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LINKED plus 病院を知ろう

家に帰りたい-。
その願いを叶えるために。

みよし市民病院

患者さんとご家族の思いを第一に、
入院中から退院後の生活まで支えていく。

余命の限られた日々を
多職種で精一杯支える。

今春、みよし市民病院に90代の男性患者(Aさん)が高度急性期病院から転院してきた。Aさんはもともと妻を介護しながら元気に暮らしていたが、感染症にかかったことから持病が悪化。高度急性期病院で一命を取り留めたものの、ご飯が食べられなくなり、点滴で栄養を補給。余命は限られていると思われた。病棟では医師や看護師、リハビリテーションスタッフ、管理栄養士などが集まり、Aさんの入院生活について話し合った。言語聴覚士はAさんの嚥下機能を評価し、食事再開の可能性を模索。管理栄養士はAさんの好きな食べ物を少しでも口にできないか検討を開始した。理学療法士は日中どういう姿勢で過ごせば苦痛がないかを考え、病棟看護師に伝えた。全員がAさんの入院生活をより良くするために知恵を絞った。

その一方で病棟看護師は、Aさんのもとを頻回に訪ね、何か希望はないか聞くように心がけた。ある日、Aさんは声を絞るようにして呟いた。「家に帰りたい」。看護師はそのことをすぐに多職種のメンバーに伝え、家族との話し合いの場を設けた。同院の訪問医療機能を用いれば、なんとか自宅に戻ることはできる。家族の同意を得て、大急ぎで介護ベッドなどを準備し、退院を実現。Aさんは希望通り、人生最後の数日間をわが家で過ごし、安らかに旅立っていった。

このケースを振り返り、地域連携・医療相談室の山田ゆかり(副室長)は次のように話す。
「当院は、Aさんのように余命の限られた患者さんも受け入れています。余命が限られているからこそ、私たちでできることは精一杯させていただきたい。そんな思いで、なんとか口から食べられるように工夫したり、苦痛を和らげたりするよう努めています。また、最期は家で過ごしたいということであれば、当院の医療機能をフルに使ってサポートしています」。

同院には、訪問診療・訪問看護の機能もあり、地域の在宅医療チームや介護事業者との連携も深い。「患者さんとご家族の思いを第一に、入院中から退院後の生活環境まで整えていく。それが私たちの入退院支援の信念です」(山田)

地域連携に力を注ぎ、
退院後の生活を支援していく。

先に紹介した入退院支援の流れは、専門用語でPFM(ペイシェント・フロー・マネジメント)と呼ばれている。PFMとは、入院前から患者の病状や生活状況を把握し、入院治療から退院後までの道筋を多職種で支援していく仕組みであり、同院では地域連携・医療相談室が中心となって運営している。

「患者さんの安心の療養生活を支えるには、さまざまな角度の支援が必要です。その点、当院は規模は小さいのですが、チーム医療の活動が充実し、患者さんが抱える課題に多角的に取り組んでいます。たとえば、排尿障害や膀胱内留置カテーテル管理といった問題は排尿ケアチーム、低栄養改善に取り組む栄養サポートチーム、入院中の認知症ケアについては認知症ケアサポートチームが担当。多職種の知識とスキルを総動員して、患者さんが入院中も退院後も安心して生活できるように支えています」(山田)。

さらに、在宅医療チームとの連携も強固だ。地域の豊田加茂医師会が進める病診連携のネットワークに参加し、入院から退院後まで患者さんを途切れることなく支援する体制づくりに貢献。同医師会で毎月開催されるカンファレンス(くらげ会議)にも積極的に参加し、地域の病院や診療所と患者情報の共有に力を注いでいる。

「当院は、高度急性期病院と在宅医療を橋渡しする役割も担っています。その役割を果たす鍵を握るのは、患者さんの情報を、地域の在宅医療チームへしっかり伝えていくことだと考えています。たとえば、看護や介護の注意点はもちろん、患者さんがどんな生活を楽しみたいのか、人生の最後をどう過ごしたいのか、といった思いまで把握し、退院後の生活へ繋いでいく。そうすることで、入院中から途切れることなく、患者さんの思いに寄り添った支援を継続したいと考えています」。山田はこれからも、患者第一の入退院支援に邁進する覚悟だ。

  • 医師や看護師をはじめ、リハビリスタッフ、管理栄養士、薬剤師など、多職種で進める入退院支援。中でも患者にとって最も身近な看護師は、医学的な見通しを踏まえつつ、患者の思いや状況を把握し、チームに伝える役割を担う。
  • 「当院ではチーム医療のなかで、看護師が中心になって活躍する場面が多くあります。多職種と協力し、患者さんに寄り添った看護を提供したい。そんな人にとって、やりがいのある職場だと思います」と山田は話す。

入退院支援において重要な
ACP(人生会議)。

  • みよし市民病院は、ACP(自分らしい人生の終わり方を考え、話し合うこと)について先駆的に取り組んでいる。入院患者全員を対象に聞き取りアンケートを行い、その情報を入退院支援に関わる職員で共有している。
  • 高齢患者が増えるなか、退院後の看取りを視野に入れるケースも増えている。患者の胸底に秘める本当の思いを確認することは、今後ますます入退院支援に欠かせない取り組みになるのではないだろうか。

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