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大垣市民病院の診療領域をさらに充実させる、
〈変形性膝関節症〉の専門医。
大垣市民病院
平成29年4月、大垣市民病院が、そして地域が大きく求めていた、
一人の整形外科専門医が同院に赴任した。小林正明整形外科部長。
超高齢社会で、今後ますます増える〈変形性膝関節症〉を専門とし、
〈人工膝関節置換術〉での最大の治療効果に挑み続ける医師である。
大垣市民病院整形外科の入院病棟。80代女性患者がしっかりと歩く後ろ姿を見て、整形外科部長の小林正明医師はやさしく微笑んだ。「あの方、1週間前に手術をしたんですが、手術の翌日からリハビリテーションを開始し、もうあそこまで歩けるようになりました。順調な回復です」。
その患者の疾患は、変形性膝関節症。膝の軟骨が磨り減り、強い痛みが伴うもので、原因は加齢、肥満による膝の負担の増加、怪我の後遺症などがある。膝の痛みゆえに歩行が困難な状況となり、日常生活動作が低下して生活全般に大きく影響する。彼女が受けた手術は人工膝関節置換術。骨を切って人工関節に取り替えるものだ。
小林医師は言う。「人工膝関節置換術のメリットは、疼痛を除去し、関節の変形を矯正して膝の安定性を改善することです。もちろんいきなり手術を勧めるわけではありません。X線検査やMRI検査を行い、症状と合わせて確定診断し、患者さんに保存療法(薬物療法、運動療法など)、手術療法など、複数の治療法、そのメリット・デメリットを説明します。当院の場合、診療所で保存治療を受け、効果が少なくなった方が紹介され受診しますから、手術を選ぶ方がほとんどですね」。
人工膝関節置換術後の長期成績は、手術の手技に大きく左右される。より良い結果を得るには、人工関節の正確な設置や膝関節内外側の靭帯バランスが重要な意味を持つ。そのため、小林医師が手術に活用するのが、ナビゲーションシステムである。これは治療する部位と手術器具の位置関係を、コンピュータにより正確に計測、モニター画面上に表示するものだ。
小林医師は、これまで大学病院の准教授を長年務め、人工膝関節置換術では20年以上の経験と高い治療実績を挙げるベテランの専門医。進化を続ける置換術の最先端知識や技術には、常に真摯に目を向け、自らの技術水準向上をめざし続ける。
「生命に影響する疾患と異なり、変形性膝関節症の手術は、誰かに説得されて受ける手術ではありません。しかし、自分一人で痛みに耐え、自分の意志で歩くこともできず、周囲の人に迷惑をかけないよう生活の範囲を狭めるなど、明らかに生活の質が低下していきます。そうした経験を経て置換術を受ける決意をした方に、私は、その人に最も合った手術で、最良の結果を提供したいと考えます」。
変形性膝関節症、そして、人工膝関節置換術。これは高齢社会における象徴といえるかもしれない。本人しか解らない強い痛み。自分一人で歩けないという苦しみ。そうした高齢者の生活を、そして、人生をしっかりと見つめる、小林正明医師。その存在は、地域の光である。
大垣市民病院の整形外科は、外傷疾患の患者が多数訪れる。だが実はそれ以上に多いのが、変形性膝関節症の患者である。他科の患者のなかにも、この疾患を持つ人は多い。今後、ますます進展する高齢化に伴い、こうした患者の急増は予測に難くない。もちろんこれまでにもその対応に大きな力を注いできたが、西濃地域の基幹病院である同院においては、この領域のさらなる診療体制強化は、重要課題の一つだった。
そこに平成29年4月に赴任したのが、小林医師である。「高齢者のADL(日常生活動作)とQOL(生活の質)を高めることは、市民病院としての責務の一つです。膝関節症は、合併症を伴ったり、また、高齢者特有の複合的な疾患を抱えていたり、というケースもあります。当院ならば、そのすべてに応えることができる。また、より早く生活に戻るのに大切なリハビリテーションも、当院では手術した翌日から開始することが可能です。バックに高度急性期診療が可能なあらゆる診療科、治療領域を持つ当院だからこそ、安心・安全の治療を提供することができます」。
小林医師の赴任により大学病院レベルの治療体制がさらに強化された、大垣市民病院整形外科。今後はどのような展開を、見つめているのだろうか。「保存療法は地域の診療所で、手術が必要になったら当院で、という連携関係を作りたいですね。患者さんに一番近い存在の診療所医師と、当院の専門医がいわばチームを組み、高齢患者さんの生活を守りたいと考えます」。
そうした思いの一つとして、小林医師は、地域の医師会が主催する、西濃整形外科病診連携カンファレンスで特別講演会を行う。「現在はここまで治療でき、ここまで回復できるということを、お話しします。診療所の医師が理解してくだされば、地域の方々も安心して手術に臨むことができますから」。力を込めて小林医師は語った。
人工膝関節の素材は、近年、大きく変わってきた。手術手技も進化を遂げている。「僕がこの手術を始めた20年前に比べると、大きく変化しました。もちろん、エビデンス(科学的根拠)があるものはどんどん取り入れます。でも実験的なことは、やりません。〈成績が一番担保できる手技〉。それが私の信条です」(小林)。
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