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一刻を争う急性心筋梗塞
患者の命を救うために。

地方独立行政法人
岐阜県総合医療センター

高度で身体への負担の少ないカテーテル治療を
駆使して救命救急医療に全力を尽くす。

心原性ショックの
救急患者が搬送されて。

ある日の夕刻、岐阜県総合医療センターに高齢患者が救急搬送されてきた。他院で心臓カテーテル検査を行い、急性心筋梗塞(冠動脈が突然詰まる病気)と診断されたが、治療困難で同院へ。その搬送中、一時的にショック状態(全身に血液を十分に送れなくなる状態)になったという。心臓カテーテル検査の結果では、左主幹部病変を含む重症3枝病変であり、一般的には冠動脈バイパス術が適応される。しかし患者は高齢で、開胸手術は高いリスクを伴う。患者を診察した循環器内科医の岩間 眞(心血管カテーテル治療科部長)は、緊急時でも迅速かつ身体への負担を軽減して行える治療法として、インペラを使用しての経皮的冠動脈形成術(カテーテルを挿入し、詰まった冠動脈を再還流させる治療)を行うことを決断した。

インペラとは、心臓の負荷を軽減しながら全身に血液を送ることのできる、最新の循環補助装置。先端に軸流ポンプを装着したカテーテルを太もものつけ根の動脈から挿入し、左心室の中まで到達させ、そこから血液を送り出すものだ。

岩間の指示を受けた臨床工学技士や看護師は、直ちにインペラの制御装置や経皮的冠動脈形成術の器具を準備。心臓カテーテル室には、循環器内科医のほか、コメディカルスタッフたちが集結した。「かけ声一つで専門チームが集まれるのは、当院ならではの強みです。また、緊急手術が必要な場合は、心臓血管外科医がすぐに駆けつけてくれる。心臓血管外科との強い連携が治療の安全性を担保しています」と岩間は説明する。

迅速な診断と治療が奏功し、患者は一命を取り留め、全身に血液を送るポンプ機能を回復。それから2週間後、無事に独歩で退院していった。こうした一刻を争う救急患者の搬送は、同院では珍しいことではない。「急性心筋梗塞は一分一秒でも早く治療を開始しなくてはなりません。そのため、当院では当番の循環器内科医が24時間365日、待機。いつでも緊急カテーテル治療を行える体制を堅持しています」と岩間。心血管治療において、同院は地域の最後の砦としての責務を全うしているのである。

地域のネットワークを
広げ、心筋梗塞に対応。

一刻も早く血流を取り戻さないと、心臓の筋肉が死んでしまう心筋梗塞。その治療は常に時間との闘いであり、患者の命を救うには、先進の医療を提供できる高度急性期病院が必要不可欠である。しかし、「当院だけが頑張っても決して患者さんの命を救うことはできません」と、循環器内科部長の野田俊之(副院長兼診療局長)は言う。

「この岐阜医療圏では循環器内科の救急医療を行っている病院がバランスよく整備され、救急隊も含めて連携を推進しています。複数の病院で手分けして急性心筋梗塞症などを受け入れることにより、一人でも多くの救命に尽力しています。各病院が患者さんを受け入れ、それぞれの役割を果たすとともに、心原性ショックのように難度の高い医療が必要な症例があれば、当院に速やかにご紹介いただいています。こうした循環器救急医療のネットワークがあることで、地域全体で心疾患にしっかり対応できているのだと思います」(野田)。

循環器救急医療ネットワークのなかで、確かな役割を担う岐阜県総合医療センター。では、今後に向けて、どのような目標を掲げているのだろうか。「一つは、高度急性期病院として常に最先端の情報を取り入れ、スタッフの教育も含め、医療の質の向上に努めていきたいと考えています。たとえば、心原性ショックに対しては、インペラのほか、経皮的人工心肺補助装置(PCPS/VA-ECMO)なども用います。そうした専門性の高い医療知識・技術をしっかり蓄え、患者さんに還元していきたいと思います」と野田は話し、さらに続けた。

「もう一つ大切なのは、急性期を脱した後のリハビリテーションや再発予防ですね。急性心筋梗塞を発症した人の命を救い、スムーズな社会復帰をサポートし、再発を防いでいく。そんな包括的な取り組みを通じて、この地域の心臓病の患者さんを一人でも多く救っていきたいと思います」。

  • 心筋梗塞の再発リスクを減らすために、岐阜県総合医療センターでは退院後の患者に対し、外来での心臓リハビリテーションに注力。有酸素運動だけでなく、生活指導やカウンセリングも含めた包括的なプログラムを実践している。
  • 「多職種が関わることにより患者さんは見違えるほど元気になります。再入院を防ぐ上でも効果を上げています」と心臓リハビリテーション部長の谷畠進太郎(院長補佐・循環器内科医長)は話す。

循環器内科と心臓血管外科が
緊密に連携する重要性。

  • 心原性ショックといった緊急症例に対する、高難度なカテーテル治療。それを可能にしているのが、循環器内科と心臓血管外科の緊密な連携体制である。
  • 岐阜県総合医療センターでは24時間365日、循環器内科医が待機する体制を整えるとともに、心臓血管外科医をオンコールで呼び出せる体制を確立。昼夜を問わない内科医と外科医の強力なタッグが、心臓血管治療の安全性を高める鍵を握っている。

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