LINKED plus

LINKED plus シアワセをつなぐ仕事

看護の高度化で断らない、
地域に根ざした西知多ERの実現を。

<新たな看護局>を創るために。
救急領域から、看護のさらなる高度化に挑戦する。

公立西知多総合病院

二つの声が上がった。「救急看護をやりたい」「集中ケアをやりたい」。
それぞれに準備期間を経て、新病院完成とともに、望む部署での勤務が始まった。
責任感や緊張感は計り知れない。だが、それを越える情熱がある。
東海市民病院と知多市民病院が統合して誕生した公立西知多総合病院。
若い息吹が、看護局、そして、病院の使命達成に全力を注ぐ。

断らない救急を
支える看護を。

佐々木 亮看護師。福祉系大学に学び、社会福祉士、精神保健福祉士の資格を取る。その後、看護専門学校へ。卒業後は、公的病院の三次救命センターに4年間勤めた後、知多市民病院に入職。最初から救急外来勤務を希望した。

なぜ看護師を、そして、救急看護を選んだのか。「地域で生活する人の支援をしたいと思ったのが最初です。それには福祉だけではなく、医療・看護の知識が必要と思いました。看護を学ぶと、今度は急変対応力が必要と考え、それが救急看護に繋がりました」。

公的病院の三次救命センターでは、実に多くの重症患者が搬送されていた。まだ新人の佐々木は、無我夢中で動き回った。だが、知多市民病院で救急外来に立つと、そうした患者はほとんど搬送されてこない。「救急隊に聞くと、知多市民病院は、提供できる医療資源に限界があるからだと言われました。新病院の救急部では、重症患者さんに対応できる力、環境を、みんなで絶対に整えなければと思いました」。その思いを胸に、彼は新病院の救急外来立ち上げに参加。医師やコメディカルとともに体制づくり、マニュアルづくりを進めた。

そして今は、三次救急の看護経験者2名のうちの一人として、スタッフを牽引する。「少しずつ重症患者さんが搬送されるようになり、みんな、自分の今の知識や技術では足りないと、危機感を持つようになったんです。それが毎週30分、そして月1回の勉強会に繋がりました」。何を学び合うのか。「フィジカルアセスメント能力。問診・打診・視診・触診などを通して、症状の把握や異常の早期発見を行い、重症度や緊急度を判断する力です。それに加え、患者さんやご家族への精神的な看護も深めていきたいですね」。

救急外来に来る患者や家族のニーズは多様だ。「当院が<断らない救急>をめざす以上、すべての患者さんを丸ごと受け止め、寄り添い、的確な医療・看護を提供したいと思います」(佐々木)。

リスクを最小限に
留める看護を。

「集中治療での看護をとにかくやりたかった」。そう言うのは池尾昭典看護師である。看護学校卒業後、大学病院で4年間ICU(集中治療室)に勤務。知多市民病院に入職し2年間の病棟勤務を経て、新病院開設とともにICU勤務となった。

集中ケアのやり甲斐を池尾はこう語る。「医師と看護師をはじめとするチームが力を合わせ、重篤な患者さんの命を繋ぎ留めるところですね。心肺機能停止の方、敗血症のショック状態の方、心筋梗塞を起こした方など、リスキーな状態の患者さんばかり。そのリスクを最低限に留め、患者さんをより良い状態にできる限り近づける。そこにやり甲斐を感じます」。

以前、劇症肝炎でICUに入った患者がいた。治療と看護を尽くし徐々に回復に向かい、2週間後に一般病棟へと移った。池尾はその患者を病棟まで見にいったことがある。「ご自分で食事をし、リハビリも始めていらっしゃった。社会復帰が近いんだと思うと、本当にうれしかったですね」。

ICUでの看護で大切なことは何だろうか。「治療は、対象疾患を治すために行います。ただ、それによってどうしても合併症などが起こる場合がある。それを看護師は見逃さないこと。的確なアセスメントで、異常をより早期に発見し、正しく医師に繋いでいく力だと思います」。

とはいえ、ICU経験者は池尾を含め3名。まだまだレベルアップが必要だ。「解らないことを放置せず、小さなことでもすぐに勉強会を開き、みんなで学び合っています。僕は患者さんを看るポイントを指導しています」。

学ぶという面では、池尾自身、看護師になったときから力を入れてきた。日本集中治療医学会にも所属し、最新の知識や技術の習得を怠らない。「新病院になって、ICUに入室される患者さんが増えてきました。まだ通常の入院での術後患者さんが多いのですが、もっとみんなで能力を高め、救急搬送された重症患者さんにも、さらにしっかりと対応できるICUにしていきたいですね」。

忸怩たる思いを乗り越えて。

公立西知多総合病院は、東海市と知多市の二つの自治体が一体となって、平成27年5月に開院した病院である。それまでこのエリア、すなわち、知多半島の北西部は、地域医療において大きな問題を抱えていた。東海市民病院と知多市民病院があったが、両院ともに、医師不足に端を発して、病院機能が低下。救急機能、急性期機能において、充分な力を発揮できない状態に陥っていたのだ。

