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LINKED plus 病院を知ろう

地域で消化器がん医療を
完結させるために。

岡崎市民病院

総合的な医療を提供する病院とがん専門病院の
特色が一つになって、新しい地域医療の扉を開く。

内視鏡を用いた
消化器がん治療を強化。

平成31年4月、岡崎市に愛知県がんセンター愛知病院(以下、愛知病院)が経営移管された。愛知病院はがん医療を専門とするがん診療連携拠点病院。そして、岡崎市民病院は、三次救急を担い総合的な医療を提供する地域の中核病院。両者の専門性の高い医療機能を集約させることにより、消化器がんに対する医療全般を切れ目なく、継続的に提供する体制を整えたのだ。

移管から1年余り、岡崎市民病院の内視鏡センター(消化器内科)を訪ねた。内視鏡センターは救命救急センターに隣接し、緊急の内視鏡検査・治療を行うほか、消化器がんに対する高度で低侵襲(傷が小さく、痛みが少ない)の治療を行っている。「この1年を振り返ると、より一層内視鏡センターの能力を発揮できるようになったと思います」。そう語るのは、移管に伴い、愛知病院から赴任した、消化器内科統括部長の藤田孝義である。その言葉を裏づけるように、以前に比べ、内視鏡を用いた消化器がんの検査・治療件数は増加している。「私たちが力を入れているのは、早期消化器がんの内視鏡診断と治療です。早期に発見できれば、ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)により、確実に治すことができます。また、膵臓がんに対する内視鏡診断のほか、特殊なところでは、小腸カプセル内視鏡やダブルバルーン小腸内視鏡を用いた、小腸疾患の検査・治療も行っています。また、肝臓がんに対する超音波検査と局所治療を、積極的に行っています。」(藤田)。

さらに、同院では進行がんに対する緩和目的の内視鏡治療にも力を注いでいる。それが、ステント(網状金属の管)治療だ。がんが進行し、胃や大腸が閉塞すると、食事が取れなくなるだけでなく、激しい嘔吐などを引き起こす。そうした痛みや苦しみを和らげるために、同院は内視鏡を用いて閉塞部位にステントを留置する治療を実施している。「愛知病院では、こうした緩和治療にもコツコツ取り組んできました。当院でもその実績を活かし、がんと闘う患者さんに、高度な低侵襲治療からQOL(生活の質)を高める治療まで、一貫して提供していきたいと考えています」と、藤田は意欲を語る。

早期発見から低侵襲治療、
フォローまでを切れ目なく。

従前の消化器内科の高度医療に愛知病院の医療機能を集約させ、さらにパワーアップした消化器内科。しかし、すべてが順風満帆というわけではない。実は医師不足に悩んでいるという。「理想のチーム医療を行うために、もう少し専門医がほしい。そこで、大学医局に医師の赴任を働きかけるとともに、若手医師の育成に力を入れています。また、若手医師に選んでもらえるように、働き方改革を通して、医師が効率よく仕事できる環境づくりを進めています」(藤田)。さらに同科では、内視鏡検査に対する患者アンケート調査を行うなど、患者の満足度を高めるための取り組みにも着手した。「サービスの改善により患者さんの評価が上がれば、医師やスタッフのモチベーションも上がり、やりがいも増します。患者さんもスタッフもみんなが満足できる、そんな職場にしていきたいと思います」と藤田は話す。

こうした院内改革に加え、藤田が何よりも力を入れようとしているのは地域の医療連携ネットワークだ。

「愛知病院の移管により、命を救う治療から緩和治療までを継続して提供する体制が整いました。あと、もう一つ強化したいのは、がんを早期発見する機能で、それは診療所の先生方にお願いする部分です。診療所が病気を見つけ、当院が高度な低侵襲治療を提供し、その後は両者が協力してフォローしていく。そんな一連の流れを、より良い形へ発展させていきたいですね」(藤田)。実は同院は以前から、愛知病院、医師会との三者合同で、「岡崎消化器病症例検討会」という勉強会を年に3回、開催してきた。現在はコロナ禍で中断しているが、こうした機会を通じ、医師同士の情報共有をより緊密にしていきたい考えだ。「地域の医師会や診療所との連携を深め、治療から在宅療養まで継続した医療体制を構築していきます」。藤田は力強い口調でそう語った。

  • どこの病院でも、がん診療は多職種によるチーム医療で行われる。だが、藤田はさらに一歩進んで、「かかりつけ医を含めたチーム医療こそ、がん診療の鉄則」だという。診療所が早期検査と診断を担当し、病院が最先端の治療を行う。その後のフォローは両者が協力して行うチーム医療だ。
  • 同院は、病診連携をより深く広く展開することにより、病院と地域が一つのチームになって、地域のがん患者を支えていこうとしている。

医療圏の医療機能と
患者支援機能を繋ぐ、
消化器がん治療の拠点へ。

  • 岡崎市民病院は西三河南部東医療圏で唯一の、がん診療を含めた高度急性期医療を担い総合的な医療を提供する病院である。その存在意義は愛知県がんセンター愛知病院の移管によってより明確になったといえるだろう。
  • 消化器内科は、地域の医師会や診療所と協力し、早期発見から終末期に至る消化器がん診療を医療圏内で完結させる役割を担っていこうとしている。すべての消化器がんの患者を支える拠点としての、さらなる発展に期待したい。

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