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みよし市民病院
愛知医科大学病院・循環器内科と協力して
高度急性期から回復期、慢性期までカバーする。
「その後、動悸や息切れはどうですか。運動は続けていますか」。みよし市民病院の外来診察室で、そんなふうにやさしく患者に話しかける医師がいた。令和2年4月、循環器科の非常勤医師として愛知医科大学病院から赴任した大橋寛史である。大橋は毎週月曜日午前中、心不全や不整脈などの症状を抱える患者を診察している。「みよし市には、真面目に治療に向き合おうという方が多いですね。私たちが食事や運動療法についてアドバイスすると、熱心に取り組んでくれるのでやりがいを感じます。心臓の病気は生活習慣病がベースにあることが多いですから、そこから改善することで重症化を防ぐよう努めています」と話す。
午前の診療が終わり、一息つくと、大橋はカテーテル治療室へ移動した。この日、狭心症に対するカテーテル(細い管)を用いた冠動脈造影検査・血管内治療を担当することになっていたのだ。これは、カテーテルを血管内に通して心臓まで送り込み、心臓を取り巻く冠動脈を撮影。そこで、血管が細くなっている部位をバルーン(風船)で押し広げ、ステント(金属製の網)を留置して、血流を改善させる治療法だ。手術と比べて、患者への体の負担が少なく、安全性も高い。「血管内治療は大学病院でも行っていますが、それと同じ感覚でやらせてもらっています。この治療は医師、看護師、放射線技師、臨床検査技師のチームで取り組みますが、スタッフみんなが医療安全への高い意識を持ち、標準的な手技を安全確実に行っています。非常にレベルが高いチームだと思います」と評価する。治療後の体調管理は常勤医師が責任を持って担当し、スムーズな退院へ導く体制だ。
大橋は月曜日の業務を終えると、火曜日からは大学病院の循環器内科に戻る。2つの病院を行き来する勤務体制について、どのように感じているだろうか。「もともと循環器を専門に選んだのは、急性期の命を救う治療から慢性期の治療までずっと患者さんに関われることに魅力を感じたからでした。当院の外来には慢性期の方も多く、症例も幅広いため、とても勉強になります」。
循環器科における2つの病院の連携は、どういう背景から生まれたのだろうか。院長の伊藤治は次のように話す。「当院の循環器科は精緻な手技が要求される血管内治療に積極的に取り組むなど、高い水準をキープしてきました。しかし、ここ数年医師不足に陥り、市民の皆さんに充分な医療サービスを提供できない状態でした。そこで、令和元年から愛知医科大学病院の循環器内科のご協力を得て、毎週月・金曜日の2日、医師を派遣していただく体制を整えたのです」。
前任者から引き継いだ大橋は「この連携を通じ、大学病院の医療資源をみよし市の皆さんにもっと積極的に提供していきたい」と意欲を燃やす。「たとえば、外来で弁膜症や不整脈などの病気が見つかった場合、大学病院へ速やかに紹介できます。大学病院では、大動脈弁狭窄症に対する経カテーテル的大動脈弁留置術(TAVI)といった最新治療や、心臓外科もありますので、従来の外科的治療まで安全に提供できます。また、不整脈に対するアブレーション治療についても、多くの症例実績があり、安心して治療を受けていただけると思います」。
その言葉にうなずき、伊藤は次のように話す。「最先端の医療機器を用いた高度な医療は大学病院にお願いし、当院は病気の早期発見、そして退院後の回復期リハビリテーションや再発予防を担当する。そうした役割分担を徹底することで、患者さんに高度急性期医療から回復期、慢性期の医療まですべてを切れ目なく提供できる体制が整います。また、高齢患者さんのなかには、併存疾患として心臓の病気を持つ人も少なくありません。そういった部分のフォローにも力を注いでいきたいと思います」。心臓病が重症化する前のベストなタイミングで、ベストな治療を提供していくために、2つの病院はさらに連携を強化していこうとしている。
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