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医療と生活を繋ぐ拠点を
めざし、確かな一歩を。

桑名・員弁地区で唯一の回復期リハビリテーション病棟。
看護の質向上に挑戦する。

医療法人 尚徳会 ヨナハ総合病院

患者だけでなく、家族の気持ちにも寄り添う大切さを学んだ。
技術は学んだが、厳しすぎる急性期は自分に合わないと知った。
そんな看護師が選んだ、ヨナハ総合病院の回復期リハビリテーション病棟。
そこでの、スタッフが、師長が、副院長が闘い続ける日々を追った。

業務への視点から患者への視点に変わる。
次はリハビリとの融合。

広 敏江看護師は、7年前にヨナハ総合病院に入職。配属は回復期リハビリ病棟である。最初に感じたことは「アレレっ?」だったという。というのは、当時、病棟の看護は分業制。分業制とは、業務ごとに担当を分け、自分の業務だけを行うものだ。効率的である反面、患者全体を看る看護師がおらず、責任の所在が不明確になりがち。病棟リハビリも、意識のある者が少しやる程度だった。

「回復期病棟で、看護師として与えられた仕事、役割は、きちんとやりたい」と考えていた広は、「このままでいいのか?」と悩んだ。そして、数カ月。新しい師長の配属によりその悩みは解消に向かう。「師長さんが面談し『病棟で変えていきたいことある?』と、みんなに聞いてくれたんです。私、『自分の業務ばかり見て、患者さん全体を看ている人がいません。バラバラの看護です』とはっきり言っちゃいました」と苦笑する広。実は、そうした思いは彼女だけに限らず、他のスタッフたちにもあった。そこから病棟の変化が始まったのである。

まずは、担当受け持ち制と部屋受け持ち制の導入。自分がこの患者を看る、という意識と責任感がスタッフに生まれた。業務への視点ではなく、患者への視点に変わったのである。そうした変化は、既存ツールの実効性向上にも繋がった。患者ごとのADL(日常生活動作)ノートに書かれてある内容が、中味の濃いものに変わり、みんなでしっかり情報共有するようになった。

さらに、病棟リハビリにも以前より積極的な取り組みが始まった。患者の入院後1週間を目処に、医師や看護師、そしてリハビリスタッフによるカンファレンスを実施。「患者さんの状態を各職種の視点で評価し、それを出し合ってゴール(目標)を決めるようになりました」(広)。

それでもまだ足りないと広は思う。「他の専門職に対する遠慮があるんです。専門性の区分というか、ここまで立ち入っては悪いかなと思ってしまう。でも、患者さんのことを考えたら、それではいけないんです。まずは看護師の私たちからリハビリスタッフに、『もっと病棟でのリハビリを増やして』『ここ解らないから教えて』と言えば、向こうからも返しやすくなる。そうした積み重ねによって、回復期病棟として、看護師にできることがもっと増えますよね。それをみんなでめざしたいと思います」。

「急性期は患者さんの命を預かる。回復期は患者さんの生活を預かる」。広看護師はそう語る。「回復期では患者さんと長い時間、向き合っていけます。患者さんの一番そばにいて、患者さんの変化を、最初に気づくのも看護師。それを多職種で共有して、より良いリハビリに繋ぎます」。

働く環境整備と、看護の標準化。
もっと看護の質を高める。

リハビリテーションというと、多くの人が〈機能訓練〉を思い浮かべる。「本当はそれだけではない」と言うのは、同院リハビリ科の伊藤隆浩療法士長である。「リハビリの真の目的は、ある部分の機能は損なわれても、残る機能を活かして自分の生活を充実させることにあります。そのためには患者さんとご家族、リハビリスタッフ、看護師が、一緒に新しい生活を考えることが大切。院内に生まれた変化を活かし、看護とリハビリとの融合を図りたいですね」と伊藤は言う。

その看護の変化に加速をつけたのが、岩田広子副院長 兼 看護部長である。岩田は平成29年4月同院に赴任。大学病院、大規模民間病院などで看護部長を歴任した岩田は、看護部を見て「組織の硬直化が目につきました」と言う。そこでまず手をつけたのが、人事制度。従来の枠にとらわれず、適材適所の視点で人事異動を行うと同時に、勤務体制にも柔軟性を持たせた。現在は155を数えるオーダーメードの勤務形態があるという。その一方で、看護の標準化に取り組んだ。看護師の技術習得を支援する教育システムを採用し、そこから同院の独自性の構築を図ったのだ。

「当院の看護師は、地域にとっても大切な人材です。まずは働き続けられる環境を整備し、その上で、エビデンスに基づき物事が進むようにしました。地域で回復期リハビリ病棟は当院しかありませんから、スタンダードを示すことが必要と考えたのです」(岩田)。

岩田はさらに今後を考える。「当院は、平成32年に新築移転を予定しています。当院が持てる機能を最大限に活かし、医療と生活を繋ぐ拠点となることをめざしていますが、それには、地域との結びつきが不可欠です。法人内に在宅支援部門を有していますが、そこだけでなく、地域の在宅で医療を担う方々と手を組まないと、患者さんの本当の幸せには繋がらない。そのためにも看護の質をさらに高め、真のリハビリを実現させていきたいですね」。

岩田は言う。「リハビリとは、たとえ障害を持ちながらも、その人が生きていく力をつけることです。そのためにはリハビリと看護がもっと融合することが必要。それぞれが質を高めることが、患者さん一人ひとりの幸せに繋がるはずです」。

  • 回復期リハビリテーション病棟は、脳卒中、大腿骨頚部骨折、肺炎や外科手術の治療時の安静による廃用症候群などを患った患者を対象としている。発症または手術後2カ月以内、股関節・膝関節の神経や筋、靭帯損傷後は、1カ月以内の入院と定められている。
  • 同病棟では、医師・看護師・リハビリスタッフ・MSW・介護士などがチームを組み、入院後すぐに、起きる、食べる、歩く、トイレへ行くなど、日常生活動作への積極的な働きかけを行う。
  • そこで必要な機能訓練が行われるのは、リハビリ室だけではない。同室でリハビリスタッフから学んだ生活動作を、病棟で繰り返すことで、実際に使える機能として定着させるのだ。それを担うのが、看護師。日常的に積極的に働きかけ、改善を図る。
  • そのときのベースとなるのが、患者の全身管理。常に患者の状態をアセスメント(評価)し、必要に応じて多職種に繋ぐのが、看護師の重要な仕事である。

唯一の病棟だからこそ、
地域全体への目線に期待。

  • 人口の超高齢化を迎えている我が国では、増大する医療費の削減をめざし、急性期治療での在院日数の短縮を図る一方、回復期リハビリの機能を充実させ、より迅速な社会復帰、家庭復帰を図る動きがより強くなってきた。
  • 回復期リハビリ病棟が複数ある地域はあるが、桑名・員弁エリアでは、ヨナハ総合病院にしかない。となると、ますますその重要性が高まるが、岩田副院長 兼 看護部長が語るように、法人内だけの繋がりに固執していては、地域全体のニーズに応えることはできないだろう。
  • 高齢者とその家族にとって、いかに日々の生活を安心・安全に過ごすことができるかは、地域全体での施設医療と在宅医療の結びつきが大きく影響する。
  • 平成32年に新築移転を予定する同院には、地域全体の拠点としてリハビリを見つめ、さらなる充実を図り、今後、地域で誕生するであろう、同病棟のモデルとなってくれることを期待する。

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