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LINKED plus 病院を知ろう

研修医が見つめる
地域医療の未来。

キラリと光る意見、続出。
若い視点からもの申す、
研修医たちの病院改革会議。

西尾市民病院

西尾市民病院には、現在6名の初期研修医(1年目・2年目各3名)が在籍。
いろいろな診療科を回って医師の基本を学びつつ、救急外来の大きな戦力となって活躍している。
彼らは今、自分自身や病院の未来についてどう考えているのか。
仕事を終えて居酒屋に集合した彼らに、ホンネの意見をざっくばらんに語ってもらった。

西尾市民病院って、
どんな病院?

今瀧 西尾市民病院は、一言で言うと、規模はコンパクトだけど市民の健康を支えるために頑張っている公立病院。
内藤 そうですね。人数も少ないから雰囲気はアットホームだし、僕たち研修医もすごく大事にしてくれますよね。
山本 本当に。病院全体で僕たちを育ててくれている温かい風土がある。
杉浦 いい後輩が3人も来てくれて、私たちはすごくうれしい。その気持ちが病院全体にあふれているんだと思う。
岩村 西尾の町も、いいですね。都会過ぎず田舎過ぎず、暮らしやすい。杉浦先生はここ出身ですよね?
杉浦 そう。いいところでしょう(笑)。みんな優しいし、親しみやすい。
山本 僕もまだ住んで半年ですが、最近、西尾愛が芽生えています(笑)。

西尾市民病院が
直面している課題は何か?

今瀧 当院の課題はやはり医師不足、ということに尽きると思う。
岩村 医師が少ないから、当然、診療科も揃っていないし、ここで治療できない疾患もいろいろあります。
杉浦 産婦人科、小児科、神経内科など、診療制限せざるを得ない科もあるし...。
山本 24時間365日、救急搬送に頑張って対応しているけれど、診療科が揃っていないので、全部を受けられないのが弱点ですよね。
岩村 そう。救急隊からの電話で、腹痛の患者さんの受け入れを打診されたとき、少しでも婦人科疾患が疑われれば、断らざるを得ない。診てあげたいけれど、患者さんのために断るという...。
杉浦 それが、悔しい。
岩村 本当に悔しいですね。もう少し市民の期待に応えられるようになれば、地域の皆さんにとって、もっといい病院になれると思うんだけどなぁ。

西尾市民病院は地域の二次救急病院であり、年間の救急搬送数は4000件以上に上る。それらのファーストタッチを担うのが研修医であり、指導医がその背後で支えている。研修医たちは緊急疾患のトリアージ(重症度の判定)を通じて貴重な学びを得ると同時に、一人の医療者として着実に地域医療に貢献している。

課題を解決するための
処方箋は何だろう?

山本 根本的な処方箋は、医師を増やすしかないですよね。どうすれば増えるのかな...。たとえば、設備やスタッフを充実させて、医師がここで働きたいと思える環境を作っていくとか...。
内藤 そもそも地域の皆さんは、この病院をどう思っているんでしょうね?
今瀧 そこがポイントだよね。僕が一番問題だと思うのは、市民や開業医の先生方に、市民病院を〈地域の財産だ〉と思ってもらえていないこと。
岩村 なるほど、本当は〈病院=地域の財産〉ですよね。
今瀧 市民病院に、自分たちの財産、地域の財産という意識が持てれば、皆さんより良い病院づくりにもっと協力してくれると思うんだ。
山本 そういえば、今、市民病院の合併の話も出ていますよね。
杉浦 私は市民も参加したもっと広範な議論がなされるべきだと思うな。
内藤 市内に病院がなくなったら、みんなすごく困ると思います。
今瀧 地域の皆さんに、そう思ってもらえる努力が必要だし、ぜひ一緒に考えてほしいなぁ。

研修医にできることは何だろう?

杉浦 地域の皆さんに理解してもらうために私たちにできることもあるよね。
山本 そうですね。僕が日々心がけているのは、できるだけ患者さんに丁寧に応対すること。何よりもまず市民に愛され、必要とされる病院でありたいですね。
岩村 それに、研修医ができるのは、救急を頑張ることかな。僕たちが救急外来でファーストタッチ(初期診療)をして、研修医同士が教え合いながら、成長すれば、上の先生方の負担も軽減でき、地域医療にも貢献できると思う。
内藤 救急を頑張るためにも、今の研修医6人体制を続けていかないといけないですよね。先輩が後輩を指導し、育った後輩がまた次の後輩の面倒をみていく。そういう教育の厚み、人材の厚みが生まれれば、この病院はもっと活気づくのではないでしょうか。
山本 その意味では、初期研修の2年間だけじゃなく、3年目以降も残る先生がいればもっといい。
杉浦 私は3年目、残りますよ。
一同 おおっ!(拍手)
杉浦 ただ、新専門医制度が始まったから、4年目は他院で学ぶ予定。でも、いずれは西尾に帰ってきたい。
山本 僕も西尾に帰ってきたいです!
内藤 うん、帰ってきたい、と思えるような病院になっていってほしい!
杉浦 なんか病院改革会議みたいになってきた(笑)。禰宜田院長の意見も聞いてみたいね。
今瀧 よし、今度、禰宜田先生にごちそうしてもらって、みんなで話そうか。
一同 それ、いい、賛成!(笑)

西尾市民病院をより良く改革していくには、市民との対話が鍵を握る。同院では毎年秋に、市民を招いて〈西尾市民病院ふれあい祭り〉を開催している。「ふれあい祭りは市民の皆さんと対話を深めるチャンス。少しでも当院のことを理解してもらえるように働きかけたい」と研修医たちは意欲を燃やしている。

  • 西尾市民病院では平成29年4月、3名の初期臨床研修医のフルマッチ(研修医が定員数まで集まること)を達成。続く平成30年も3名を獲得し、総勢6名の研修医体制を実現した。これは、西尾市が創設した医師確保奨学金制度の成果であり、平成16年、新医師臨床研修制度が始まって以来の快挙だという。
  • 以前、同院では研修医の数が少ないため、年齢の離れた指導医が直接指導することが多かった。しかし、6名に増えたことで、研修医同士が教え、学び合う環境が生まれ、いわゆる屋根瓦方式の教育(1年目を2年目が教え、2年目を3年目が教え、さらに指導医が見守る)の基盤が整いつつある。しかも、本文で紹介したように、入職した研修医たちは、いずれも医師不足の病院運営に貢献しようとする意識が高い。「これからの西尾市の医療はどうあるべきか」という鋭い問題意識を持つ彼らが、病院の未来に新風を吹き込んでいる。

若き医師たちの思いと
院長の思いがシンクロする。

  • 西尾市は、医療機関も医療従事者も、全国平均より大幅に少ない。医療資源が少ない地域にあって、西尾市民病院は長年にわたり、医師不足に苦しみながらも、禰宜田政隆院長のリーダーシップのもと、新しい時代にふさわしい自治体病院のあり方を模索してきた。
  • 今回の座談会を通じて、研修医たちの思いが院長の思いと響き合い、未来に向けて同じベクトルを志向していることを実感した。研修医が語っていた「市民に必要とされる病院にならなければ...」という姿勢。それはまさしく、禰宜田院長の「地域に必要な医療を柔軟に提供し、市民のニーズに応えていこう」という志向に同調する。もちろん、具体的な方策はまだこれからだが、ここに同院の未来を創造する大きなヒントがあるのではないだろうか。地域医療を見つめる意識の高い研修医たちを得て、同院は明日への活路をきっと切り拓いていく。

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