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LINKED plus 病院を知ろう

地域と病院が繋がり、
がんと生きる人を支える。

がん看護をリードする
リソースナースたちの
多彩な取り組み。

トヨタ記念病院

愛知県がん診療拠点病院として、次々と最新鋭の治療技術を導入し、実績を重ねるトヨタ記念病院。
その高度な診療をケアの側面から支えるのが、がん領域の認定看護師である。
彼女たちは、リソースナース(専門知識・技術を持ち、看護実践を支援するスペシャリスト)として、
がん患者の心と体の痛み、苦しみ、迷い、悩みに日々、寄り添っている。

がん患者の苦しみを把握し、
必要な医療やケアを繋ぐ。

トヨタ記念病院では、緩和ケア、がん性疼痛、がん化学療法、がん放射線療法の4領域において、専門知識・技術を学んだ認定看護師が在籍し、リソースナースとして同院のがん看護を牽引している。リソースナースは、院内でどんな役割を果たしているのだろうか。「必要な医療やケアを患者さんに繋ぐ役目だと思います」と話すのは、緩和ケアチームの一員として活動する加藤久美子(緩和ケア認定看護師)である。「各病棟から相談があると、ベッドサイドに出向いて、患者さんのお話をうかがいます。そこで、何に困っているのか、どんなことで苦しんでいるのかをじっくり聞いて、緩和ケアチームのメンバーに繋ぎます。たとえば、精神的なフォローが必要であれば臨床心理士に、症状のコントロールであれば医師や薬剤師に繋いで、多様な角度から患者さんの辛さや悩みをできるだけ早く解消できるよう心がけています」。その意見に、がん化学療法認定看護師の畔柳加恵も同意する。畔柳は主に、抗がん剤治療を受けている入院患者を担当しているが、それぞれの悩みを丁寧に聞いて、専門家に繋いでいるという。「たとえば、スキンケアで困っているなら皮膚・排泄ケア認定看護師に、口内炎が辛い場合は歯科衛生士に、味覚障害などで食欲がない場合は栄養士に相談するようにしています。ちょうどがん患者さんを真ん中に、専門家が取り囲んでチーム医療を提供できるように、コーディネートするような役回りですね」と話す。

チーム医療の要となってがん看護を実践すると同時に、スタッフの指導・教育も、リソースナースの大きな役割だ。同院では、がん領域のリソースナースが定期的に集まり、がん看護研修の企画を立てているという。そのなかのメインのプログラムが、〈がん看護ジェネラリストナース教育コース〉。これは、リソースナースが講師となり、2日間にわたり、がん看護の専門知識を伝えるものだ。「以前は院内だけで開催していましたが、近年は地域からも参加者を募り、一緒に学んでいます。開催日を平日から日曜日へ変更したところ、介護施設や診療所の看護師の参加がぐんと増えました。在宅療養を支える方々は、麻薬性鎮痛薬などの専門知識を貪欲に吸収しようとしています。皆さんの熱意にしっかり応えていきたいですね」と加藤は話す。

がん看護は、患者の胸の内を理解するところから始まる。「スタッフにいつも言うのは、患者さんの言葉を鵜呑みにせず、その言葉の裏側にある思いを考えよう、ということなんです」と3人は口を揃える。がん患者の本当の思いを把握するために、看護師たちは毎日少しずつ会話を重ね、信頼関係を築いていく。

常に在宅へ視線を注ぎ
地域と連携して
がん患者を支えていく。

同院のリソースナースたちが、地域へと活動を広げる背景には、在宅で療養するがん患者の増加がある。「入院期間が短くなり、治療が終われば、できるだけ早く在宅へ戻っていただくようになりました。がん患者さんがどうすれば、在宅で安心してがん治療を続けられるのか、というところに、私たちの視線も移っています」。そう話すのは、がん性疼痛看護認定看護師の成瀬美和(緩和ケア病床を含む混合病棟・看護長)である。「たとえば私は痛みのコントロールを専門にしていますが、単に痛みを取ればいいというわけではありません。そのことによって、どんな生活がしたいのかという目標設定が大切。スタッフにも、患者さん一人ひとりの目標を必ず確認するように指導しています」と成瀬。さらに同院では、そうやって把握した〈患者の意思決定〉を、在宅医療チームへ引き継ぐ取り組みにも力を入れているという。「治療はここまでなので退院してください、というのではなく、患者さんとご家族の生活の希望を、在宅医療チームへ伝え、継続したサポートを受けられるように一緒に考えています」と成瀬は話す。

また、退院後の生活を重視する同院では、がん患者の就労支援にも力を注いでいる。「AYA世代といって、15歳から30歳前後の思春期・若年成人のがんの罹患率が上昇し始めています。その世代から40代まで、一番働き盛りの世代が、がんを理由に仕事を辞めることはとても残念なことです。抗がん剤治療を受けながらでも、仕事を続けられるように、医療ソーシャルワーカーとも連携して支援しています」と畔柳は話す。

がん患者にとって、がんと診断されたその瞬間から、治療と生活の両面において長い闘いが始まる。同院のリソースナースたちは、生活の質の向上を第一に掲げ、地域とも密に連携しながら、がんとともに生きる人たちを支えている。

3人は、認定看護師と地域、院内の看護師との理想の在り方を次のように語る。「私たちの目標は、一人ひとりの看護師が知識やスキルを高めて、各地域、各施設、各部署で課題を解決できるようになること。認定看護師は、本当に困った時に依頼を受けてサポートする。そんな体制が作れたらいいですね」。

  • トヨタ記念病院では、がん患者を支えるための窓口を開き、サポート体制の充実を図っている。加藤看護師にその詳細を聞く。
  • 「〈緩和ケア外来〉は、外来患者さんを中心に、たとえば疼痛コントロールが上手くできない、メンタル面でのフォローが必要といった方の相談に乗ります。緩和ケアチームの医師を中心に、私も対応しています。〈がん看護外来〉は、緩和ケア・がん性疼痛看護・がん化学療法看護の認定看護師が担当。治療に向き合うなか、患者さんはさまざまな葛藤、迷いなどを抱えています。そのお話を聞き、相談に乗り、〈一緒に解決していきましょう〉をコンセプトとしています。〈がん相談支援センター〉は、医療福祉相談員が中心で行っています。誰に相談すればいいか迷ったときは、まずはここを訪ねてください。必要に応じて私たち認定看護師がお会いするケースもあります。とにかく窓口を広くし、がん患者さんのサポートに全力を注いでいます」。

注力するのは、病院と地域との連携。
より深く、強く。

  • トヨタ記念病院では、平成28年に最新の内視鏡手術支援ロボット導入を機に、より充実したがん治療への挑戦を始めた。コンセプトは、〈地域で完結できないがん診療をなくす〉である。
  • そうしたがん診療を推進する医師集団の脇を支えるのが、看護師である。今回紹介した認定看護師らは、自らの専門性の追求はもちろん、注力するのは地域と病院との連携。がん医療が進化し、がんとともに生きる時代となった今、病院だけで治療が完結するわけではなく、生活者としての患者を支えるには、病院と地域がしっかりと結びつかなくてはいけないという考えである。
  • こうした視点は、同院看護部に貫かれており、〈がん看護ジェネラリストナース教育コース〉の地域開放はその象徴といえる。地域が求めているがん看護の情報を、的確に伝える、ともに学ぶという姿勢で、地域と病院とのより深く強い繋がりをさらに充実。本当の意味で、地域で完結するがん診療が実現されることを、リンクトは心から願う。

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