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LINKED plus 病院を知ろう

地域医療の
狭間を埋める。

2人の新たな医師を迎え、
地域医療を繋ぐ病院としてさらなる進化をめざす。

医療法人社団 喜峰会 東海記念病院

愛知県春日井市、高齢化著しい高蔵寺ニュータウンの近くに、
急性期医療から在宅支援機能までを有する東海記念病院がある。
その同院に、平成29年4月、2名の医師が赴任。
強い個性を持つ両名を得て、さらなる機能の進化が始まった。

診療の狭間を埋める。地域との狭間を埋める。
2人のアプローチ。

新たに赴任した医師の一人、景山 卓医師は、神経内科領域のスペシャリスト。高度急性期病院や大学病院に勤務し、臨床から研究まで幅広い経験を培ってきた。その彼が、東海記念病院を選んだ理由は何か。「神経内科疾患は、病気が運動機能や認知機能などを侵すことがあります。それにはリハビリや社会復帰支援が必要ですが、自分にはその知識と経験が足りないと思いました」。そこで彼は、関西・東海のリハビリに注力する病院をリサーチ。東海記念病院を見学したとき、大きく驚いたという。「リハビリアリーナ(リハビリ室)がとても広くて明るい。リハビリ機器も多種多様。この病院が、いかにリハビリ、つまりは患者さんの社会復帰に力を注いでいるかが一目で解り、ここに決めました」。

同院で約半年が過ぎた今、景山はリハビリに携わりつつ、自らの専門性を遺憾なく発揮する。「神経内科では、脳血管疾患や認知症なども対象としますが、『何となく痺れる』『ふらふらする』など、原因の解り難い疾患に対しても、可能な限り医学的根拠に基づく診療を行います。信条は、客観的事実と自分の思い込みを混同せず、あらゆる可能性を追究すること。生活を見据えた医療を提供していきたいと思います」。

そしてもう一人、千田由理医師は、内科全般、なかでも高齢者医療が得意だ。在宅医療や地域連携での経験が豊富。彼女も景山と同じく、自ら東海記念病院に来た。

千田が着目したのは、同院が異なる機能の入院病床を持つケアミックス病院である点。「複数の病気を抱える高齢者にとって、緊急時に受け入れてくれる急性期機能、それに続く形で、全身的な医学管理のもと、地域包括ケア病棟、回復期リハビリ病棟で行われるリハビリ、そして、在宅復帰支援はとても重要です。この病院の複合的な機能を活かせば、この地域の高齢者医療がもっと良くなる。そう思ったんです」。

彼女が現在、力を入れているのが、高度急性期病院での治療後、あるいは在宅療養する患者の入院受け入れである。必要に応じては相手先まで出向き、患者の状況を把握。適切な入院機能に結びつける。主治医を決めにくい場合は、自分が主治医として担当。より迅速に入院治療を開始するとともに、円滑な退院にも目を配る。「地域連携部長を務めていますが、医師の指示でないと物事が動き難いこともあります。そんなときは私の出番ですね」と微笑む。

「突っ込むべきところは、きちっと突っ込んで掘り下げる。そうでないといけません」と、景山医師は言う。その言葉の背景には、医師としてのマインド、科学の観点を決して忘れず、根拠のある医学を展開するという、景山医師の根幹がある。その目線は、広く、そして、深い。

病院と医師との必然の出会いを活かし、
さらなる挑戦が続く。

「今日の地域医療には、狭間が生じています」。こう語るのは、東海記念病院 院長の堤 靖彦医師である。「病気と病気、診療科と診療科、医療保険と介護保険、施設医療と在宅医療。その狭間を埋めるために、当院は高度急性期医療と在宅医療の間に立ち続けています。ただ、私自身を含め、当院の医師たちは、元々が臓器別の急性期を学び経験を重ねてきました。そのため急性期以降の病期や在宅医療への目線がどうしても弱く、それが大きな課題となっています」。

そこへ期せずして同時期、景山と千田が加わった。それは、同院にとってどのような意味を持つのだろうか。「景山先生は、見過ごされてしまう病気、病状、異変などに真摯に目を向け、自分が納得するまで追究します。つまり、病気と病気、診療科と診療科の狭間を埋めていく医師。その知識の深さ、患者さんとの関わりの深さは際立っています。千田先生は、地域や生活への目線が非常に強い。自ら地域に出ていく姿勢を持ち、まさに医療保険と介護保険、施設医療と在宅医療の狭間を埋める。抜群のコミュニケーション能力、行動力で、在宅医療従事者と強固な信頼関係を構築していきます。この2人の力が加わり、当院の〈地域医療の狭間を埋める医療〉という歩みが、さらに強まると考えます」。

そうした2人の医師のさらなる活躍には、今後、何が必要だろうか。「もし院内で摩擦が生じたならば、彼らをサポートする仕組みを作る。また、そこに学びの環境を整え、同じ志向の医師を育てていくなど、2人が、医師の臓器別急性期志向に投じた波紋を、守り、そして、大きくしていきたいと考えます」。

景山医師と千田医師。東海記念病院への赴任は、決して偶然ではない。この病院が地域を見つめ続けてきたからこそ、医師としての真情に重なり、2人は同院を選んだのだ。つまりは、必然の出会い。同院にとって、地域医療の狭間を埋める挑戦が、進化する。

千田医師は言う。「高齢者は、医療保険と介護保険、その両方が必要です。それを活かした診療をすると、結果が変わったんです。在宅医療の専門職との関係も築き、それがすべて患者さんにとってプラスとなりました。そこから私に、地域への目線が生まれたんです」。

  • 高齢者にとっては、いざというときを支えてくれる病院が必要である。そこで求められるのは、高齢者に対する幅広い診療能力。そして、原因が解らないものにも対応できる機能。さらには、生活目線を取り入れ、受け入れた患者を生活に戻すという機能など、複合的な能力・機能が必要である。
  • また、場合によって、治療だけではなく、家族をはじめとする介護者への目線も必要になる。高齢者とその家族の生活を守るという発想を持ち、スクリーニング的な見地からの短期入院への対応力も求められる。
  • こうした高齢者に視点を当てた医療は、超高齢社会には不可欠であるが、現実的には、それらすべてをカバーする医療機関は極めて少ない。
  • それを実践する東海記念病院は、地域社会において貴重な存在。地域が有する医療資源をいかに有効活用するかという、地域全体への真摯な目線からすべてを組み立てている病院である。

地域のなかで医師を育てる。
その貴重な一歩が始まるか。

  • 医学部を卒業し医師免許を取った後、医師は2年間の初期臨床研修が義務づけられている。そうした場合、若い医師は、高度急性期病院をめざすケースが多く、中規模の急性期病院、あるいは、ケアミックス病院での研修を求めることは少ない。
  • しかし、彼らが地域医療の第一線で活躍するのはおよそ10年後。いわゆる〈2025年問題〉が現実となった社会である。そこで必要とされるのは、臓器別の専門医療だけではなく、高齢者ならではの複合疾患に対する総合性ある医療である。
  • そうした未来を見つめ、春日井市民病院と東海記念病院は、高度急性期病院とケアミックス病院との共同プログラム構築への会話を進めている。今はまだスポット的な短期間研修だが、もっと長く、ローテーションによる研修を考案中だ。
  • まさに地域のなかでの医師教育。両院の挑戦が一つのモデルケースとなり、他の地域に広がることを期待したい。

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