LINKED plus

LINKED plus 明日への挑戦者

超高齢社会を見据えた
地域づくりへの挑戦。

住み慣れた地域で、
活き活きと暮らすための拠点となる。

医療法人 瑞頌会 尾張温泉かにえ病院

平成30年6月、医療法人尾張温泉かにえ病院は、
医療法人瑞頌会と法人名を変更し、新たな歩みをスタートさせた。
病院の新築移転、在宅療養総合支援センターの設置など、
地域のニーズを見つめ、それに応えるための
進化を続けてきた同法人が、その先に見据えるものは何か。
リハビリテーションに関わる新たな2つの取り組みを通じ、
同法人が描く、地域貢献のあり方を追った。

新たにスタートした、退院後の訪問リハビリテーションと、
介護予防事業という2つの取り組み。
新しい教育のかたちで応えていく。

「こんにちは。調子はいかがですか」。ある日、尾張温泉かにえ病院のリハビリテーション部主任である神谷康介は、同院の退院患者の自宅を訪問した。神谷は、退院患者とその家族に「ちゃんと動けていますか。転びそうになった場所はないですか」と和やかに問いかけながら、血圧測定、体温測定を行っていく。「体の調子は良さそうですね、では股関節の運動からしていきましょうか」と、神谷は退院患者とともにベッドに移動し、リハビリテーションを開始した。

これは、同院が平成30年4月から始めた、退院患者に対する退院後訪問リハビリテーションの一場面だ。対象となるのは、同院の回復期リハビリテーション病棟および地域包括ケア病棟を退院した患者のなかで、自宅に戻った後も継続的なリハビリテーションが必要と判断された人。退院後3カ月の間、同院のスタッフが週2回自宅を訪問し、約40分間のリハビリテーションを行う。

4月の開始に合わせ、訪問リハビリテーションの責任者に抜擢された神谷は次のように語る。「病院では、患者さんの生活復帰に向けて目標と計画を設定し、リハビリテーションを実施、ADL(日常生活動作)の改善を促します。ただ、患者さんのなかには、ご自宅に戻るとあまり動かないようになり、ADLが低下してしまう方がいらっしゃいます。そうならないためには、日々の暮らしのなかで、無理なく体を動かす意識と習慣をつけるとともに、状態の変化を見極めながら、環境の整備やアドバイスなどを適宜行っていくことが重要なのです」。病院での機能訓練を通じ〈できる〉ようになったADLを、日常的に〈している〉ADLに変えるために、3カ月という限定された期間を設定し、患者・家族とともに、自立した生活の実現を支援していくのだ。

退院後訪問リハビリテーションとともに、医療法人瑞頌会では、平成30年5月からもう1つ新たな取り組みとして、介護予防事業〈おんせん塾〉〈若がえり塾〉が始まった。この事業は、尾張温泉の引き湯を利用した同院の歩行浴プールを使用し、比較的健康な65歳以上の高齢者を対象に運動指導を行うもの。〈おんせん塾〉は、蟹江町からの委託事業として、蟹江町在住の要支援・要介護を受けていない方を対象に月1回行われ、〈若がえり塾〉は、同法人の自主事業として、蟹江町民に限らず要介護認定を受けていない方に週2回開催されている。

介護予防事業を担当する、リハビリテーション部マネージャーの小式澤孝夫は、「水中では、関節への負担が少なく転びにくいため、全身運動や大股で歩くといった、陸上ではなかなか思い切ってできないような大きな運動ができるようになります。また、水の抵抗が運動効果を高めるので、体幹が活性化し実施前と後では、明らかに利用者さんの動きが変わることに驚きます」と語る。日常生活に必要な運動機能を安全に高めることで、介護が必要な状態にならない身体づくりをめざす。

高齢者の自立した生活を、
取り戻し、維持し続けるために。

退院後の訪問リハビリテーションと、介護予防事業という新しい取り組みを進める医療法人瑞頌会。そこにはどんな狙いがあるのだろうか。「一言で言えば、地域包括ケアシステムの一員として、地域の皆さんが活き活きと生活できる仕組みを創ることです」と語るのは、リハビリテーション部部長の工藤敬一郎である。「超高齢社会を見据え、国は高齢者が住み慣れた地域で自分らしい暮らしを続けるためのシステムとして、地域包括ケアシステムの構築を進めています。そこで求められるのは、高齢であっても可能な限り自立し元気であること。そのためには、リハビリテーションも病院の中だけで提供されるのではなく、もっと地域に、生活に目線を向ける必要があると考えたのです」。

