LINKED plus 病院を知ろう
地方独立行政法人
岐阜県総合医療センター
新しくサイバーナイフの運用もスタート。
脳神経外科の治療をさらなる高みへ。
2025年4月、いよいよ岐阜県総合医療センター・脳神経外科でサイバーナイフを用いた治療がスタートする。サイバーナイフはロボットアームに取り付けられた定位放射線治療専用の装置。ロボットアームが体の周りを動き、患者の体の動きに追従してピンポイントで放射線を照射するもので、脳のほか、前立腺・肺・肝臓がんなどにも適用されている。
「その運用を待ち望んでいた」という村瀬 悟(脳神経外科部長・脳卒中治療科部長)に話を聞いた。「サイバーナイフは1㎜以内の誤差精度で、正確に病変部へ照射できます。それだけ周囲の正常組織へのダメージも少なく、高い治療効果を得ることができる。高度な放射線治療を推し進める上で強力な武器になると思います」。
では、サイバーナイフはどんな疾患に適用されるのだろう。「第一に考えているのは、他の臓器で発生したがんが転移してできる転移性の脳腫瘍です。腫瘍のサイズが小さく、数も少ない場合、サイバーナイフでしっかり除去できますし、腫瘍の状態によっては手術と組み合わせることも想定されます。そのほか、脳動静脈奇形(脳の中で動脈と静脈が直接つながり、その部分が塊になる病気)、三叉神経痛(顔の片側が激しく痛む神経痛)など。さらに、転移性ではなく原発性脳腫瘍でも、あまり大きくないものは治療の対象になる場合もありますね。いずれにしても症例に応じて適用を検討し、安全第一に治療を行っていきます」(村瀬)。
村瀬がサイバーナイフに期待するのは、治療効果だけではない。もともと放射線治療は開頭手術に比べて体の負担は少ないが、サイバーナイフはさらに低侵襲だという。「他院で行われているガンマナイフ治療では患者さんの頭部が動かないように、局所麻酔を行って頭蓋骨をピンで固定します。でも、サイバーナイフはある程度、患者さんの動きに追従できるので、ピン固定ではなく、メッシュ状のマスク固定で治療できます。ですから、患者さんの恐怖心も和らぎ、安心して治療を受けていただけると思います」と村瀬はほほえむ。
外科的治療にサイバーナイフなどを用いた放射線治療を組み合わせ、幅広い脳疾患に対応する脳神経外科。そのなかでもとくに同科が力を注いできたのが、脳卒中に対する治療である。脳卒中は脳の血管が詰まったり破れたりして、脳が障害を受ける病気。治療が早ければ早いほど後遺症を減らせるが、治療が遅れれば重い後遺症が残ったり、最悪の場合、命を落とすこともある。そのため、何よりも早期の治療を行うことが必須となる。
同院はもともと地域で〈一次脳卒中センター〉の認定を受け、24時間365日脳卒中患者を受け入れてきた。その認定を一歩進め、2024年4月、〈一次脳卒中センターコア施設〉の認定を取得。地域における脳卒中治療の中心的な役割を担っていくことになった。コア施設は、脳の血管が詰まる脳梗塞に対し、24時間365日t-PA(血栓溶解剤)を投与できると同時に、カテーテルを用いた血栓回収療法を行うことができ、万一の場合はすぐに外科的処置ができる施設である。
今回の認定について村瀬は、「認定を受けて、より一層救急隊の皆さんとの連携も深まったと思います。脳卒中の疑いのある人を一分一秒でも早く搬送していただき、適切な治療に繋げることができるように、常に万全の体制でのぞんでいます」と話す。
最後に、今後の目標や課題について聞いた。「サイバーナイフや血栓回収に用いる医療器具など、医療技術は日々進歩しています。そういった最新医療をいち早く導入し、地域の患者さんに常に最高水準の医療を提供できる脳神経外科をめざしていきたいですね。また、そのためにも若い医師を育て、増やしていくことも課題です。マンパワーを増強し、岐阜県の脳神経外科医療を高度に支える医療機関として、これからも地域医療に貢献していきたいと思います」。村瀬は力強い口調でそう語った。
COLUMN
BACK STAGE