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地方独立行政法人
岐阜県総合医療センター
高度な放射線治療の提供体制を整え、
待望の南棟がいよいよ始動。
2021年より建設を進めてきた岐阜県総合医療センターの南棟がまもなく完成する。1階にはがん治療に対応する放射線治療部門、2階には外来部門、3階にはがんの遺伝子治療を支える病理部門、日帰り手術に対応する手術部門などが配置され、2024年3月より稼働を開始する予定だ。
南棟の最大の特徴は、最新の放射線治療を可能にする設備や人材を揃え、岐阜県随一ともいえる放射線治療体制を完備することだろう。設備は高精度照射にも対応可能な汎用型リニアック、強度変調放射線治療に特化したリニアック(ラディザクト)、体幹部も含めた定位放射線治療に特化したリニアック(サイバーナイフ)の3台を設置。主任部長・放射線治療科部長の梶浦雄一は次のように話す。「これまで当院では汎用型リニアック1台しかなく、患者さんにご不便をおかけしていました。今回はその汎用型リニアックを更新するとともに、新たに2つの機能に特化した設備を加え、がんに対する放射線治療のニーズにオールラウンドに対応できる体制が整いました」。
設備の拡充により、どんな治療が可能になるのか。「強度変調放射線治療は、がん病巣に放射線を集中して照射する治療法で、周囲の正常組織への照射を最小限に減らすことができ、治療後のQOL(生活の質)を高く維持できます。定位放射線治療は、がん病巣に対して多方向から高線量を集中して照射する治療法です。全身の腫瘍に適応でき、ほかに転移のない早期のがんに対して有効な治療成績が期待できます」と、梶浦は説明する。
こうした高度な放射線治療を行うために、医師(放射線腫瘍医)、看護師(専従)、診療放射線技師(放射線治療専門放射線技師)、医学物理士などの人員も重点配置。新たな放射線治療チームとして、患者を全面的にサポートする計画だ。「放射線治療の最大の利点は、手術に比べ、臓器の機能や形態の温存に特化し、QOLを向上できる点にあります。とくに高齢者の場合、負担の大きい手術よりも放射線治療の方が適している場合が多く、放射線治療は今後ますます重要になっていくと思います」と梶浦は話す。
南棟の構想はいつ頃から始まったのだろうか。前院長の滝谷博志(中央検査部部長)に話を聞いた。
「ちょうど私が院長に就任した2014年くらいから始まったと記憶しています。当時、日本のがん治療は手術と化学療法が中心で、その補完的な役割を放射線治療が担っていました。しかし、欧米ではその頃すでに放射線治療が全体の50%以上を占めるほど利用されていて、いずれ日本でも放射線のニーズが高まるだろうと考えました」。
「その未来予想に照らし合わせてみると、岐阜県では汎用型の装置や強度変調放射線治療を行う装置を導入している病院はありましたが、定位放射線治療を行えるところはなく、県外の病院に紹介している状況でした。なんとか岐阜県内でもすべての放射線治療を完結したい、という思いで動き出したのが、南棟の建設計画です。実際の治療に関しては岐阜大学医学部附属病院放射線科が全面的にバックアップしてくださるという連携が得られたことも、計画を後押ししてくれましたね」。
この放射線治療のほか、南棟ではがんゲノム医療(詳しくはコラム参照)を支える病理部門も拡充される。次世代のがん診療も見据えた、最新のがん治療のコアセンターとして機能していくことが期待されている。最後に、今後の抱負について、理事長兼病院長の桑原尚志に語ってもらった。
「いよいよ待望の南棟が始動するということで、気持ちも新たに引き締めています。南棟の完成により、がん診療の総合的なレベルアップを図ると同時に、その他の医療体制も充実させる計画です。たとえば、本館では超音波検査室や不整脈疾患のカテーテル治療室を増設するなど、多くの患者さんによりスムーズに診療を受けていただける環境を整えていきます。また、次代を担うスタッフ教育にも力を注ぎ、県民の皆さまに最善で安全な医療を提供できるように一層努力していきたいと思います」。
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