LINKED plus シアワセをつなぐ仕事
西尾市民病院
認定看護師による看護専門外来を開設し、
療養生活の不安や悩みに応える。
この日、がん化学療法看護認定看護師の高須由江は、涙ぐむ患者の話に耳を傾けていた。「がんが進行してしまい、主治医の先生の提案で、抗がん剤の種類を変えることになりました。新しい薬は副作用が強く、それだけでも不安なのですが、効果があるかどうか、続けてみないとわからないという話です。私はこれからどうしたらいいのでしょうか」。そう語る患者を、高須は優しく励ましながら、新しい抗がん剤の特徴や有効性についてわかりやすく説明し、副作用を和らげるための日常生活の工夫を提案した。また、主治医に連絡し、治療の疑問について、次回の受診日に改めて説明するよう話を繋いだ。不安な気持ちを吐き出した患者は、幾分すっきりした表情を見せ、病院を後にしていった。
これは、西尾市民病院の看護専門外来の一コマ。同院では、平成25年5月、認定看護師による看護専門外来をスタート。今では、先に紹介した〈がん療養相談〉のほか、〈摂食・嚥下相談〉〈認知症相談〉〈呼吸器相談〉の各外来を開設し、さまざまな患者と家族の相談に応えている。そもそも看護専門外来を開設したのはどのような経緯からだろうか。
「もともと他院に看護専門外来があることは知っていて、いつか私たちも、と思っていました。そのうち当院でも、いろいろな看護分野の認定看護師が育成されてきたので、看護部が中心となり、看護専門外来を立ち上げることになりました」と高須。そして、それは自身が待ち望んでいた展開でもあった。というのも、認定看護師の資格を取得後、病棟から外来へ異動になり、多くの通院患者が悩みを抱える現実に直面していたからだ。「以前は急性期の治療を終えた後もしばらく入院できましたが、今は早期退院して家で治療を続けるのが基本です。自宅で療養する場合、在宅酸素や褥瘡(床ずれ)の管理など専門的なケアに戸惑ったり、家庭の事情で療養生活に困難を抱える方も多くいらっしゃいます。一日も早く看護専門外来を立ち上げ、困っている方々の力になりたいと考えていました」(高須)。
西尾市民病院の看護専門外来は原則予約制で、相談時間は一人30分程度。〈がん療養、摂食・嚥下、認知症、呼吸器〉に関する各相談は無料で行われている。このように患者に負担のかからないサービスでありながら、活動内容はまだ広く知られていない。「なかには専門の看護領域以外の相談を持ち込む方もおられます。もちろんできる限り力になりますが、看護専門外来の趣旨があまり知られていないことを残念に思います」と、高須は打ち明ける。さらに看護専門外来は、診療報酬の請求が認められる部分が限定的なため、院内で存在感を発揮しきれていない部分もある。
但し、西尾市には一人暮らしの高齢者や老老介護の家庭も多く、きちんと相談に応える窓口が必要であることは間違いない。「在宅療養中はずっと安定しているわけではなく、必ずどこかで病状が変わり、治療や看護に迷うときがあります。そんなとき、ちょっとした悩みや心の引っかかりを気軽に話せる場所にしたい」と高須は強調する。
さらに看護専門外来は、退院支援においても大きな力になることが期待されている。同院の患者支援室では、退院に向けて困難を抱えた患者にアプローチし、スムーズな退院を支援している。そうした患者が退院後、看護専門外来を上手に活用することで、安心して生活できるようになれば、これほど心強いことはないだろう。
超高齢社会がますます進展していくこれから、病院に求められるのは何も最先端の医療の質だけでない。いかに患者の生活をサポートできるかというケアの質が重要なポイントとなる。「在宅療養で困ったことがあれば、私たち認定看護師の専門的な知識と技術がお役に立てると思います。私たちが窓口となり、適切な医療や介護サービスに繋げていけるような、頼りになる看護専門外来へ成長していきたいですね」と高須。攻めの姿勢で、患者支援を進化させていこうとしている。
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