LINKED plus 病院を知ろう
西尾市民病院
優秀な循環器内科医が安城更生病院から赴任。
専門医5名体制で、西尾市民の心臓を守る。
晩夏のある日、西尾市民病院を訪ねると、病棟で患者の歩行訓練に付き添う医師の姿があった。同院の循環器内科に赴任して間もない、子安正純医師である。付き添っているのは、先日、急性心筋梗塞で救急搬送され、子安が心臓カテーテル治療(PCI)を行った患者である。PCIは、カテーテルと呼ばれる細い管を血管に挿入し、詰まった冠動脈を再開通させる治療法だ。開胸手術に比べて体への負担を少なく抑えられ、治療後は速やかに普段の生活に戻ることができる。とはいえ、高齢患者の場合、入院中にできるだけ意識して体を動かすようにしないと、筋力や体力が低下してしまう。子安は、体を動かすことに強い不安感を感じていた患者を励まして、廊下の歩行に連れ出したのだ。「心筋梗塞や心不全の患者さんは、入院中にできる限り体を動かすことがスムーズな生活復帰に繋がります。こうしたリハビリテーションの体制を構築したいと考え、目下、理学療法士などに働きかけているところです」と子安は意欲的に話す。
子安は赴任前、安城更生病院の循環器センターの第一線で腕をふるってきた辣腕ドクターである。PCIを専門として、豊富な臨床経験を蓄積。特に、大動脈弁狭窄症に対する最新治療〈TAVI(タビ)〉の立ち上げメンバーとして尽力し、西三河南部西医療圏に最先端の治療を広げてきた実績を持つ。現在も、安城更生病院でTAVIの適応が決まると、子安医師が指導医として出向き、治療を指揮するとともに、若手医師の指導に力を注いでいる。
子安が加わったことにより、循環器内科は常勤の専門医5名体制、非常勤を加えると7名体制になった。「これまでも当院では、心臓カテーテル検査や一時的心臓ペースメーカー挿入などは、昼夜を問わず、いつでも緊急で行っていました。さらに私が加わることで、より余裕のある人員体制で、救急対応ができるようになりました」と子安。心臓の疾患は、一刻を争うことが少なくない。市内に24時間365日対応する循環器内科の拠点があることは、市民に大きな安心感を与えるといえるだろう。
子安が西尾市民病院でチャレンジしようとしているのは、どんな医療だろうか。「高度急性期病院では最先端の医療を追求してきましたが、そのなかで、心臓病は治療だけでは終わらないことを実感し、もの足りなさを感じていました。患者さんの生活を取り戻すには、治療後のリハビリテーションが重要ですし、退院後も再発予防のためにしっかりした生活管理が求められます。当院はより生活に近いところにある病院ですし、専門性の高い看護師が揃っていて、リハビリテーションをはじめとしたコメディカルスタッフのレベルも高い。この恵まれたフィールドで、心臓病の予防から治療、そして在宅での支援まで一貫した医療を展開していきたいと考えています」(子安)。
子安が最初に計画しているのは、病棟での社会復帰に向けたリハビリテーションの体制づくり。ゆくゆくは、心臓リハビリテーションに広げていく考えだ。同時に、地域の診療所と顔の見える関係を築き、地域医療連携の強化にも力を入れていこうとしている。「私が赴任する前から、当院はガイドラインに則り、PCIなどの治療に積極的に取り組んできました。その医療レベルは、高度急性期病院に匹敵するものです。また、患者さんやご家族との対話を重視し、丁寧に診療を進める風土もあります。その良さを活かしながら、救急から生活復帰までを支援するハートチームとして大きく成長していきたいですね」と、抱負を語る。
西尾市内の循環器疾患は、まずは同院で診て、必要に応じて近隣高度急性期病院などと連携して治療していく方針だ。「循環器疾患の治療法はいろいろありますが、当院ですべてやることはできないですし、やろうとも思っていません。患者さんファーストで、常により良い治療法を提案し、地域医療連携のなかで、患者さんを治し支えるのが、私たちの使命だと考えています」と子安は力強い口調で締めくくった。
COLUMN
BACK STAGE