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LINKED plus シアワセをつなぐ仕事

療養生活を支える
市民病院の使命。

みよし市民病院

みよし市民のための病院として、
増え続ける在宅療養を守っていく。

在宅療養している患者の
一時的な入院を受け入れる。

みよし市民病院に併設しているみよし市訪問看護ステーションでは、訪問看護師が市内中を駆け回り、在宅療養中の患者と家族の生活を支えている。訪問看護ステーション管理者の足立久美子はその日、90代の肺炎患者のもとを訪問した看護師より「夜間の尿の回数が増え、その都度トイレ介助しているため、ご家族がここ数日、ほとんど寝ていないのが心配です」と報告を受けた。足立はこの話に、いつもとは違う危険なシグナルを感じ取った。

「まず疑ったのは患者さんの尿路感染ですが、それと同じくらいご家族の介護疲れが心配になりました。このご家族は本当に一生懸命介護をしていて、夜間のオムツも使わない方針を貫いていました。ただ、真面目に介護する人ほど燃え尽きてしまい、ある日突然『もう無理です』と音を上げることがあります。そうならないように、ここで一旦ご家族に休んでいただく必要があると考えました」。足立の相談を受けたみよし市民病院の主治医は、すぐに入院を決断。尿路感染も含め、体調が回復するまで1週間ほど病院で様子を見て、その間、ご家族にゆっくり過ごしていただくことにした。

こうした在宅療養中の入院の依頼は、地域連携・医療相談室へ入ることも多い。山田ゆかり(副看護師長)は、次のようなケースを話す。「呼吸器疾患で在宅酸素をしているご主人がいて、その奥さんが股関節の手術を受けることになりました。奥さんの入院中、ご主人の介護をどうしたらいいか、困り果てていたそうです。そんなとき、奥さんのかかりつけ医から当院がレスパイト入院(コラム参照)を行っていることを聞き、ご主人の主治医に相談し入院の依頼を受けました」。

夫婦二人暮らしの老老介護の場合、介護者が病気やケガをしたら、たちまち介護が行き詰まってしまう。「奥さんの入院中、ずっとご主人の酸素療法と体調管理を続けることができ、ご主人にも奥さんにもとても喜んでいただきました。高齢化が進むにつれ、こういうケースは今後さらに増えていくように思います」と、山田は言う。

地域包括ケア病床を
フルに活用していく。

前章で紹介した事例は、いずれも同院の地域包括ケア病床で入院を引き受けたものである。地域包括ケア病床とは、病状が安定した患者の在宅復帰を支援するとともに、在宅療養中に急性増悪した患者やレスパイト入院を受け入れるという二つの役割を担う。同院では平成28年5月に地域包括ケア病床を10床開設、平成31年2月に14床へ増床、在宅療養支援により一層力を注いでいる。

「地域包括ケア病床ができてから、在宅療養中の患者さんやご家族の困りごとに柔軟に対応できるようになりました。レスパイト入院もその一つです。地域包括ケア病床があるから、『何かあったときはいつでも当院を頼ってくださいね』と胸を張って言うことができます」と、足立は話す。

但し、まだまだ課題もある。「地域包括ケア病床をはじめとした当院の在宅療養支援機能が、まだ充分に知られていないように感じています。新しく開業された診療所の先生方も含め、地域の在宅医療チームの方々にもっと情報発信していきたいと思います」と山田。一方、足立は在宅療養の質の向上を課題に挙げる。「在宅療養の質は、サポートする人の知識や技術によって大きく変わります。たとえば、患者さんの急変に気づく力をご家族やヘルパーさんなどが持てば、より安心して療養していただけます。そのために、私たちの看護の知識をもっと伝えていきたいですね。コロナ禍で中断していたのですが、〈在宅での看取り〉の勉強会も再開していこうと考えています」。

地域連携・医療相談室と訪問看護ステーション、それぞれの視点から地域の在宅療養のこれからに思いを巡らす二人。地域の診療所や在宅医療に携わる人たちの協業を進めながら、在宅療養の底上げを図っていく。市民の入院治療だけでなく、在宅療養も見守る病院として、同院はこれからもサポート体制の充実に力を注いでいく方針である。

  • レスパイトとは、〈休息・息抜き〉という意味。レスパイト入院は、在宅で介護をしている家族が日々の介護に疲れ、倒れてしまわないように、一時的に患者を預かる短期入院のことである。
  • レスパイト入院の主な目的は、家族の介護疲れ軽減だが、冠婚葬祭、入院、旅行などの事情により、一時的に在宅介護が困難となる場合も受け入れ可能。なお、レスパイト入院の受け入れ先は、地域包括ケア病床を備えている病院に限られる。

在宅療養支援の仕組みを
生活者が活用していく。

  • レスパイト入院や訪問医療・介護サービスなど、在宅療養に関わるさまざまな制度が整備されている。しかし、それらは内容が専門的で、広く周知されているものではない。
  • 生活支援サービスは制度を知っている人だけが恩恵を受けるのではなく、必要とするすべての市民に提供されなくてはならない。そのためには生活者自身が在宅療養支援の仕組みを理解し、積極的に活用していくことが重要ではないだろうか。

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