LINKED plus シアワセをつなぐ仕事
〈学びたがり〉と〈教えたがり〉が集まった
最強の教育環境。
大竹正紘/
初期研修医
社会医療法人 大雄会 総合大雄会病院
平成29年4月、総合大雄会病院で初期研修医(※)として、
医師人生の第一歩を踏み出した若者がいた。大竹正紘医師。
彼はこの1年間でどんなことを学び、これからどんな医師になろうとしているのだろうか。
貪欲な姿勢で学び、ダイナミックに成長する大竹の日常に迫った。
※大学を卒業後、国家試験に合格した医師は、臨床現場で研修(臨床研修)をし、
基礎的な診療能力を養う。臨床研修には、初期研修(卒後1〜2年目:必修)と後期研修(卒後3〜5年目)がある。
「最初は、普通の風邪かなと思ったんです」。そんなふうにエピソードを語り出したのは、初期研修医の大竹正紘だ。患者は救急外来を訪れた、20代の男性だった。最初に診察した大竹は、咳などの症状から風邪を疑った。ところが、かたわらにいた指導医の後藤礼司(感染症科診療部長 兼 循環器内科医長)から「待った」が入る。「念のためにレントゲンを撮ろう」と後藤は言い、その結果、肺炎であることがわかったのだ。「後藤先生は、患者さんの発汗量や脈拍の速さまで診ていたんです。すごく勉強になりました」と大竹は振り返る。
大竹は平成29年4月の入職以来、各診療科を順番に回るとともに、救急外来を主戦場として診療の基本を学んできた。救急外来では、冒頭に紹介したように、研修医がファーストタッチ(初期診療)を担当。上級医のサポートを受けながら、軽症から難しい病態まで多様な患者を診て、幅広い傷病に対応できるジェネラルな力を養っている。「救急外来でも病棟でも、診療の最前線に立たせてもらう場面が多く、いい刺激を受けながら学んでいます」と大竹は手応えを語る。実践の機会が多いのは、手技においても同様だ。「たとえば、循環器内科では、上級医の手厚いサポートを受けながら、すでに20例以上の心臓カテーテル検査に携わりました。着実に成長している、という実感がありますね」。
大竹は非常に勉強熱心だ。大学時代に使っていたノートを、全部タブレット端末に入れて持ち歩いている。「患者さんを目の前にすると、大学で学んだことはこういう意味だったんだとわかります。教科書の知識と臨床経験を照らし合わせるのが一番の勉強法です」。また、教科書ではわからないことは、その道のエキスパートにどんどん質問する。「上級医はもちろん、コメディカルの皆さんもすごくサポートしてくれます。たとえば、『エコーを勉強したい』と言うと、臨床検査技師さんがつきっきりで教えてくれたり、『細菌を勉強させてください』と言うと、『いつでも検査室においで』と言っていただける...。垣根が低く風通しのいい組織なので、誰にでも気軽に質問できますね。いや、もしかして、ここはそもそも〈教えたがり〉の人が多いんだと思います。僕たち研修医は〈学びたがり〉が多い。それに答えてくれる〈教えたがり〉の人も多い。こんないい環境はめったにないのではないでしょうか」と笑みをこぼす。
「ここに来て大正解だった」という大竹だが、実は同院は第一志望ではなかった。東京出身で浜松医科大学(静岡県浜松市)を卒業した大竹は、初期研修医の一次募集で、都内の有名病院を中心に選び、いくつか応募した。が、すべてアンマッチ(学生の希望と研修病院側の希望が一致しない)だったのだ。「それはもう、すごくへこみましたね」と苦笑いを見せる。心機一転、父親が単身赴任している愛知県までエリアを広げて、研修先を検討。そのなかに、総合大雄会病院があった。「選んだ決め手は、病院見学でした。診療科を見学したとき、上級医の先生が患者さんの症状について、『これはどういうことだと思う?』と、いろんな質問を投げかけてくれたんです。見学に来ただけの僕をお客さん扱いせず、一人の医師として扱ってくれる。すごい病院だなと衝撃を受けて、ここでならしっかり学べると確信しました」。
大竹は今、研修2年目に向けて新たな熱意を燃やしている。「楽しみなのは、1カ月間、愛知医科大学病院の高度救命救急センターに行くこと。そこでドクターヘリに乗って、救命救急の最前線の医療を学ぶ予定です」。ドクターヘリの研修は、同院の研修プログラムの一環なのだろうか。「いや、自分で見つけて、指導医の先生に申し出たら、『ぜひ行ってきなさい』と背中を押されました」。自主的に学びたいと言えば、思いきり応援する。実に懐の深い教育環境だといえるだろう。最後に、将来どんな医師になりたいか聞いてみた。「今、一番興味があるのは循環器内科ですね。そのなかでも、〈これだけは誰にも負けない〉という得意分野を見つけ、オンリーワンの医師になりたい。いずれは臨床研究にも携わり、研鑽を積もうと考えています」。大きな野望を胸に、大竹は未来へ飛躍する。
医師に必要なのは「勉強し続ける能力」だと大竹は言う。「医療は日々、進歩しているので、たえず新しい知識を吸収しなくてはなりません。勉強すればするほど、また新しく勉強したいことも見えてきます。生涯、勉強し続けることで、人間としての深みも増していくのではないか、と考えています」。
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