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LINKED plus 病院を知ろう

治る病気を見逃さない。
治らない病気にも向き合う。

安城更生病院

どこが悪いのか、なぜ悪いのか
何ができるのか、を考え続ける。

患者に寄り添い、
QOLを高めるのが脳神経内科の役割。

その日、晴れやかな表情と足取りで、安城更生病院を後にする女性がいた。1週間前、脳梗塞(脳の血管が詰まる病気)を発症し、救急車で運び込まれた患者だ。搬送時は右手足が動かず、言葉も出てこない状態で、CT検査などで脳梗塞と診断。幸い、発症から4.5時間以内であったことから、薬剤を静脈内に点滴し、血管に詰まった血栓を溶解する〈t-PA治療〉が施行された。約1時間の点滴治療で途絶えていた血流を再開でき、早期リハビリテーションの助けもあり、女性は後遺症もなく、退院することができたのだ。

「この15年間で、脳梗塞の治療は大きく進化しました。t-PA治療と、カテーテル(細い管)を用いた血管内治療を積極的に行うことで、脳梗塞の患者さんを重い後遺症から救うことができるようになりました」と語るのは、脳神経内科の川上 治代表部長である。同院では、脳梗塞患者には、脳神経内科医が初期対応し、適応があればt-PA治療をおこなう。また、血管内治療の適応があれば、脳神経外科医が対応するという連携体制で治療している。

脳神経内科が担当する病気は、脳梗塞だけではない。「全身に張り巡らされた神経の不調、脳、脊髄、末梢神経、筋肉などで起きたさまざまな疾患を対象にします。簡単に言うと、全身を診る診療科です」と川上は説明する。但し、脳神経内科医は病気を総合的に診る総合診療医とは「診察のアプローチが異なる」と、安藤哲朗副院長は話す。「私たちの特徴は、神経学的診察です。しびれや麻痺の分布や打腱器を使った診察で、どこが悪いのかを見極め(部位診断)、なぜ悪いのかを考え(質的診断)、そして、私たちに何ができるのかを考えます。神経に関わる病気は、治らない難病もあります。でも、症状を緩和し、QOL(生活の質)を上げることができます。そのために何ができるかを追求します」。

QOLに焦点をあてるために、診察では患者との対話を最重視する。患者一人ひとりの生活、人生に寄り添い、どうすれば症状を和らげ、快適に暮らせるかをとことん考えていくのだ。

超高齢化とともに増える
脳神経内科の疾患。

神経の不調全般を診る脳神経内科だが、超高齢社会を迎え、患者は上昇の一途をたどっている。たとえば、冒頭に紹介した脳梗塞をはじめ、認知機能が低下する認知症、手足の震えなどの障害が起きるパーキンソン病、てんかん、頸椎症や腰椎症(加齢により脊椎が変形して、手足のしびれや麻痺を起こす病気)など、高齢者の疾患には、神経に関わる病気が非常に多い。また、そうした患者のなかには、他の診療科を受診しても原因がわからず、治ることのない痛みやしびれ、脱力などに長年苦しんでいる患者も多い。そして、その患者数は年々、増大しているのだ。

こうした超高齢社会の課題に、脳神経内科はどう応えていくのか。「まずは一人でも多くの患者さんに神経学的診察を行い、診断をつけることが大切だと思います。難しい病気でも、原因がわかり、改善の見通しを立てられるだけで、患者さんは安心し、前向きに生きていけると思います」(安藤)。さらに安藤は、臨床経験と臨床研究を積み上げ、それを大学の基礎研究へフィードバックすることで、今まで治らなかった病気の新たな病態解明や治療法の開発に貢献することを構想する。「新しい治療法の開発に協力することで、難しい病気を少しずつでも治せるようにしたいんです。幸い、当院には、脳神経内科だけでなく、脳神経外科、整形外科などが連携して多角的に治療に取り組む風通しの良さがあります。この風土を活かし、幅広い疾患について豊富な臨床研究を重ねていきたいと考えています。さらに」と、安藤は話を続ける。「今はまだ治せない病気についても、適切な薬物療法やリハビリテーションなどを通じて、患者さんのQOLをさらに高めていきたいと思います。治らない病気にも向きあって、生活を取り戻すために全力を尽くす。そのためにできることを、これからも不断に追求していきます」。

  • 脳神経内科は全身を診る診療科だけに、横の繋がりが重要になる。脳神経外科、循環器内科、整形外科、リハビリテーション科など、さまざまな診療科と緊密に連携し、治療にあたっている。
  • 安城更生病院の強みは、診療科間の垣根の低さだ。川上は「どの診療科もいつでも相談できます。たとえば、脳梗塞の患者さんが救急搬送されれば、脳神経外科医も同時にスタンバイしてくれる。迅速でスムーズな治療を提供できます」と話す。

超高齢社会で、
圧倒的に不足する脳神経内科医。

  • 高齢患者の増加に伴い、脳神経内科へのニーズは増大しているが、脳神経内科医の数は圧倒的に不足しているのが現状だ。「全国的に見れば、現状の2倍くらい脳神経内科専門医が必要だと思います」と、安藤は話す。
  • 医師不足を補うため、同院では優秀な専門医の育成に全力を注ぐ。だが、それは一つの病院で解決する問題ではない。社会全体で脳神経内科医の存在を評価し、医師の育成と増強に取り組んでいくべきではないだろうか。

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