

認知症・せん妄の
入院患者を支援する。

「認知症患者さんが、術後せん妄になって困っています。すぐ来てもらえますか」。ある日の岡崎市民病院、外科系の病棟から、認知症・せん妄サポートチームの桝田道人(脳神経内科・高次脳機能内科統括部長)に連絡が入った。桝田はすぐに病棟に向かい、患者の症状を確認した。患者は自分が手術を受けたことを全く覚えていない。自分がどこにいて、なぜ寝ているのかわからず、体についている管を抜いて興奮していた。桝田は患者と目線の高さを同じくして、穏やかな口調で説明したが、不穏な行動は治まらず、術後の治療継続が困難であった。やむなく鎮静剤を処方することを決断した。

認知症はいろいろな原因で脳の働きが悪くなることによって、多様な症状を引き起こし、社会生活に支障が出る状態をいう。とくに、入院や手術をきっかけに、せん妄(一種の意識精神障害)になることも多い。「手術後に暴れては、命の危険もあります。身体拘束をできる限りしないことを大前提として、必要に応じて薬や道具で行動を抑制し、必要な急性期治療を安全に受けてもらえるよう支えるのが私たちの役割だと考えています」と桝田は話す。

せん妄の他、夜眠れない、大声が出る、徘徊する、指示が理解できない、手足の暴力が出てしまう、など、認知症の症状は多種多様だ。しかし、突拍子のない行動でも、認知症患者にはきちんとした理由があるという。「なぜそんなことをするの?と叱る前に、ご本人の話を傾聴し、心情を理解しようとする態度が大切です。たとえば術後せん妄になるのも、ご本人にしたら当然だと思うんです。目が覚めたら、いきなり知らない人に囲まれ、たくさんの管に繋がれているわけですから」と、桝田は患者の気持ちに寄り添う。認知症への理解を深め、認知症ケアのスキルアップを図るために、同院では認知症対応マニュアルの整備や院内勉強会にも力を注いでいる。「院内の認知症ケアのレベルは徐々に上がってきましたが、認知症が原因で、他の病気の治療が充分に行われないリスクは常にあります。それらを少しずつ減らしていくことが必要だと思います」と桝田は言う。

認知症とともに暮らす人を
しっかり支えていきたい。

認知症への理解を地域に広めるために、同院では認知症疾患医療センター(詳しくはコラム参照)を開設して、専門的な診断や治療、相談を通して、認知症とともに暮らす人や家族を支援している。同センターのセンター長を兼任する桝田は次のように話す。「地域の認知症対策で大切なことは、病気の早期発見と予防です。認知症は治らない病気ですが、進行を遅らせるための新しい薬剤がどんどん開発されています。軽度認知障害を早く発見できれば、そうした最新の治療へ繋ぐこともできます。また、どうすれば認知症になりにくいか、ということもわかってきて、認知症予防のプログラムなども開発されています。当センターではすでに、リハビリスタッフが院外に出向いて、認知症予防運動を指導する取り組みにも着手しています。今後は、こうした予防も含め、岡崎市の長寿課や医師会の先生方と連携しながら、当センターが〈検診の窓口〉として機能していきたいと考えています」と桝田は意気込みを語る。

さらに桝田は、認知症疾患医療センターを多職種ネットワークのハブ(中継点)として機能させていこうと考えている。「認知症という病気は、医療だけで解決できるものではありません。リハビリスタッフ、公認心理師、ソーシャルワーカーなど多様な専門家が関わり、医療・介護・福祉の一体的なサポートを提供する必要があります。患者さんを中心に、院内外の多職種が繋がる仕組みを作り、認知症を患っても安心して社会生活を営んでいけるような環境を整えていきたいと考えています」。最後に、認知症とともに暮らす人を支える上で大切なことは何かを聞いた。「認知機能を維持するには、人との繋がりが非常に重要です。患者さんが孤独にならない、孤独にさせない、そんな地域社会づくりをめざしていきたいですね」。穏やかな表情で、桝田はそう締めくくった。

  • 認知症疾患医療センターは、認知症患者とその家族が住み慣れた地域で安心して生活するための支援の一つで、全国に429カ所(平成30年9⽉現在)の病院に設置されている。岡崎市民病院は、平成28年4月1日、愛知県から岡崎市・幸田町を圏域とするセンターに指定された。
  • 同センターでは、保健・医療・介護機関等と連携を図りながら、認知症疾患に関する鑑別診断、認知症に関する専門的な医療・福祉の相談に応えている。

認知症患者を支える
地域ネットワークの必要性。

  • 高齢になっても住み慣れた町で暮らしていく上で、認知症の増加が大きな問題になっている。認知症のケアは一つの組織、一つの職種で実践できるものではなく、地域全体の取り組みが必要だ。
  • 岡崎市民病院が拠点となり、地域の行政や医療・介護に関わる人々が緊密なネットワークを構築していく。その積極的な取り組みが、「認知症になっても幸せ」といえる理想の社会を作る大きな力になるのではないだろうか。

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