---院長に就任されて数カ月ですが、院長職を引き受けられた当初の率直な思いをお聞かせいただけますか。
田中 最初は自分が果たして院長という重責を果たせるか、不安でした。しかし、当院は絶対にこの地域に必要不可欠な存在ですし、維持していかなくてはなりません。やるとなれば全力で邁進するしかない。そう覚悟を決めてお引き受けしました。
---この地域に必要な病院として、どんな役割が求められているとお考えですか。
田中 第一に、救急を含めた急性期医療だと考えています。同じ医療圏に三次救急に対応する高度急性期病院が二つありますが、そちらにすべてを任せることはできません。また、南海トラフ地震も予測される中、災害拠点病院としての責務を果たすためにも、西尾地区の二次救急としてしっかり対応し、市民の皆さんの命を守ることが当院の重要な使命です。そして、いざという時に緊急対応するには、普段から診療科全般にわたり質の高い診療を提供する体制を構築しておかないといけません。診療の質という点では、この4月から常勤医不在だった泌尿器科に2名の医師を迎えることができ、低侵襲のロボット支援手術の運用に向けて準備を進めているところです。今後も必要に応じて、こうした先進的な医療を積極的に導入していく計画です。
---そのほかに、どんな役割を担っていくお考えですか。
田中 急性期を脱した後の生活期まで包括的に患者さんを支えていくことも当院の重要な役割だと考えています。そのため、患者さんのスムーズな退院を支援する〈地域包括ケア病棟〉を二病棟運営しています。ここでは在宅療養中の急変やご家族の介護負担を軽減するためのレスパイト入院にも対応し、療養中の方々を支えています。また、2024年度から訪問看護ステーションを開設し、退院後の療養生活の支援に力を入れています。こうした機能を今後さらに充実させ、市民の皆さんが病気になっても安心して暮らしていける地域医療体制をつくっていきたいと考えています。
---その一方で、病院を取り巻く環境はますます厳しさを増していますね。
田中 診療報酬の改定や人件費の増加など、当院のような地方の病院はより厳しい環境に晒されています。しかし、院長を引き受けたからには、決して逃げ腰にならず現状と向き合い、打開策を模索していきます。特に深刻な医師不足については、以前から大学医局などに医師派遣をお願いしているほか、近隣の高度急性期病院にも援助をお願いしています。たとえば緊急手術の多い脳神経外科では、高度急性期病院から医師を派遣していただき、救急にしっかり対応しています。こうした連携をもっと強化していきたいです。また、当院は臨床研修病院として研修医の育成に携わっていますが、今後さらに若手医師の獲得にも尽力していく方針です。
---設備の拡充についてはいかがですか。
田中 当院は移転新築から35年が経っています。病院の建物の寿命は約50年といわれますから、あと15年で建て替え時期を迎えます。その建て替えに備え、新病院の構想を固めていこうと考えています。まずは当院のあるべき姿を定め、病床数や診療体制、必要な医療機能を具体的に検討していく計画です。
---最後に、職員や市民の皆さんにメッセージをお願いします。
田中 当院の良さは、ほど良い規模で風通しのいいところにあります。その良さを生かして職種を超えた協力体制をさらに強化し、よいチームワークを発揮していきたいと思います。また、2024年度はコロナ禍で中止していた「病院フェスタ」を開催し、予想以上の好評をいただきました。今後もこうしたイベントを通じて市民の皆さんとのコミュニケーションを育てていきたいです。日常の診療でも接遇や対応の質を高め、親しまれ、信頼される病院づくりに注力してまいります。
COLUMN
BACK STAGE