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LINKED plus 病院を知ろう

東三河の最後の砦で育む
〈ジェネラル〉という礎。

望む診療科、専門分野...
それぞれが描く医師の道を、臨床研修で得た総合性が支える。

豊橋市民病院

豊橋市民病院は、身近な市民病院であると同時に、東三河の最後の砦として住民の命を守っている。
患者数は、年間のべ75万人。
軽症から重症、希少な疾患まで、多様な患者が訪れる。
この病院で、専門医をめざし、日々奮闘する3人の若手医師に話を聞いた。

専門の道へ進み、
3それぞれの領域で切磋琢磨する。

豊橋市民病院では、2年間の卒後臨床研修を終えた医師の約8割が同院に残り、希望する診療科で3年間の専門医研修を受ける。そのうちの一人、出井秀幸(専門医研修3年目)は、一般外科で腕を磨く。外科医を志したのは「手術で病気を治すことに魅力を感じた」から。消化器領域を中心に、これまで豊富な手術を経験。指導医と一緒に、難易度の高い膵頭十二指腸切除術(膵臓、胆管、十二指腸に発生したがんや腫瘍を切除する術式)を執刀したり、手術支援ロボット・ダヴィンチを用いた直腸がんの治療にも携わったという。「開腹手術も腹腔鏡手術(お腹に小さな孔を数カ所開けて、管や小型カメラを挿入し行う手術)もバランス良く体験できるのが当院の魅力。まだまだ学ぶことだらけですが、着実にスキルアップしていると思います」と話す。

出井の同期の木村 瞳(専門医研修3年目)は、子ども好きというシンプルな理由から小児科へ進み、日々専門性を高めている。同院の小児科は、小児病棟の他に新生児の病棟を備えているのが大きな特徴。「新生児から年長児まで診るので、疾患が幅広く、重症度も多様で、豊富な症例を経験しています。とくに在胎26週以下のような非常に未熟性の高い早産児や、超低出生体重児の治療を学べるのは貴重な体験だと思います」。また、専門医研修を始めて、外来診療も任されるようになった。「自分一人で患者さんを診て、自分の責任で帰すわけですから、責任は重大です。判断に迷う場合は必ず上の先生の指示を仰ぎ、小さな病気も見逃さないよう心がけています」と表情をひきしめる。

出井、木村の1年後輩にあたる小笠原雅彦(専門医研修2年目)は、総合内科へ進んだ。小さい頃に腰椎を患い、病院通いをしていた小笠原。そのとき出会った主治医が、「友達と一緒に思いきりグラウンドを走り回れない」という辛い思いに寄り添い、常に励ましの言葉をかけてくれたという。「あの先生のように、患者さんの痛みや苦しみを理解できる医師になりたい」。それが小笠原の原点にある思いだ。さらに、卒後臨床研修の2年間、救急外来の最前線で多くの患者を診療した経験が、小笠原の決意を固めさせた。「救急患者さんのなかには、何かの病気ではあるけれど、どの診療科にもあてはまらないケースがたくさんありました。総合診療の力を養い、そういう人たちを一人でも多く、適切な治療に結びつけたいと考えています」。

「豊富な症例数を謳う臨床研修病院は数多くありますが、当院は、経験と座学のバランスの良さも魅力です」と出井。「医師の数が多いので、外科は2チームにわかれて当直を担当します。時間的にも体力的にも余裕があるので、自分の臨床経験を振り返り、勉強する時間もしっかり確保できます」。

専門医に必要なのは
患者を見つめるジェネラルな視点。

それぞれの専門の道を歩む3人だが、「専門医として、大事な力は何だと思うか?」と尋ねると、共通して「ジェネラルな(総合的な)視点」という答えが返ってきた。出井は、「外科医に必要なのは、迅速で総合的な判断」だと言う。「患者さんの全身を診て、緊急手術が必要かどうか、どんな手術が必要かを瞬時に判断できないといけない。その的確さが患者さんの予後に大きな影響を与えます」。木村は、「小児科医に必要なのは、子どもの全身状態を診る力」だと話す。「検査データに惑わされず、ぐったりして元気がなければ、病気が隠れている可能性を考えます」。一方小笠原は、総合診療医として患者の全身とすべての問題に向きあう力を重視する。「患者さんを最初に診たときの第一印象で、重症度はもちろん、どんな問題を抱えて来院したか、ということまで察知できる力を身につけたい」と話す。

3人が求めるジェネラルな視点は、シミュレーション教育などで身につくものではなく、現場で場数を踏んで初めて習得できるものだ。卒後臨床研修の早い時期から救急の最前線に立ち、軽症から命に関わるような重症まで、圧倒的な臨床経験を積んできたからこそ、その重要性を実感できるといえるだろう。

ジェネラル・マインドを磨きつつ、3人がめざすのは、それぞれの専門分野で臨床のプロになることだ。「外科医として一つの臓器に特化して、誰にも負けないスキルを習得したい」と出井が言えば、「小児科のなかで何か一つ得意な専門分野を掘り下げたい」と木村は話す。その横で小笠原は、「将来的には医学教育にも携われる総合診療医に...」と大きな夢を描く。3人が将来、どの分野に進もうとも、ここで培った総合性と専門性が武器になるだろう。「医師の学びにはゴールがない。もっと成長したい」と口を揃える3人。その瞳には、密かな自信と挑戦心が間違いなく宿っていた。

豊橋市民病院は、希少な症例・難易度の高い症例から、コモンディジーズ(一般的な病気)まで、多種多様な症例が集まる東三河の拠点病院である。研修医たちはその環境のなかで、基礎的な診療能力を磨き、高度専門医療に触れる。ここには、真の意味で臨床のプロを育てる環境が用意されている。

  • 豊橋市民病院に多種多様な症例が集まるのは、東三河エリアの特別な事情にある。人口76万人の地域に、三次救急を担う病院や600床以上の大規模な病院は、豊橋市民病院がただ一つだけ。同院は文字通り、東三河の最後の砦という強い使命感を持ち、軽症から重症、稀な疾患まで、どんな状態の患者も断ることなく受け入れている。
  • 質、量ともに豊富な臨床経験と並んで、教育環境の充実も特徴の一つだ。平成28年9月、〈シミュレーション研修センター〉を開設。ここには実技を磨くスキルスラボが作られ、研修医をはじめ医療スタッフたちが日々、救急処置、内視鏡検査など、高度な医療行為のトレーニングを積んでいる。加えて、指導医の層も厚い。医師不足が指摘される産婦人科、小児科、麻酔科などの診療科でも充実した指導医がおり、研修医教育にあたっている。

専門医だからこそ
求められる総合性。

  • かつて日本の医療は、治療でどこまで寿命を延ばせるかに主眼が置かれていた。しかし、超高齢社会を迎えた今、複数の疾患を抱えた人の健康寿命(健康上の問題がない状態で日常生活を送れる期間のこと)をどうすれば延ばせるか、どんな治療を選択すれば、その患者を幸せにできるか、というところに価値観がシフトしてきた。
  • そうした時代にめざすべき専門医の姿は、特化した領域で高度な技能を発揮するだけでは不充分といえるだろう。患者の全身を診て、話をよく聞いて、どんな治療が最も適切かを検討し、治療方針を定めていくことが求められる。豊橋市民病院は、そうしたジェネラル・マインドを重視し、圧倒的な臨床経験を通じて総合的な判断力が身につくように促している。将来、同院で育った総合性を備えた専門医たちが、超高齢社会の最前線で活躍している姿を期待したい。

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