LINKED plus シアワセをつなぐ仕事
西尾市民病院
看護師の働き方や教育改革を進め、
より質の高い看護を実践していく。
西尾市民病院の看護部は、看護部長1名、副看護部長2名の体制。2022年、副看護部長の一人に就任したのが高須由江である。高須は新卒で同院に就職。循環器内科、外科など一般病棟をひと通り経験した後、2009年、がん化学療法看護認定看護師の資格を取得。外来治療センターの看護師長として、がん化学療法を受ける患者を支えてきた。そこから突然、副看護部長へと抜擢され、最初は引き受けるべきかどうか大いに迷ったという。
「今でも患者さんのそばでずっと支えたいという思いを強くもっています。ですから、現場の第一線を離れて管理職になることに抵抗感がありましたね」と振り返る。そんな高須の気持ちを動かしたのは、後輩たちの存在だった。そして現看護部長である小川の「そろそろ順番だよ。管理室で一緒に働きましょう」という言葉に後押しされた。
「今まで、看護部の指導や指示を受けながら、守られた環境のなかで自由に働かせてもらった。今度は後輩たちが生き生きと楽しく働けるようにサポートする役割を自分が担当しなくてはいけないのだろうと思いました」(高須)。
こうして悩んだ末に、副看護部長に就任してから2年足らず。高須は、慣れない病棟の管理業務を一つひとつ覚えて実践するかたわら、教育委員会のリーダーにも就任し、いよいよ看護師教育に力を入れようと考えている。
「当院では新人教育は充実していますが、中堅クラスの教育は自己申告制で研修に参加するスタイルで、なかなか学ぶ機会を得られない人もいます。この教育体制を改革し、キャリアを積むごとに必要なことをしっかり学べる体制を作っていきたいですね」と意欲を燃やす。看護師の学びのポイントの一つとして、高須は〈看護に対するニーズの変化〉を挙げる。
「昔の医療は治すことが目的でしたが、高齢患者さんが増えるにつれ、治し支える医療が重要になり、より退院後の生活を見据えた看護が問われるようになってきました。そうした看護の変化について、私も含めて学びを深め、より質の高い看護の提供に繋げていきたいと考えています」。
高須が看護師教育に目を向けるのは、看護師をめぐる厳しい状況があるからだ。実はここ数年、多くの病院で新卒の看護師の離職が相次いでいる。その背景には、コロナ禍で十分な看護実習を受けられないまま入職し、現実の厳しさに心折れてしまうという事情があるという。離職するのは、新人だけでない。大きな業務負担、不規則な勤務形態、女性が働く上で直面する妊娠・出産などのライフイベントなどから、キャリアを積んだ後に辞めていく人も多い。その一方で、社会の高齢化により在宅療養する人が増えており、看護師の需要は今後さらに増加することが予測されている。
このように看護師不足が続くなかで、高須は看護部長をはじめとした管理職全員で力を合わせて、看護師の教育改革、さらに働き方改革も進め、看護師みんなが生き生きと輝ける環境づくりをめざしている。
「たとえば、いったん高度急性期病院を辞めた人に、〈ここならもう一度働ける〉〈やりたい看護を諦めなくていいんだ〉と思ってもらえるような看護部を作りたいと考えています。もともと当院は、個々の事情に配慮した柔軟な勤務シフトを用意するなど、働きやすさに力を入れています。その良さを活かしつつ、さらに足りないところを補強して復職に興味のある人にアプローチしたいですね」と、構想を語る。では、同院の看護のアピールポイントは何だろうか。
「当院は急性期医療を提供しつつ、在宅療養までカバーしていこうとしています。そのため、救命や治療を優先する高度急性期病院とは違い、より患者さん一人ひとりに寄り添う看護を実践できます。逆の言い方をすれば、患者さんとじっくり向き合ってケアしたい方にとって、非常にやりがいがあるのではないでしょうか。そんな志を持つ仲間と一緒に、これからの看護部、そして西尾市民病院を作っていきたいと思います」。高須は力強い口調でそう締めくくった。
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