LINKED plus

LINKED plus シアワセをつなぐ仕事

地域のなかで
患者のWILLを繋ぐ。

地域医療連携室の先頭に立って
患者を継続支援していく。

川口万友香
看護副部長 兼 地域医療連携室室長
医療法人 済衆館 済衆館病院

地域の医療機関や介護事業所との連携強化に力を注ぐ済衆館病院。
その窓口である地域医療連携室のリーダーを任されているのが、
川口万友香(看護副部長を兼務)看護師である。
川口が地域で実現しようとしている患者支援のあり方を探った。

地域医療連携室で
PFMの仕組みを作っていく。

「昨年(平成29年)9月、地域医療連携室の室長になってから、目が回るほど忙しいんです」。そう苦笑するのは、川口万友香看護師。同院の地域医療連携室はいわば、病院と地域、医療と生活を繋ぐ窓口である。近隣の医療機関から紹介患者を受け入れたり、患者の入退院の支援、介護サービスの調整業務などを幅広く行っている。そのなかで、川口は全体をマネジメントしながら、主にベッドコントロールや広報・渉外活動を担当している。「ベッドコントロールでは、緊急で入院が必要になった場合、各病棟と協力してベッドを用意し、速やかに患者さんを受け入れるよう動いています。広報・渉外は、地域の医療機関や介護施設に携わる方々に、当院の機能と役割を知っていただき、連携を深めることが大きな目標です。院外へ出る機会も増え、いろんな職種の人と顔の見える関係ができてきたことに手応えを感じています」と話す。

川口が業務の先に見つめるのは、PFM(ペーシェント・フロー・マネジメント)の仕組みづくりだ。PFMとは、入院前(入院時)から患者の病状や生活状況を把握し、入院治療から退院後までの時間軸に合わせ、継続して患者を支援していく仕組みをいう。「地域医療連携室の医療ソーシャルワーカーが中心となり、院内外の多職種と協力し、患者さんがスムーズに入院し、退院後も地域全体で必要な支援を得られるような体制づくりを進めています。まだまだ課題はいっぱいですが、一歩ずつ前進しています」と川口は話す。

地域に広く目を向けて活動する川口だが、異動前は手術室の看護科長として5年間勤務していた。手術室と地域医療連携室、180度、業務が異なるようにも見えるが...。「確かに業務は違いますが、以前の仕事が今に活かされていることもあるんです。手術室では、スタッフが働きやすいように勤務シフトを考えたり、予定手術のスケジュールを誰が見てもわかりやすい表にしたり...。また、手術に用いる器具や物品の整理に力を入れました。一言でいうと、手術に関わる〈人・物・情報〉の整理整頓を進めたわけです。それは今も同じで、患者さんの流れに関わる〈人・物・情報〉に着目しています。バラバラで無駄なところも多い〈人・物・情報〉をうまく整理整頓できれば、PFMの実践に繋がると考えています」(川口)。

〈看て感じる力〉を
若い看護師に伝えていきたい。

地域医療連携室は同院の顔ともいうべき重要な部署だが、そのリーダーに看護師が抜擢されたのはなぜだろうか。「理由はわかりませんが...」と川口は前置きして、次のように話す。「地域医療連携では、医療職と介護職が一緒に取り組みますが、両者の間にはまだまだ溝があるんですね。たとえば医療職は介護についてあまり知らないし、介護職は医療の専門知識に弱いことが多い。患者さんの身近にいる看護師はその両方を理解できる立場にあり、医療と介護をまたいで多職種を繋ぐことができます。そういう部分で、看護師の力量が期待されていると感じています」。

医療と介護をまたいで多職種を繋ぐ上で、川口には特に大切にしているものがあるという。「それは、患者さんのWILL(ウイル)、意思なんです。病気を抱えつつも、これからどんな生活を過ごしたいのか、残りの人生で何をやりたいか。患者さんのウイルを置き去りにして、在宅に帰っても意味がないと思うんです」。患者のウイルを常に中心に据えること。看護副部長として看護師教育に取り組む川口は、若い看護師たちに、その重要性を説く。「看護の〈看る〉という言葉には、病気や症状を〈看る〉だけでなく、患者さんの思いを〈看る〉という意味も込められていると考えています。症状と思いの両方をしっかり看て、感じて、その人らしい生活を過ごしていただけるようなサポートをいろいろ提案していく。それが、看護師の大きな役割だと考えています」と川口は話し、こう続けた。「若いナースは、経験豊富な先輩の姿を見て患者さんを看る力を学んでいってほしい。当院のすべての看護師が〈看て感じる力〉を磨くことで、患者さんに切れ目のない支援を提供できると考えています」。川口は看護師ならではの視点やセンスを武器に、地域の患者支援に全力を注ぐ。

川口は今でも、月に2回ほど、救急外来の当直を担当している。地域医療連携室の業務との両立は、なかなか大変なのではないだろうか。「でも、直接、患者さんと触れ合う外来は、一番楽しい時間でもあるんです」とほほえむ。川口は看護の初心を忘れることなく、〈看て感じる力〉を磨いている。

  • 済衆館病院はフルケアミックス病院へと領域を広げるに連れ、看護師教育にも力を注いできた。具体的には、平成29年の夏より、川口看護副部長が中心となり、クリニカルラダー(看護師の看護実践能力を段階的に表し、評価するシステム)の開発に着手。日本看護協会のクリニカルラダーに準拠しつつ、院内の全部署で使えるようなシステムづくりをめざしている。
  • また、川口は卒後研修の一環として、ローテーション研修も検討中だという。「〈看て感じる力〉を伸ばすためにも、早い段階でさまざまな部署を経験することが有意義ではないかと考えています。たとえば、手術室、透析室、訪問看護...と多様な部署を経験することで、看護の広がりを実感でき、自分に適した部署を知るきっかけにも繋がると思います」と川口。クリニカルラダーやローテーション研修など、同院では今、多様な角度から新しい看護師教育の構築を進めている。

地域でPFMを
実践していく重要性。

  • 済衆館病院がめざすPFM(ペーシェント・フロー・マネジメント)は、昨今、医療界で耳にするようになった新しい考え方である。それまでも各病院では、急性期から回復期、慢性期、在宅へと、患者に継続してケアを提供できるように、地域医療連携に力を入れてきた。それを一歩前進させ、患者の流れを入院治療から退院後までの〈時間軸という線〉で結び、切れ目なく支援していく仕組みがPFMである。
  • 病院完結型から地域完結型へと医療の提供体制が転換するなかで、患者の時間軸に焦点をあてるPFMは、非常に有効な仕組みといえるだろう。地域のさまざまな医療機関、介護事業者が患者の情報を共有しながら、時間軸に沿って必要な支援を提供していく。そうすることで、真の意味で〈患者をずっと支え続ける〉ことができるはずだ。済衆館病院は地域でまさにその部分に着目し、地域と一体になって、PFMを実践していこうとしている。

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