LINKED plus 病院を知ろう
公立西知多総合病院
乳がん専門の医師が3名。院内外のチーム医療を見つめ、
早期発見と理想の集学的治療に挑む。
乳がんの治療は、手術療法、放射線治療、化学療法、内分泌療法の組み合わせとなる。そのなかで「充実した放射線治療施設があるかないかは、重要な問題です」と言うのは、公立西知多総合病院 乳腺外科部長の小川明男医師(乳腺指導医、乳腺専門医、乳癌認定医)である。
「乳がん治療の多くは手術から始まりますが、そのとき温存術(乳房を全摘出せず、部分的に切除する)となる患者さんが6割〜7割います。温存術では、術後に残存乳房に放射線照射を行うことで、これが切除と同等の治療となります。また、乳房を全摘出したとしても、進行例では胸壁全体(手術をした胸の範囲、首のつけ根で鎖骨の上の部分)に照射を行う。つまり、乳がん手術には、放射線治療が必須なんです」。
その放射線治療において、同院は平成31年4月、最新放射線治療装置トモセラピー・ラディザクトを導入した。この装置は、がんの形や大きさ、場所に合わせて、がん病巣をピンポイントで照射する、低侵襲の高精度放射線治療が可能。知多半島では同院にしかない装置である。小川は言う。「手術法も抗がん剤もめざましい進歩を遂げています。それに高精度の放射線治療装置が導入され、集学的治療に必要なピースが揃ったことで、当院における乳がん治療の選択肢と幅が一段と広がりました」。
診療には患者ごとに主治医がつくのはもちろんだが、野尻 基医師(外科専門医)は「乳腺外科は個人プレーではありません」と言う。「治療方針一つとっても、手術・放射線・抗がん剤をどう組み合わせていくか、これしかないという答えはありません。だからこそ乳がん専門の医師3人が意見を出し合い、その患者さんに本当にふさわしい治療を追求しています。また、がん診療の経験豊富な他科の医師、多職種(看護師、放射線技師、薬剤師など)が加わったカンファレンスも、目的ごとに週に3回ほど実施。新しい環境が整ったなかで、さまざまな専門家とともに、一人ひとりの患者さんを見つめた治療提供に全力を注いでいます」。
乳がんは、女性がかかるがんのなかでもトップに位置づく。その一方で、乳がん検診が普及し、早期発見に繋がるケースは増えてきた。「しこりを自分で見つけたケースより、検診で見つかる方が、腫瘤が小さい段階で見つかりますね」。そう言うのは乳腺外科 部長の伊東悠子医師(乳腺認定医)である。「だからこそ、乳がん検診を受けてほしいのですが、マンモグラフィは痛いから、また、恥ずかしいからという方もいらっしゃいます。当院には、放射線科も臨床検査科も女性技師が中心となり対応しています。東海市・知多市には、住民健診として乳がん検診もありますから、ぜひとも受診していただきたいですね」。
乳がん検診の後、精査となった場合、乳腺外科では、最高スペックの検査機器、検査体制をフル稼働させ、迅速に実施する。マンモグラフィをもう一度行い、さらにはトモシンセシス、乳腺エコー、必要に応じて細胞診、組織診、MRI検査などを行う。なかでもトモシンセシスは、多方向からのX線照射により1㎜厚の3D断層画像を得る技術。これに対応する最新鋭の乳房撮影装置も整備されている。精査は、原則、一日のうちに実施し、次の受診時に結果を説明。診療所からの紹介の場合は、診療所の先生宛にも情報共有を迅速に行う。
乳腺外科の今後について、小川はこう語った。「院内では〈多職種連携〉により、乳がん診療を進めています。今後は、〈多職種連携〉を地域に広げていきたいと考えます。すなわち、乳がんの地域連携パスの確立に力を注ぎ、地域の診療所、訪問看護などの方々とチーム構築に繋げていく。そうあってこそ、この地域で乳がん治療が完結できると思います。医療は精神的にも生活面でも、苦痛を少なくするのが基本。早期発見や継続治療のために、〈地域でチーム〉結成をめざしていきます」。
COLUMN
BACK STAGE