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高齢者が穏やかで自立した
自分らしい生活ができる。
そのためのお手伝いをする。

新城市民病院

平成28年4月、新城市民病院に開設された、地域包括ケア病棟。
医療と生活を、病院と地域を繋ぐ〈在宅支援の要〉として、医師、看護師、理学療法士、
そして、MSW(医療ソーシャルワーカー)等が奮闘の日々を送っている。
彼らが見つめているのは、患者の退院後の生活である。

患者に寄り添い、家族を支え、
退院後の道筋をつける。

地域包括ケア病棟の役割の一つは、患者の自宅復帰を支援することだ。そのため、退院後どのような生活をしたいのかを患者や家族に聞き、家に帰ったときに自分らしい生活が送れるよう、看護師、リハビリスタッフ、MSWが退院前訪問を行う。そこでは患者の症状を考慮し、住環境を確認。そしてその後に、ゴール(可能な生活)を設定する。

そのうえで、入院生活において「生活行為のひとつひとつに目を向ける」と言うのは、石田孝子看護師(病棟課長)だ。例えば、食事の形態。今は流動食だけど、もう少し形のあるものが食べられれば、本人もうれしいし、家族も作りやすい。排泄は、おむつではなく、トイレでできるところまで、何とかもっていこうなど。そうしたケアの前提には、容態の観察・評価・判断、異常の早期発見など、看護の本質が根底にある。

石田が大切にしているのは、「患者さんの気持ちに寄り添うこと」だ。「一番近くにいる理解者として、看護師が患者さんの気持ちを代弁していきます」。

リハビリスタッフの半田 裕理学療法士は、どこまで身体機能が回復するかを判断し、リハビリ計画を立て機能訓練を進める。「高齢者は、病気や怪我が治ってからが大事です。機能訓練は、きついこともありますが、新城という土地柄なのか、皆さんとても頑張られますね」。

その訓練をする患者の姿を家族に見てもらうよう、半田は心がけている。「残念ながら元の身体機能、ADL(日常生活動作)に戻れないこともあります。しかし、リハビリを頑張る姿を家族に見てもらうことで患者さんの家に帰りたいという思いが伝わり、ご家族にも心の準備ができると思います」。

だが実際、家族介護には負担がある。それを社会資源の活用により、少しでも軽減するよう考えるのがMSWの前田紋奈だ。「入院前の生活と今後の生活、その間にあるギャップを早い時点から考え、退院したその日から、ご本人・ご家族が困らないよう、どんな介護サービスが必要かを考えます」と言う。そしてそれを在宅医療・介護サービスの関係者に橋渡しする。

そうしたなかで前田は、患者と家族が触れ合う時間を大切にする。「機能回復状況をご家族が知らないと、家で受け入れられるのかなどと不安だけが募ります。現実を知り、それが介護サービス利用でこうできますと、正確にお伝えしていきます」。

実際に患者が生活をする。
その環境が分からなければ、
退院後の生活も見えてこない。
そのための退院前訪問。
実際に自宅に訪問すると、
患者や家族からは
さまざまな質問が出るという。
患者のなかには、「家に帰りたい」
という思いが一層強まり、
その後のリハビリにも力が入る。

地域の実情を見つめ、
地域に必要な医療を提供する。

東三河北部医療圏は、愛知県全体面積の20%を占める広域圏である。人口減少、過疎化、少子高齢化が進み、なかでも高齢化率は県内で最も高い。また、医療資源は少ない上に、長く続いた医師不足により、他の医療圏への患者流出が進んでいる。

そうしたなかで新城市民病院は、へき地医療拠点病院の指定を受け、これまで急性期(病気や怪我の発症直後の積極的な治療が必要な時期)の入院医療の提供を担ってきた。しかし、ますます深刻化する高齢化を前に、医療提供体制の再構築化をすすめている。病院が少ない地域だからこそ、急性期治療を終えた高齢患者の自宅復帰を支援する。そうした医療と生活を繋ぐ拠点として、地域包括ケア病棟を開設した。

開設から1年以上が過ぎた今、先に登場した3人に課題を聞いた。石田は言う。「これまで病棟では、ADLをワンランク上げて自宅復帰をしていただくことを目標にしてきましたが、患者さんが自宅で、本当にご家族と安心して生活ができているのか。つまり、自分たちの支援の評価を確認するために、退院後の生活を拝見しに行きたいと考えています」。半田は言う。「この医療圏には、回復期機能を持った病床がほとんどありません。そういった意味では、この病棟にはリハビリの機能がとても重要視されています。それをしっかり認識し、僕たち自身、医学的リハビリ提供の力を、さらに向上させなければと考えています」。そして、前田は言う。「この病棟の機能、役割を、地域の方々にお伝えし、生活圏から離れることなく、急性期から回復期まで安心なんだと思っていただきたい。そのために出前講座みたいな機会を増やしていきたいですね」。

地域の人々の人生に寄り添うように、石田、半田、前田、そして、地域包括ケア病棟のスタッフたちは、患者と家族の生活を見つめた日々を送っている。

患者にメリハリのある入院生活を
送ってもらうために、
ラジオ体操、手足の運動、そして、
嚥下(食べ物を飲み込む動作)
体操などが、
平日は毎日行われる。
1日3回の食事は、可能な人は、
ベッドから離れて食べてもらう。
それらはすべて、患者に生活を
取り戻してもらうため。
病棟スタッフの思いが
込められている。

  • 本文では、看護師、リハビリスタッフ、MSWの視点から地域包括ケア病棟を紹介しているが、医師の存在が大きいことは言うまでもない。その患者に必要な治療とはなにか、家族がどのような状況なのかなど、この病棟に関わる多職種に問いかけ、チームの連携を高めている。
  • 医師の根本にあるのは、その人がその人らしくあるために医療は何ができるか、という視点だ。そうした医師の思いを、地域の患者のために最大限に活かすことができるよう、地域包括ケア病棟の医療スタッフの士気は高まる。
  • また、地域包括ケア病棟ではレスパイトにも対応している。レスパイトとは、在宅での介護者が日々の介護に疲れたとき、また、家族の事情で一時的に在宅介護が難しくなった際に、患者さんが一時的に入院できるというものである。
  • そうした患者にも、多職種の目線は変わることなく、患者の立場に立ったケアの提供に全力を注ぐ。

患者の退院後の生活を見つめるという、
新たな公益性。

  • 地域包括ケア病棟の誕生により、新城市民病院内で、ある化学変化が起こった。
  • 「病気や怪我への濃密な治療が行われ、看護もその治療が優先となる急性期病棟の看護師たちが、生活への視線を持つようになったのです」。こう語るのは、伊東早苗看護部長である。「高齢者は、安静状態をずっと続けていると、器官や筋肉が衰え、やがてはその機能が失われてしまいます。そうならないよう、早期に離床を促す、車椅子を使って体を動かすなど、退院後を見据えた看護を始めました。地域包括ケア病棟は新しい病床機能であり、急性期の看護師からは、分かりにくいことが多いです。でも、地域包括ケア病棟スタッフの強い思いと行動を、急性期の看護師たちはしっかり見てくれていました」と微笑む。
  • それは、同院が地域の実情を正しく見つめ、自院が持つべき公益性を見定めた結果である。この地域を守り抜くという、病院の強い決意が病院全体に浸透している証だ。

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