LINKED plus

LINKED plus 病院を知ろう

コロナ禍の町を守る
小さな病院の大きな挑戦。

みよし市民病院

緊急事態宣言の最中にあっても、
市民の健康は私たちが守る。

発熱者をトリアージする
厳密なゲートコントロール。

「4月21日(火)より、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、病院正面玄関の入場制限(ゲートコントロール)を行います」。そんなお知らせが、みよし市民病院のホームページで発表された。その日の朝8時30分から、病院の玄関の外側に、フェイスシールドとマスクを着用した職員が立った。訪れた人に来院目的や体調の聞き取りなどを行い、検温で37℃未満であることを確認した人だけ案内する体制が始まった。院内に入ると、待合スペースの椅子は間隔をあけて座るように工夫してあり、空気の流れもコントロールされ、受付ではフェイスシールドをつけた職員が対応。3密(密閉・密集・密接)を避ける工夫が随所に盛り込まれていた。

この安心・安全な体制づくりを主導したのは、感染防止対策委員会の加藤千博委員長(副院長)だ。「ゲートコントロールの目的は大きく分けて二つあります。一つは、市民の皆さんが安心して外来を受診できること。コロナ禍でも、病気の見逃しや持病の悪化を防ぐため、感染の不安なく来院できる体制を整えたいと考えました。もう一つは、入院患者さんを守ることです。当院には、慢性疾患を持つ高齢患者さんが多く入院していますから、院内にウイルスを持ち込まない対策をさらに強化する必要がありました」。(加藤)

一般に、施設の入場制限では体温37.5℃が基準だが、同院では〈37℃未満〉に設定しており、コントロールはかなり厳密だ。では、熱が37℃以上ある場合、受診できないのだろうか。「いえ、決してそうではありません。熱がある場合、院外のテントで、ガウンを着た医師や看護師がより詳しく病状をお伺いします。そして、感染リスクが低い方は一般の患者さんと接しないように、午後の総合初診外来を受診していただきます。反対に、感染リスクが高い方は、帰国者・接触者相談センターに紹介します」と、加藤は説明する。同院のゲートコントロールは、発熱者を断るためのものではない。安心・安全を担保した上で、医療を必要とする市民を最大限受け入れていくための仕組みなのだ。

外来、入院、在宅支援という
市民病院の役割を果たす。

コロナ禍であっても、市民を最大限に受け入れる。その姿勢は、紹介患者などの受け入れにおいても貫かれている。同院は高度急性期を脱した患者や在宅療養中に急変した患者を受け入れる役割を担っている。そうした依頼に対しても、断ることなく、安全に配慮した上で受け入れを続けてきた。さらに、訪問診療、訪問看護においても、〈うつさない・うつらない〉対策を徹底しながら、続けてきたという。この数カ月間を振り返り、「職員みんなが、本当によくやってくれました」と加藤は笑みをこぼす。「当院は122床の小さな病院ですが、感染症対策については、500床規模の病院と同じレベルのことをやってきました。少ないマンパワーでここまでの対策をするには、職員の負担が相当大きかったと思います」。限られた人数で感染予防を徹底するために、どんな戦略で挑んだのか。「優先順位をつけることですね。第一に優先したのは、入院患者さんの命を守ることです。高齢者はいったん感染すると、重症化のリスクが高い。そのため、面会制限をはじめ、ゾーニングなど病棟での感染予防対策に力を注ぎました。そちらに注力したため、健診業務などはお休みしていましたが、今は特定健診やがん検診などの健診業務も再開しています」。

同院ではすでに、新型コロナウイルス感染拡大の第2波、第3波に向けて、準備を進めている。感染防止対策委員会のメンバーは、そのためのマニュアルづくりに追われているという。「緩急をつけて対応していく方針です。今は落ち着いているので入場制限なども緩めていくことになるでしょう。でも、感染症が広がり出したら、速やかに制限を厳しくします。いついかなるときも、市民の健康は私たち市民病院が守るという使命を自覚し、外来、入院、在宅支援というすべての領域にわたり、気を緩めることなく感染症対策に取り組んでいきます」。(加藤)

  • 同院では、病棟での院内感染予防にも力を注ぐ。集団での食事を個室に切り替えたり、リハビリテーションやレクリエーションを減らしたり、もちろん入院患者への面会制限も行ってきた。
  • 但し、そうした制限が引き金となり、入院患者の認知症の進行や、ADL(日常生活動作)の低下が生じている。病棟の看護師たちは声かけを増やし、なるべく一人にしないよう配慮するなど、入院患者の心のケアに懸命に取り組んでいる。

大規模病院と同程度の
感染症対策を行う負担。

  • みよし市民病院は、愛知県で一番小さな市民病院である。しかし、今回のコロナ禍にあって、大規模病院に匹敵するような厳密な感染症対策を実践してきた。
  • 少ない人数で日常の業務に加え、感染症対策を実施するには職員一人ひとりに非常に大きな負荷がかかると同時に、費用もかかる。感染症指定病院ではない、こうした中小病院の負担をいかに支えていくか、ということも、社会が直面する大きな課題といえるだろう。

Copyright © PROJECT LINKED LLC.
All Rights Reserved.