LINKED plus 病院を知ろう
みよし市民病院
加齢に伴うさまざまな目の疾患を適切に治療し
高齢者のイキイキとした暮らしを支え続ける。
「先生、すごくよく見えます」。手術の翌日の診察で、Sさん(70代女性)は声を弾ませて報告した。Sさんの病気は、白内障。水晶体というレンズに相当する部分が年齢とともに白く濁り、視界がぼやけて霞むようになり、視力も0.3くらいまで低下。新聞を読むにも、薬を飲むにも時間がかかり、不便な生活を送っていた。思い切って手術を受けて視力と視野を改善させたSさんは、以前のような快活な生活を取り戻すことができたのである。
この手術を行ったみよし市民病院・眼科医長の井岡大樹(いのおかだいき)は、次のように話す。「社会の高齢化に伴い、白内障を患う高齢の患者さんが増えていますね。ごく早期であれば、目薬を出す先生も多いと思います。しかし、進行すると、根本的な治療法は手術になります」。白内障の手術は通常、局所麻酔で行われる。薬を点眼して目の表面に麻酔をかけ、白目のところに小さな創口をつくり、超音波の器具を挿入。最小限の超音波の力で水晶体の濁った部分を砕いて吸引し、そこに人工のレンズを挿入する。手術時間は20分程度と非常に短く、体への負担は比較的少ない。日帰り手術を行う施設もあるが、同院では安全性を最優先し、最低でも1泊2日の入院で行っている。「術後も合併症予防や網膜のむくみなどに注意しないといけません。当院では、退院後も定期的に通院していただき、経過を慎重に見守っていきます」と、井岡は話す。
こうした手術体制は、令和2年10月に井岡の就任をきっかけに強化された。白内障手術のほか、眼球の内部を満たしているゼリー状の硝子体(しょうしたい)の疾患に対する手術も積極的に行っている。これは、眼球に小さな穴を数カ所あけて器具を挿入し、出血などで混濁した硝子体に治療を施すもの。極めて精緻な技術が求められる高度な手術だ。「患者さんの安全性を担保するために、手術をするときは院外から経験豊富な眼科医を招いて行っています。もちろん、手術器具・装置はいずれも最新のものを取り揃えていますから、安心して任せていただきたいと思います」と、井岡は胸を張る。
同院の眼科では、ものもらいや結膜炎をはじめとした一般的な眼科疾患に幅広く対応。糖尿病網膜症や加齢黄斑変性などの網膜疾患、緑内障など、それぞれの疾患に適した治療を提供している。ただ、昨年から続く新型コロナウイルスの感染拡大により、受診を控えている患者が増えていることも事実だ。「明らかに患者さんが減っていますから、それぞれの病気が悪化しないか心配ですね。たとえば、緑内障は目薬で進行を抑える治療が一般的ですが、目薬が切れたのにそのままにしていて、視野がさらに狭くなってしまうケースもあります」(井岡)。
眼科疾患の多くは命に関わるものではない。しかし、視力が落ちると、生活の質の低下も確実に進む。「私たちが受け取る情報のうち、およそ8割は視覚から得られるといわれています。目が見えにくくなると、仕事や家事など日常生活に支障が出ますし、転びやすくなったりします。また、在宅で療養している高齢者のなかには、テレビだけが楽しみという方もいらっしゃいます。そういう方から視力を奪うことは、生活の質を著しく損なうことになります」と井岡は言い、さらに続けた。「もう一つの重要なポイントは、目の疾患が全身の疾患に繋がっていることです。たとえば、糖尿病から網膜症になったり、膠原病からドライアイになったりします。目の診察を機に、重大な病気が見つかることもよくあります。だからこそ、視力などに違和感を覚えたら、先延ばしにすることなく、私たち専門医に相談していただきたいと思います」。
なるほど、目を守ることは生活の質を守ることであり、ひいては全身の健康を守ることに繋がる。高齢になっても、イキイキと健やかに、安全に暮らしていく上で、眼科医療の果たす役割は非常に大きい。井岡はその責任を十分に自覚し、みよし市民の目と全身の健康を守っていこうとしている。
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