そのためこのエリアで発生する救急は、知多半島の中心に位置し、三次救命センターを有する半田市立半田病院、もしくは、名古屋市南部にある病院に頼らざるを得ない状態であった。その年月は長く、地域住民も両市民病院から離れ、何かのときには、最初から名古屋市の病院を受診する傾向さえ高まっていた。

そうした状況を打ち破るべく誕生したのが、公立西知多総合病院である。二つの病院を解体し、新たに創り上げた病院だ。高度な急性期機能を有する診療科が30科、そのなかには三次救命センタークラスの対応能力を持つ救急科もある。そして、ICUをはじめ、重装備の手術室、また、先進の診断・治療機器を揃え、重症患者にも充分対応できるための機能が整備されている。

佐々木も池尾も、新しい病院になるまで忸怩たる思いがあったという。重症患者が救急搬送されても、それまでの病院では治療ができず、他の医療圏にある大学病院や公的病院に転院搬送せざるを得なかったのを、その目で見ているからだ。それだけに、今、新病院に対する思いは熱い。地域住民や救急隊からの信頼を勝ち取り、知多半島北西部の中核病院になるために。二人は全力を注ぎ続ける。

創発性、エビデンス、
アセスメント。

この二人に、「救急領域の未来を託している」のは、植村真美看護局長(副院長兼務)である。「救急外来とICU、両部門のスタッフは、目の前の患者さんを救うために、自分たちが最大限何をしたらよいか。そうした問題意識を持って、自主的に勉強会などを行っています。佐々木と池尾は、その象徴ですね」。

そうした体制を今後しっかり固めることについて、佐々木は言う。「僕は確かに救急看護の経験者ですが、まだまだ未熟です。当院での救急看護を、今のレベルに留まらせてはだめだ。そう思い、平成27年9月から救急看護認定看護師の資格取得をめざし学んできます。しっかり学び取って、それをみんなに伝えたい」。そして池尾もまた、「僕自身と、そして当院のICUのためにも、集中ケア認定看護師の資格取得に向け、準備を進めています。エビデンス(科学的根拠)に基づく集中ケアをICUに根づかせたいですね」。

この二人に、「救急領域の未来を託している」のは、植村真美看護局長(副院長兼務)である。「救急外来とICU、両部門のスタッフは、目の前の患者さんを救うために、自分たちが最大限何をしたらよいか。そうした問題意識を持って、自主的に勉強会などを行っています。佐々木と池尾は、その象徴ですね」。

そう語る植村がめざすのは、創発性と、エビデンスを持ったアセスメント能力を有する看護師の育成だ。創発性とは、現状からクリエイティブに何かを創り上げていくこと。エビデンスとは科学的根拠。アセスメントとは、能動的に患者を観察し病状を評価し、判断するプロセスである。「そのために認定看護師資格を取りたいというなら、私は全面的に支援します。帰ってきたとき、彼らの力は看護局の力になる。以前の両病院とは異なる新しい看護局を創るために、自らを高めようとする人材を大事にしたいと思います」。

  • 佐々木と池尾が異口同音に語ったことがある。<救急もICUも経験者は少ないが、スタッフたちは、さまざまな領域のエキスパートが揃っている>。外科、整形外科、手術室、そして、内視鏡検査などの看護に実績を積んできた看護師たちの存在である。
  • 「スタッフ一丸、というにはまだ弱い面がありますが、みんなで互いに教え合うという環境には自信があります」(佐々木)。「僕自身、解らないことは素直に質問できるし、僕への質問があったときは、時間の限りを使って説明します」(池尾)。
  • 植村は言う。「救急で大切なのは、チームで患者さんを救うということ。救急患者さんが搬送されたら迅速に役割分担し、その瞬間には情報を共有していなければいけません。また、ICUでは、看護師が患者さんをマンツーマンで看ますが、緊急時には、一人の看護師のアセスメントをもとに、チームで対応します。今、一緒に学び合う姿勢は、チーム力強化への第一歩と思います」。

  • 公立西知多総合病院の看護局は、今、新しい看護の創造に向け、植村局長はじめスタッフ全員が、さまざまな取り組みを行っている。
  • そのときのキーワードは、<看護アセスメント>である。看護アセスメントとは、看護師が能動的に患者を観察し、患者自身から情報を集め、分析する。そして、何が問題として起こっているかの仮説を立て、必要な看護、あるいは、治療を判断。それを医師に向け提言し、ディスカッションを行うというものだ。
  • こうした能力は、救急やICUだけに必要なものではなく、すべての領域に共通するものだ。だが往々にして、看護師たちは目の前の業務の煩雑さにとらわれ、つい忘れがちになるものでもある。
  • 必要なのは、それを仕組みとして組織に根づかせること。当たり前のこととして、看護師たちの力にすることであろう。公立西知多総合病院において、本文で紹介した二人の看護師が、その牽引役となることを、大いに期待したい。

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