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LINKED plus 病院を知ろう

第一に生活への目線、
患者に寄り添う整形外科。

西尾市民病院

患者一人ひとりの生活背景を理解し、
日常を取り戻すために全力を尽くす。

退院後の生活を見据え
最善の治療を提供する。

西尾市民病院の整形外科外来では、この日、エックス線写真を見せながら、患者の家族に説明する主治医の加藤庄平(整形外科医長)の姿があった。この患者は、数日前に玄関の段差を踏み外して転倒した80代女性。エックス線検査をしたところ、関節の内側が骨折していて、大きくずれていることがわかった。加藤は人工骨頭置換術がふさわしいだろうと判断、家族に提案することになったのだ。「人工骨頭置換術は安全性の高い治療法であること。手術後は速やかにベッドの起き上がりや歩行の練習をしていくこと。その後、症状に応じて回復期リハビリテーション病院に転院し、訓練をしていくこと」などを、加藤はわかりやすく説明していった。家族からは「元のように歩けるようになるのか」「認知症が悪化しないだろうか」などいくつもの質問が出て、そのたびに加藤は共に考えながら、丁寧に返答していった。同院では近年、こうしたインフォームドコンセントに、より一層力を注ぐようになってきたという。その理由について、整形外科部長である犬飼規夫は次のように語る。「西尾市は全国的に見ても高齢化が急速に進んでいます。当科でも80代、90代の患者さんも珍しくありません。そこまで高齢になると、退院後の生活がご家族の一番の心配ごとになります。どうやって以前の生活を取り戻していくか、どの治療法を選ぶのが最適か、じっくり話し合うよう心がけています」と説明する。

加藤の説明に安心した家族の承諾を得て、数日後、人工骨頭置換術が行われた。執刀医は加藤、その傍らに犬飼をはじめとしたベテラン医師がつき、若手医師の内藤健太も補佐役として参加。複数の医師がチェックの目を光らせる、安心・安全のチーム体制だ。加藤は坐骨神経などに触れないよう慎重にメスを動かし、骨頭を取り出し、金属製の人工骨頭を固定していく。手術は1時間余りで、無事に終了した。「整形外科は現在医師6名体制で、ベテランと若手がバランス良く配属されています。手術のパフォーマンスも一層向上していると思います」と加藤は自信をにじませる。

整形外科の治療だけでなく
全身状態を管理していく。

人工骨頭置換術に参加した若手の内藤は現在、入職3年目。2年間の初期臨床研修を経て、整形外科に進むことを決意した。今は専攻医(専門医をめざして研修プログラムを実践中の医師)として、日々研鑽を積んでいる。「整形外科は、歩けなかった人が手術で歩けるようになるなど、治療の成果をダイナミックに感じられるところに魅力を感じました。3年目で主治医を任されるようになり、責任の重さを実感しています」と内藤。主治医の責任とは何かと尋ねると、「全身を診るところ」という答えが返ってきた。「ご高齢の患者さんが多いので、手術がうまくいっても、入院中に筋力が落ちたり、食事がとれなくなったり、慢性疾患や認知症が悪化することもあります。そういう全身の状態に目配りしながら、早期退院をめざしていく難しさがあります」と内藤は語る。そのために内藤が頼りにしているのは、上級医はもちろん、周囲のスタッフたちだという。「看護師やリハビリテーションスタッフ、医療ソーシャルワーカーなど、それぞれに専門知識を持つプロに頼る場面がとても多いです」。

その言葉を裏づけるように、「当科にとって、多職種との協力体制は非常に大切です」と語るのは、整形外科を率いる犬飼である。「今や、ひと昔前と違い、医師の技量だけで整形外科の治療を完遂することはできません。どうすれば、患者さんが普段の日常生活に帰っていけるのか、経済的な面も含めて総合的にサポートしていくことが、私たち市民病院の役割になってきたことを痛感しています」。整形外科では毎週1回、さまざまな職種が病棟に集まり、カンファレンスを行い、患者について情報共有している。「これからも生活との距離が近い市民病院の整形外科として、患者さん一人ひとりにきめ細かく寄り添っていこうと思います」。犬飼は高齢化の進む地域を見据え、決意を語った。

  • 西尾市民病院の整形外科では、月に一度、患者の生活を支える診療所の先生方を招き、ミーティングを開催。医師同士が顔を合わせ、紹介された患者の治療経過について報告したり、難しい症例や新しい治療法などについて情報交換している。
  • 市民病院と診療所の医師が顔の見える関係を築くことにより、入院治療と在宅療養を一本の線で繋ぎ、継続した医療を提供。市民が高齢になっても安心して暮らしていけるよう支えている。

コロナ禍であっても
早期の手術が必要。

  • コロナ禍で、人工関節などの予定手術を延期している人が多いという。ただ、必要な手術を先延ばしにすればするほど、痛みから体を動かさなくなり、結果として要介護になるリスクは高まる。
  • 西尾市民病院では徹底した院内感染予防策に取り組み、患者の受け入れに努めている。生活の質を維持するために欠かせない手術であれば、主治医とこまめに連絡を取り、早期の治療計画を立てていくことが望ましいだろう。

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