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西尾市民病院
最新の3Dマンモグラフィを導入し、
乳がんの早期発見・早期治療に力を注ぐ。
「頑張りましたね。早く見つかって、本当に良かった」。この日、西尾市民病院で乳がんの手術を終えて退院する女性に、乳腺外科医の和田応樹副院長は心から労いの言葉をかけた。
この女性は1カ月ほど前に、同院で乳がん検診を受けた。エコー検査でははっきり見えなかったが、3Dマンモグラフィ(乳房X線)撮影で右側の乳房に、粒状の白い影(石灰化)を発見。組織の検査で、乳がんであることが判明した。女性は迷うことなく手術に同意し、右側の乳房部分切除術を実施することになった。乳がんのこわいところは、がんがリンパ管や血管へ入って全身をめぐり、他の臓器などへ転移することだ。そこで、リンパ節転移がある場合、リンパ節を完全に切除することが重要になる。そのため今回も、手術中にわきの下のリンパ節の組織を採取して検査したが、幸い、転移はなし。体への負担を最小限にして手術を終えることができた。退院後は再発予防のために、放射線治療とホルモン療法を行う予定だが、「早期に手術できたので、再発のリスクはかなり少ないだろう」というのが、和田の見立てである。
乳がんは女性のがんで最も多い病気で、日本人女性の11人に1人は乳がんを患うといわれている。しかし、乳がんは、すべてのがんのなかで比較的治療後の見通しが良好で、治癒の目安とされる5年生存率も90%以上と高く、治る可能性が高い。「近年はさまざまな有効な薬も開発され、乳がんの治療法は進化しています。当院では、常に最新の知見を取り入れ、薬物療法と手術療法、放射線療法を組み合わせ、良好な治療成績を上げています」(和田)。
たとえば、近年スタンダードになった治療法の一つに〈術前薬物療法〉がある。これは従来、手術後に行っていた薬物(抗がん剤・ホルモン剤)療法を手術前から行うもの。「手術前に行うことで、がんの縮小効果が図れると同時に、患者さんのがんのタイプにどの薬が効くかを見極めることができます。術後の治療計画を立てる上でも、メリットは非常に大きいのです。術前薬物療法の対象となる患者さんには、積極的に適用しています」と和田は説明する。
乳がん治療で最も大切なことは、何だろう。「それは早期発見に尽きます」と和田は言う。「乳がんの代表的な症状は、しこりです。しこりがなくて、皮膚の凹み、乳頭からの分泌やただれを引き起こすこともあります。ただ、早期の乳がんは痛みを伴うことがないので、少し違和感があってもそのままにする方もいます。もう少し早く来院していただけたら、確実にがんを発見できたのに、と悔しい思いをすることもあります」。
冒頭の女性の乳がん発見に力を発揮したのが、3Dマンモグラフィ撮影だ。同院では令和元年8月、最新の3Dマンモグラフィ(※)に更新し、万全の検診体制を整えた。「乳がんを早期発見するには、定期的な検診が重要です。当院では、女性医師と女性スタッフによる乳がんドックを行っていますので、ぜひそういう機会を利用してほしいですね。実際、検査の結果、がんじゃないことも非常に多いんですが、それはそれで、本当に喜ばしいことです。がんじゃなくて良かった、と安心するためにも、乳がん検診をお勧めします」(和田)。
また、たとえ、乳がんが見つかっても、同院では関係各科が緊密に連携し、最善の治療を提供している。「検査を行う放射線技師、がんの確定診断を行う病理診断科の医師、放射線治療に関わる放射線科の医師、乳房の再建術を担当する形成外科の医師、がんに精通した認定看護師、抗がん剤を扱う薬剤師などが常に意見交換しながら、治療に取り組んでいます」と和田は説明する。さらに同院では、がん療養相談看護外来も開設し、患者の相談に応える体制づくりにも力を注ぐ。「最新で安全な乳がん治療から、退院後の療養生活までずっと伴走できるのが、当院の強みです。これからもスタッフの力を合わせ、患者さんを支えていきます」と、和田は力強く語った。
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