LINKED plus 病院を知ろう
人を繋ぎ、ケアを繋ぐ。すべては患者のために。
JCHO中京病院
酒井幸子がん看護専門看護師。
近藤徳子皮膚・排泄ケア認定看護師。
そして、小久保佳津恵摂食・嚥下障害看護認定看護師。
看護ケアのスペシャリストとして、臨床現場のエキスパートとして、
彼女たちには、医療現場の最前線で働く看護師たちを、
專門知識・技術で支援することが、使命として託されている。
三人の思いと活動を通じて、JCHO中京病院(名古屋市南区)の地域医療連携への目線を追う。
院内の看護の質の向上と、他病院や介護施設などとの連携促進のための活動が求められている、専門看護師と認定看護師。まずはその現状を聞く。
---酒井さんからお願いします。
酒井 がん看護では、平成28年から、エンドオブライフケア(人生の最期までその人らしく生きることの支援)勉強会を、訪問看護師・介護施設看護師の方々を対象に行っています。まず院内で実施しましたが、看護師には必要な知識ですから、病院も地域も同時にやろうと考えました。
近藤 私は、院内外から褥瘡(床ずれ)やストーマ(人工肛門)を持つ患者さんの相談を受けています。地域の訪問看護師さんからの相談も多く、訪問看護師さん向けの勉強会を開き、互いの顔が見える関係にしてきました。
小久保 私は、当初は院内対応だけでしたが、現在は、近隣の介護施設に出向き、摂食・嚥下障害(飲食物の飲み込みが困難)の方を看たり、食形態のアドバイスといった活動をしています。
---そうしたなかで、看護を繋ぐという視点から課題はありますか?
近藤 褥瘡やストーマについては、医療材料一つとっても、病院と在宅では使えるものが全く違います。最初は私自身、在宅の現状、言い換えると病院と在宅との段差をよく解ってなかった。病院にいる看護師たちが、もっと在宅を理解しないといけないと思いました。
小久保 段差については私も同感です。食形態も病院と在宅では全く同じにはできない。病院では使えた食材でも、在宅では例えば肺炎を起こすといったこともあります。そのため、患者さんの病院での食形態や機能レベルなどを、在宅には最初にきちんと提示することの必要性を感じました。地域連携パスのある疾患でも、連携病院同士の食形態のすり合わせは必要ですね。
酒井 がん患者さんの最期に必要な看護ケアは、患者さんの心のあり方で異なります。つまりその方を知らないと、訪問看護師さんと医学的な情報共有はできても、具体的なアドバイスは難しい。2人が言う段差とは少し意味が違いますが、患者情報の量で生まれる差があることは事実です。単に相談を受けるのではなく、勉強会で事例を常に一緒に考え継続的な情報のやり取りを行う。また、病院から在宅への情報提供は、患者情報や治療内容など、正確・丁寧である必要性を感じます。
---そうした現状に対して、自分自身が地域に出ていきたいと思いますか?
三人 思います、とっても!
中京病院での看護ケアを、どのように在宅での看護ケアに繋いでいくか。そのためには、自院だけを見つめるのではなく、在宅医療・介護の現実を、中京病院のすべての看護師が、認識することが必要。試行錯誤を繰り返しながら、そのための歩みは続く。
---3人とも病棟看護師への指導、相談受け付けで日々多忙です。病棟看護師たちがもっと自立すれば、地域に出る時間を確保できますか?
小久保 中を固め、外に出る、ですね。病棟看護師はとにかく忙しくて、さらに専門的な看護ケアを覚えるのは、大変です。でもそうなるとすばらしい。
近藤 要は、高度急性期病院でのゴールは、患者さんの本当のゴールではない。病院のゴール設定を、在宅に合わせる。その認識が大事ですね。
酒井 その第一歩が、病棟看護師が患者さんの退院後の生活を考え、その理解に沿って自分たちがすべきことを考えることかと思います。
専門・認定看護師3人の話から、病院と在宅とのケアの連続性の重要性と問題点、そして彼女たちなりの解決への方向性が解った。それに対して、「彼女たちの努力に加え、本当はもうワンクッション必要なんです」と言うのが、大矢早苗看護部長である。もうワンクッションとは? 「生活により近い病院の存在です。そこと当院が病病連携をしっかり行い、その先での在宅へとなれば、看護ケアはもっと滑らかな流れになると思います。もちろん、生活に依拠した病院とは医療の質の連続性が必要です」。
現状は、どうなのだろうか。「すでにいくつかの病院との連携は進んでいます。いずれの病院も、当院での高度急性期医療の次のステージ、つまり、回復期や慢性期といった領域で、医療の高度化に努めていらっしゃいます。今後はそうした病院、そして、在宅での医療・介護事業所の皆さんとともに、地域の理想的な医療モデルを創造する。それが、JCHO(独立行政法人地域医療機能推進機構)の一員である中京病院の使命であり、その認識と、現場での現実をしっかり見つめ、病病連携、病在連携のモデルづくりに挑戦していく考えです」。
院内の看護水準を高めること。地域の看護水準を高めること。それを担うのは、専門・認定看護師だけではなく、中京病院のすべての看護師に課せられている。そうしてこそ、地域全体で、看護ケアの連続性が生まれる。理想の医療モデル構築をめざし、中京病院の挑戦は続く。
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