LINKED plus

LINKED plus 明日への挑戦者

医療の視点から
生活の視点への転換。

地域の医療・介護資源を繋ぎ、
地域住民の安心の暮らしを守り抜く。

社会福祉法人 愛生館

社会福祉法人愛生館は、医療法人愛生館と共に愛生館コバヤシヘルスケアシステムを構成。
二つの法人が一丸となり、医療・介護・福祉サービスを多岐にわたって提供している。
社会福祉法人愛生館はこれまでどんな道を歩み、これからどんな挑戦をしていくのか。
法人を率いる理事長と特別養護老人ホームの施設長に話を聞いた。

長年、培ってきた医療資源を活かし、
介護・福祉事業へ裾野を広げる。

---まずは小林清彦理事長、社会福祉法人愛生館が誕生した経緯から教えてください。
小林 もともとは医療法人愛生館として、小林記念病院を運営してきました。平成に入り、老人保健施設(要介護高齢者の在宅復帰を支援する施設。以下、老健)を作りましたが、その頃はまだ医療が主役で、介護は脇役という認識でした。その後、当時、医療法人の理事長だった小林武彦(現・愛生館コバヤシヘルスケアシステム代表)が、〈この地域の未来を見つめたとき、医療・介護・福祉の連携が絶対、重要になるだろう〉と考え、平成22年、社会福祉法人を立ち上げたのです。

---医療から、介護・福祉への挑戦。そのとき、大切にされた思いは?
小林 二つあります。一つは、それまで築いた医療資源を活用すること。例えば、リハビリや看護などの機能は、地域の貴重な資源です。それらを活用しながら、さらに介護・福祉の資源を繋ぎ、まるで一つの組織のように一体化して提供していきたいと考えました。もう一つは、〈医療の視点から、生活の視点への転換〉です。施設を利用するのは、患者さんではなく生活者です。病気のときもそうでないときも継続して支える仕組みを構築していこうと考えました。

---現在、愛生館で運営している施設は?
小林 特別養護老人ホーム(要介護高齢者が長く生活する施設。以下、特養)を中心に、デイサービスなどの介護事業を幅広く手がけています。このなかから、今春オープンした特養ひまわり・安城の責任者にと猛烈にお願いしたのが、野村勢津子施設長です。野村さんは高度急性期病院を退職後、小林記念病院で看護介護部長、副院長を務めていた経歴の持ち主。地域の医療と介護・福祉を繋ぐ役割をしていただけると白羽の矢を立てました。
野村 私は長年、病院で患者さんを看てきて、退院していく方々のサポートの重要性を感じていました。今度は在宅の立場に立ち、継続ケアの仕組みを作って貢献したいと考え、施設長の任務を引き受けました。

---野村施設長は今、どんな仕事に力を注いでいますか。
野村 月に一度、特養、老健、病院の看護・介護の統括をしている責任者が集まり、ミーティングをしています。施設によって役割は違いますが、標準化された質の高い看護・介護を提供するために、グループ全体の人事異動や人材教育について戦略を練っています。

医療と介護を繋ぐ鍵は、情報共有と人材交流。
相互理解を深め、連携を強化していく。

---野村施設長は、医療と介護を繋ぐ上で何が必要だとお感じですか。
野村 在宅ではいろいろな専門職が関わりますが、そこで鍵を握るのは情報共有だと思います。生活者の情報を共有できる仕組みを作り、生活者の満足を多職種で追求していく。愛生館はそんな多職種連携の核になれると感じています。
小林 私も同意見です。一つの施設ですべてが完結しない時代ですから、多様な現場の人が顔を合わせて交流し、情報を共有し、相互理解を深めることが大切です。
野村 例えば今、地域の高度急性期病院と愛生館の職員がお互いに訪問し合い、見学する機会を設けています。机上の話ではなく、自分で見て感じた意見を交換することで理解を深めております。それが最終的には、患者さんに安心して病院から施設へ移っていただくことに繋がると思います。
小林 その見学が1日ではなく、1週間、1カ月の研修になれば、なお素晴らしいですね。私は法人内においても、職員は多様な現場を体験すべきだと考えています。人事異動の目的は、人の教育にあります。人材を動かすことで、一人ひとりが成長し、組織も成長していくことができます。

---人材の流動化を進める上で課題はありますか。
小林 違う職場に行くと誰でも不安を感じます。それをいかに取り除くか...。
野村 そうですね。例えば、看護師でいえば、施設は病院と違って自分一人で判断する場面も多く、不安感も大きい。ただ、できないことはできないと言えばいいんです。それを支える教育体制が、愛生館にはありますから。
小林 私もそう思います。できないことを克服するために、みんなで知恵を出し合えばいい。自分が成長することで地域に貢献できる、と職員一人ひとりが実感できるような、新しい社会福祉法人のモデルをこの地に築いていきたいと思います。

社会福祉法人愛生館が大切にしているのは、医療ではなく、生活の視点で地域住民を支えること。病気のときもそうでないときも安心して暮らせるように、高齢者の在宅療養の日々に寄り添い、そのときどきに必要な医療・介護・福祉資源を繋いで包括的に提供することをめざしている。

  • 国は、医療の中心を病院から在宅へ移す方針を打ち出し、全国各地で地域包括ケアシステム(高齢になっても住み慣れた地域で暮らせるよう、住まい・医療・介護・予防・生活支援を一体的に提供する仕組み)の構築を進めている。
  • 愛生館コバヤシヘルスケアシステムが進めているのも、まさに碧南市に地域包括ケアシステムを作ることである。高齢者が安心して暮らせる施設(住まい)を用意し、医療・介護・生活支援サービスの包括的な提供をめざしている。愛生館グループでは、ケアミックス型の小林記念病院を中核に、高齢者介護施設(老人保健施設、特別養護老人ホームなど)と在宅サービス(訪問看護、訪問介護、デイケア、デイサービス、居宅介護、小規模多機能施設など)を運営し、地域のニーズに応えている。その他、事業所内託児所を2カ所設け、職員の働きやすい環境づくりにも努めている。

医療と介護の断層を埋める、
愛生館グループの挑戦。

  • 高齢化が今後も急速に進んでいく日本では、医療と介護の連携がさらに重要になる。しかし、両者の間に横たわる断層が、連携の障壁になることも多い。まず、医療保険と介護保険という制度上の違い。例えば、退院後、リハビリテーションを続ける場合も、どちらの保険を使うべきか、利用者は戸惑うことが多い。また、医療者と介護者の〈知識や文化〉の違いもある。医師や看護師などは、医療には詳しいが、介護への理解は乏しく、反対に、介護者は医療の専門用語に精通していないという傾向にある。
  • 両者の断層を埋めるべく、愛生館コバヤシヘルスケアシステムは医療法人と社会福祉法人を併せ持ち、医療・介護・福祉サービスを一体的に提供している。「この地域に愛生館があってよかった。そう思ってもらえるチームになりたい」と、社会福祉法人愛生館の理事長であり、愛生館コバヤシヘルスケアシステムの副代表である小林は言う。その目線は常に、地域の生活者に注がれている。

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