その言葉に頷きながら、リハビリテーション部副部長の立松俊治は退院後訪問リハビリテーションについてこう語る。「回復期リハビリテーション病棟と地域包括ケア病棟を持ち、病院としてのリハビリテーション機能はある程度成熟してきました。ただ、患者さんが退院後も安定した在宅生活を送るためには、入院期間で獲得した身体機能を自宅へとしっかり繋ぐ必要があります。同時に、入院中のリハビリテーションも、もっと生活を意識したものに進化すべきです。退院後訪問リハビリテーションを実施することで、在宅患者さんを支援し意識を高めることはもちろん、スタッフが実際の生活を肌で感じ、訪問時に得た知見を病院にフィードバックする流れを作りたい。その結果、病院で行うリハビリテーションの中身も、より生活復帰という目的に合ったものになるのではないでしょうか」。

一方、工藤は、介護予防事業の先で地域全体の活性化をめざすという。「おんせん塾や若がえり塾はまだスタートしたばかり。来てくださる人は、健康や自立に対する意識の高い高齢者がほとんどです。ただ、おんせん塾や若がえり塾を経験した方が、今度は地域のなかで自らがリーダーとなり、友人や近隣住民を巻き込んで介護予防への意識を高める。そして最終的には、自主訓練のグループなどを作って地域全体にその活動が広がっていく。そんな流れができるといいですね」。

持てる医療・介護の機能を高め、それを地域へと広げていく。高齢者が活き活きと暮らし続けられる地域を創り上げるために、医療法人瑞頌会の挑戦は続く。

尾張温泉リハビリかにえ病院として、蟹江町に誕生し、30年間、地域とともに歩んできた医療法人瑞頌会。「これからは、育ててもらった分、地域にお返ししていきたい」と工藤。同法人の目線の先には、どこまでも地域がある。

  • 医療法人尾張温泉かにえ病院から医療法人瑞頌会への法人名変更。そこには、「医療と介護の機能が連結し、法人職員すべてが同じ方向を向く」という思いが込められている。
  • 同法人は、ケアミックス病院としての機能に加え、平成29年に〈在宅療養総合支援センター〉を開設。介護老人保健施設を中心に、訪問診療、訪問看護、訪問リハビリテーション、デイケア、居宅介護支援事業を、総合的に提供する拠点を作ることで、地域の在宅医療および介護を強力に支援する機能を整えた。病院と在宅支援、その2つの機能を有機的に連結し、地域の医療機関・介護施設とともに高齢化する地域を支える。法人名の変更はその決意の表れといえるだろう。
  • そして、「若々しい力(瑞)で、地域から認められ互いに認め合える(頌)法人としてさらに進化を続けていく」ことを胸に、医療法人瑞頌会は新たなステージを歩みだす。

一歩一歩の歩みこそが、
超高齢社会への唯一の処方箋。

  • 住み慣れた地域で、高齢者が活き活きと暮らし続けられる社会。言葉にすることは簡単だが、その実現は非常に難しい。高齢者一人ひとりが健康に対する高い意識を持ち、同時にそれを支える仕組みがなければ、成し得ない。無論、劇的な方法で一足飛びに解決できるものではなく、地域の医療機関・介護施設、行政、そして地域住民がそれぞれの立場で少しずつ変化し、それが総和となることで、超高齢社会に最適な地域社会が視野に入る。
  • 今回の特集で示したように、医療法人瑞頌会は、その困難な課題に対し医療・介護の立場から、一歩ずつ確実に挑戦を続けている。
  • 医療と生活を繋ぐ機能を強化し、さらに地域へとその視線を広げる。その一つひとつが実を結び、地域全体へと広がることで、同法人のある地域が、地域包括ケアシステムのモデルとなることを期待したい。

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