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LINKED plus 病院を知ろう

最善のがん医療を、
地域で完結する。

愛知県がん診療拠点病院。
放射線治療体制を強化し、
地域のがん診療を支える。

愛知県厚生農業協同組合連合会
江南厚生病院

尾張北部医療圏の北部エリアの拠点病院 江南厚生病院は、
平成30年、〈愛知県がん診療拠点病院〉の指定を受けた。
放射線治療医、放射線治療機器の最新機種を増強し、
〈地域で完結するがん医療〉をめざし続けてきた同院の躍進が始まる。

2名の放射線治療医、
最新の放射線治療機器による高度医療を実現。

江南厚生病院では、平成30年6月に新しい放射線治療棟が竣工。放射線治療機器トモセラピーの最新機種ラディザクトが導入され7月より稼働した。ラディザクトとは何だろうか。第一放射線科部長 松井 徹医師は言う。「放射線治療のなかに、IMRT/強度変調放射線治療があります。これはがんの形に合わせて、放射線の強さを変えながら、正常な組織を避け、がんのみに放射線を与える照射方法です。このIMRTの専用機として誕生したのがトモセラピー。その最新機種が、当院が導入したラディザクトです」。

ラディザクトの特徴はどこにあるのか。「トモセラピーは、患者さんをベッドに乗せて、動かしながら放射線を当てていきますが、最新機種のラディザクトでは以前の機種に比べ、一定時間に出せる放射線量が増え、照射時間でいうと2割程度短縮を図ることができます。つまり、その分患者さんの拘束時間は短くなります。また、放射線量のメリハリもつけやすく、副作用の増加を極力減らすことができます」。

ラディザクトによるIMRTは、固形がん、血液系のリンパ腫をはじめ、通常、放射線治療に適応される、がんのほぼすべてが対象となる。「とはいえ、決して万能ではありません」と松井は言う。「放射線治療すべてにいえますが、がんの進行状況、また、併用している抗がん剤、これまでの治療内容などによって、他の治療法が良い場合があります。要は、患者さんにとってどれだけのメリットがあるかが大事です。私は事前にそれを確認することはいうまでもなく、患者さんを診察する際、ご本人の思いをお聞きするとともに、リスクも丁寧にご説明し、きちんとご理解いただいた上で、患者さんに決めていただきます」。

松井は同院が大学から招聘した放射線治療医。7月からは放射線治療医がもう一人赴任し、松井と2人体制で放射線治療にあたる。これまで同院ではできなかったIMRTだが、これからは地域にとって、「通える病院で治療ができる」体制が整えられた。

「放射線治療の優位性は、身体を切らなくてもよいところ。身体の機能を保つことができる、その可能性があります」と、松井は言う。「大切なのは、患者さんの治療に対する価値観です。どういう治療がよいか解らない、そんな患者さんも多くいます。考える時間はきちんと提供します」。

一人ひとりの患者にふさわしい、
科学的な根拠のある治療を。

日本人の死亡原因第1位となった、〈がん〉。それに立ち向かうために、手術療法、化学療法、放射線療法の進化はめざましく、また、第四の治療法といわれる免疫療法も登場。2つ以上の療法を組み合わせて行う集学的治療が主流となってきた。

そうしたなか、江南厚生病院は、平成30年4月、〈愛知県がん診療拠点病院〉の指定を受けた。これは国のがん対策推進基本計画に基づくもの。同院は、尾張北部医療圏の北部エリアにおける、がん診療の拠点病院として認められたのだ。同院が、これから注力するがん診療はどのようなものだろうか。

副院長 兼 外科代表部長でがん診療責任者である石榑 清医師は語る。「これまでに蓄積したがん診療の実績を活かすとともに、新たに導入した先進的な放射線治療機器を活用させ、最新の標準治療を最大限活用し、科学的な根拠に基づいたがん治療を進めていきたいと考えます。但し、最新の治療だから良いのではなく、一人ひとりの患者さんにふさわしい治療であることが大切です」。

一人ひとりの患者にふさわしい治療とは? 「患者さんの病状に応じて、安全性・根治性の両面から治療法を検討します。例えば、手術は今では低侵襲手術が主流ですが、適用には安全性と身体への機能障害を含めたバランスが大切です。合併症の起きるリスクが高ければ、傷が小さくても低侵襲とはいえない。化学療法も放射線療法も同じであり、患者さんに最適な治療を提供したいと考えます。また、根治が難しい場合でも、継続的な治療により、がんとともに生きる時代になってきました。そうした患者さんを支えることにも全力を注ぎます」。

がん患者を支えるものとして、緩和ケアチームがある。患者の精神的・社会的・身体的苦痛を取り除くことを目的に、すでに活発な活動を進めている。また、がん患者の療養の場のひとつとして緩和ケア病棟が整備されており、症状緩和、レスパイトも含め、がん患者の尊厳を支える場となっている。さらに、患者相談支援センターでは、治療に伴うさまざまな問題や悩みを抱える患者、家族への相談援助を行っている。

石榑はこう言葉を結んだ。「がん治療において、当院は患者さんの選択肢をほぼ整備しました。今後は当院を受診する患者さんだけでなく、地域の医療機関に受診している方々も含め、『いざとなったら江南厚生病院に相談できる』、そういう存在をめざしていきます」。

副院長の石榑は言う。「がんとともに生きるということは、そこに生活があり、家族があります。私たち医療者にとって、患者さん一人を診ればよい、というものではありません。治療において、科学的な根拠はもちろんですが、ご本人の価値観、家族の価値観もしっかりと見つめていきます」。

  • がん患者の急増を受けて、国は、「がん対策推進基本計画」を策定。全国に「がん診療連携拠点病院」等を指定している。また、愛知県では県が指定する「がん診療拠点病院」が設けられている。めざすのはどちらも、がん医療の均てん化。どこにいても、患者や家族が安心して、また、納得してがんの治療を受けることができる環境整備である。
  • そのがん診療拠点病院となった江南厚生病院。副院長の石榑は「当院でもがん患者さんは増加を続けています。治療にあたる医師たちは、患者さんとご家族が、正しく理解し納得し、安心して治療に臨むことができるよう、これまで全力を注いできました。それは、看護師、放射線技師、薬剤師、MSWなど、各専門職も同じです。がん医療を自ら学び、また、病院もそれを支援し、それぞれ専門の視点から、患者さん、ご家族のサポートに全力を注いでいます。これからも地域のがん医療を支え、またリードするがん診療拠点病院として、さらなる努力を続けていきます」と語る。

がんとともに生きる人を、
いかに支えるかに期待。

  • 今日のがん医療の発展はめざましいものがある。初期段階で見つければ、根治が可能となるがんもあり、ひと昔前のように、がんと聞いただけで死を連想する時代とは大きく異なってきた。
  • また、根治が望めなくても、がんをうまくコントロールし、がんとともに生きることも可能となった。年齢、がんの種類、そしてステージによっては、あえて心身に負担の大きい治療を避け、継続的な治療によって、がんとともに生きるという選択肢も登場したのだ。
  • 高齢化が進む今後、がんとともに生きる人は増加するであろう。そのとき、地域のがん医療の拠点病院は、そうした人々をいかに支えるか。それが大きく問われてくる。
  • 江南厚生病院は、放射線治療の体制を強化。患者にとってがん治療の選択肢がほぼ出揃ったことになる。同院がめざし続けてきた、〈地域で完結するがん医療〉。先進の治療を、また、がんとともに生きる人を支える治療の提供を大きく期待したい。

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