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LINKED plus 病院を知ろう

地域医療の最適化への
新たなる挑戦。

患者支援センターを開設し、
入院から在宅療養までずっと患者を支え続ける。

社会医療法人 財団新和会 八千代病院

救急・急性期から、回復期、慢性期、そして在宅ケアまでを継続して支援する
〈スーパーケアミックス〉を展開する八千代病院。
〈地域医療の最適化〉をめざし、常に先進的な取り組みを実践する同院が
「患者支援センター」を開設し、PFM(ペイシェント・フロー・マネージメント※)
本格的な取り組みに着手した。その狙いと目的とは...。
※入院前から患者の病状や生活状況を把握し、
適切な病床の提供から退院支援までを、一貫して支援するシステム。

入退院支援、地域連携、医療福祉相談という
3つの機能を集約。

平成29年12月4日、八千代病院の正面玄関右手に、「患者支援センター」という新しい看板がお目見えした。ここは、PFMを実践するためのコアステーション。これまで別々だった入退院支援、地域連携、医療福祉相談の機能を一つに集約し、さらにパワーアップさせた。

同院がめざすPFMとは、どのようなものか。患者支援センター・副センター長の松本佳代(看護副部長)に話を聞いた。「病気の発症から入院、退院、在宅療養と、患者さんはステージを移りながら生活を取り戻していきます。また、療養中に再び病状が悪化することもある。そうした流れを一括して管理することで、継続ケアの質を高めるのが目的です」。たとえば、外来で入院が決まった場合、従来は外来の看護師が入院の説明をしていたが、現在は患者支援センターの療養支援看護師が面談し、病状や課題を把握。その後も常に患者の病態変化を把握し、入院中の転棟、退院後の在宅療養まで、情報を管理する。「私たちがめざすのは、退院後も継続して、地域全体でPFMを展開することです」と松本は意欲を燃やす。

そのPFMを側面から支えるのが、地域連携と医療福祉相談の機能だ。地域連携課は地域の医療資源とのインターフェイス(橋渡し)、医療福祉課は地域の社会資源とのインターフェイスを担う。患者支援センター・副センター長の深谷裕都(地域連携課・課長)はそれらの機能が一つになるメリットについて、次のように話す。「地域連携課は病院の入口と出口で、安城更生病院などで高度な専門治療を終えた患者さんの転院や、かかりつけ医からの紹介患者さんの入院を受け入れたり、退院患者さんをかかりつけ医にお返ししたりします。医療福祉課は、患者さんの経済的、社会的課題の解決をサポートします。私たちが一カ所に集まって情報共有することにより、患者さんに必要な支援サービスを過不足なく提供でき、繋ぐことができます」。たとえば、退院は決まったが、介護保険の申請ができていない、家族への介助指導が進んでいない、かかりつけ医への報告書に不備がある、といった〈ヌケ〉や〈モレ〉も徹底的に防ぐことができる。「患者支援センターの使命は、患者さんをお待たせすることなく、いつでもどんな状態でも入院を受け入れる。反対に、退院するときは生活や介護に困らないようにバックアップする。患者さんの生活を継続して守ることだと思います」(深谷)。

患者支援センターというと、一般には入院前から退院までの患者の流れの管理に主眼を置くことが多い。しかし、八千代病院は退院後の在宅療養にも目線を広げる。療養中に病状が急変したとき、家族の介護疲れ解消を目的にしたレスパイト入院が必要なときもスムーズに支援できるような仕組みを追求している。

院内外に存在する垣根を
一つひとつ外し、繋げていく。

同院が患者支援センターを開設した根底には、〈地域医療の最適化〉という思想がある。今日の医療は、地域の病院、診療所、在宅サービス事業所などが役割分担して連携する形だが、そこには、どうしても不足する機能が存在する。同院はその〈穴〉を埋める役目を率先して担い、地域に足らざる医療・介護機能を整備してきたのだ。その結果、同院のある安城市を中心としたエリアは、地域連携ネットワークの先進地としても知られている。

しかし、それでもまだ地域連携は完璧ではなく、「いろいろなところに垣根があります」と話すのは、患者支援センター・センター長の庄田 基医師(脊椎・脊髄疾患センター・センター長を兼務)である。「院内では部署や職種間の垣根、院外では病院、診療所、在宅サービス事業所などの間に垣根があります。それらを一つひとつ外し、本当の意味で切れ目のない支援を実現するために、患者さんを継続して支える〈患者支援センター〉が重要な鍵を握ると思います」。

生まれたばかりの組織を大きく育てていくために、庄田はどんな戦略を掲げているだろう。「第一に、人づくりです。センターを動かす基幹メンバーを育て、患者支援の質を高めていきます」。その一環として、同センターでは事務職員を順次、院外で開催される〈医療対話推進者研修〉に派遣。患者に寄り添うマインドと対話力を持つ職員の養成に力を注いでいる。実際、PFMは一つの医療職で完遂できる業務ではない。看護師、医療ソーシャルワーカー、事務職などが自分の守備範囲を超えて、お互いにオーバーラップしながら仕事を進めていく。いわば、業務のノリシロを広げることで、患者支援に決して〈穴〉を作らない体制を作っていこうとしている。「形だけの患者支援センターではなく、真の意味で地域の患者さんの安心を支えるセンターにしていきます」。庄田は力強く抱負を語った。

患者支援センターの開設にあたり、庄田センター長は「心と体を一歩前へ」というスローガンを掲げた。「患者さんにとって入院は〈不安・不便・不幸〉を意味します。それらを解消するには、職員一人ひとりが優しさを持って手を差し伸べること。そんなマインドを高めるよう職員たちに呼びかけています」。

  • 八千代病院は常に地域の必要性を見つめ、斬新な発想で先駆的なチャレンジを続けている。患者支援センターと並んで、昨今の注目すべき取り組みは、八千代リハビリデイサービス彩(いろどり)の運営だろう。ここは、機能訓練などの運動を中心とする一般的な短時間通所リハビリテーションとは一線を画す。高齢者の生活にフォーカスし、家事や趣味などの作業に重点を置いて、日常生活動作の維持・向上を図っているのだ。
  • 彩の狙いは、高齢者の活力を引き出し、豊かに生きるためのお手伝いをするとともに、高齢者の健康に問題が生じたとき、迅速に医療に繋ぐため、地域にアンテナを張ることだという。常駐する看護師や理学療法士、作業療法士、介護福祉士が利用者の体調変化を観察し、気づき、その悪化を防ぐ。同院は超高齢社会のニーズに応え、彩を核に地域住民の健康寿命の延伸に挑戦している。

地域の生活を守るための
患者支援センター。

  • 今、急性期病院を中心にした多くの病院で、PFMの概念が導入され、「患者支援センター」が開設されている。そうした他院の事例と比べ、八千代病院の患者支援センターの特徴は、〈地域を見つめ、地域と対話し、地域の生活を守る〉という、揺るぎない使命感にあるだろう。
  • 同院では、PFMによって平均在院日数の短縮化を図る、という以上に、〈地域住民が困らないこと〉を第一に優先する。退院する患者がスムーズに地域に戻れるように、複数の病気を持ち介護も必要とする人が安心して療養できるように...。患者情報を一元管理する患者支援センターが司令塔となり、地域住民を一貫してサポートしていこうとしている。
  • 超高齢社会を迎え、地域医療の課題の一つは、療養中に病状が悪化した高齢患者を受け入れる病院の体制づくりだといわれている。その仕組みづくりにおいても、この患者支援センターが大きな役割を発揮するのではないだろうか。

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