LINKED plus 病院を知ろう
みよし市民病院
住み慣れた地域でずっと暮らせるように
病院から在宅への流れをサポートする。
みよし市民病院の地域包括ケア病床では、毎日お昼どきに多職種が集まって、入院患者の個別カンファレンスを行っている。主な参加者は、主治医、看護師、理学療法士、薬剤師、地域連携室の職員など。この日は、高度急性期病院で大腿骨頸部骨折の治療を終え、昨日、転院してきたばかりの80代男性患者について、皆で情報を共有していた。
「この方はご夫婦ふたり暮らし。奥様の希望は、トイレまで自分で行けるようにリハビリしてほしいとのことでした」と看護師。続いて理学療法士が、歩行能力の評価について述べた。「現在は車いすで、まだ立ち上がることはむずかしいようです。トイレの自立を目標にしつつ、まずはポータブルトイレの自立をめざして訓練したいと思います」。このほか、患者の生活環境についても意見が交わされ、早急に家屋を訪問し、段差や手すりなどについて調査することを取り決めた。
この患者が入院する地域包括ケア病床とは、どんな病床だろうか。病床の責任者である竹内和男(看護師)に話を聞いた。「地域包括ケア病床は急性期の治療を終えた方を受け入れ、在宅復帰に向けて医療管理、リハビリテーション、退院支援などを行う病床です。リハビリして早く家に帰りたい、という人だけでなく、家へ帰るために家屋改修などの準備が必要な人、入居施設がなかなか見つからず、探している人など、いろんな目的で入院していらっしゃいます」。
地域包括ケア病床の入院期間は2カ月間が基準。竹内たちは、その間にできるだけのことをして、患者が最善の生活を送れるよう支援している。同時に、地域包括ケア病床は在宅療養中の患者を支援する役割も担う。総看護師長の高橋和恵は「病院から在宅への一方通行だけではなく、在宅で療養している人たちの手助けになるような病床でありたい」という考えを話す。「在宅で療養中に急変すると、ご家族は心配です。そんなときにいつでも受け入れたいですし、ご家族の介護疲れを解消するためのレスパイト入院にも力を入れていきたいですね。在宅で安心して療養できる受け皿として、もっともっと機能させていきたいと思います」。
同院では現在、地域包括ケア病床が14床、稼動している。令和4年度には18床に増床。ゆくゆくは急性期病床(68床)の約半分を、地域包括ケア病床に転換する計画を持っている。
その狙いはどこにあるのだろうか、伊藤 治院長に話を聞いた。「もともと当院の事業管理者である成瀬 達医師が、地域包括ケアシステム(詳しくはコラム参照)の拠点病院を作りたい、という構想を持っていました。その実現のために、当院は地域包括支援センターや訪問看護ステーションなども併設し、院内で医療・介護・福祉の相談を受けられる体制を整えてきました。地域包括ケア病床の増強も、その延長線上にあるものです。この病床を増やすことによって、より一層地域包括ケアシステムの拠点病院としての存在感を発揮していきたいと考えています」。
また、同院の強みは、急性期病床や地域包括ケア病床だけでなく、療養期の病床を併せ持つケアミックス病院であることだ。「どうしても2カ月の準備で在宅に戻れない場合、もう少し長く入院を続ける、という選択肢も提供できます。そのことも、患者さんの安心感に繋がると思います」と伊藤は話し、今後の展望について次のように続けた。
「高齢化が進み、今後ますます病院ではなく、在宅で療養する人が増えていくと思います。そうした方々に、退院しても安心して療養できる環境を提案していくのが当院の大きな役割です。そのためにも、地域包括ケア病床は、当院の病床というよりも、〈地域の病床〉として、地域の皆さんに積極的に利用していただきたいですね。たとえば、周辺のクリニックにかかりつけの方の、在宅療養中の急変やレスパイト入院などに使っていただく。周辺の在宅医療・介護を担うスタッフとの連携を深めることで、地域で皆さんを支えるために役立つ病床です。療養生活でお困りのとき、〈とりあえず市民病院に行けば何とかなる〉と思っていただけるよう、これからも全力を注いでいきます」。
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