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LINKED plus 病院を知ろう

救急医療体制は
新たなステージへ。

岡崎市民病院

地域の救急病院と役割分担・連携し、
24時間365日市民の命を守り続ける。

救急科のトップ同士が
顔の見える連携を育む。

「昨日、治療をお願いした心臓病の救急患者さんですが、その後、容体はどうですか」。ある日、岡崎市民病院の救急科統括部長・小林洋介のもとに、そんな問い合わせの電話が入った。電話の主は、藤田医科大学岡崎医療センター・救急診療科の医師である。この患者は同センターに一旦、救急搬送されたものの、心臓血管外科手術が必要と判断され、岡崎市民病院へ。そこで直ちに緊急手術が行われ、現在は集中治療センターで術後の管理を続けている。小林はその経緯を電話で丁寧に伝え、適切な判断が患者の救命に繋がったことを確認し合った。両院では、こうした救急科のトップ同士の情報共有が積極的に行われているという。「市内に岡崎医療センターができて、消防署の方も交えて一緒に救急の勉強会を開いてきました。とくに責任者同士、直接、電話でやりとりできる関係は非常に安心ですし、ありがたいと感じています」と小林は話す。

藤田医科大学岡崎医療センターが開院されたのは、令和2年4月。それを機に、西三河南部東医療圏(岡崎市・幸田町)の救急医療体制は、一気に強化された。岡崎医療センターは二次救急医療機関(※)として入院治療の必要な中等症・重症の患者を担当。それにより、岡崎市民病院は本来の役割である三次救急医療機関(※)の機能を発揮しやすくなり、心肺停止や多発外傷などの重篤な患者から中等症の患者まで余裕を持って診ることができるようになった。「これまで私たちのキャパシティを超え、市外へ救急搬送されていたようなケースも、地域で対応できるようになり、市民の皆さんにはより安心していただけるようになったと思います」と小林は説明する。さらに今後、愛知医科大学メディカルセンターも、救急医療を拡充する計画を持つ。「そうなれば、救急患者さんの受け入れ体制は一層盤石なものになると思います」と小林は期待を寄せる。

※救急医療体制は、重症度に応じて3段階に分けられる。軽症患者は一次救急医療機関(休日・夜間診療所など)、中等症・重症患者は二次救急医療機関、命の危機にある重篤な患者は三次救急医療機関が対応する。

〈迅速・適切・高度〉を
モットーにさらなる進化を。

西三河南部東医療圏では、二次救急を担う病院が輪番制で24時間の救急医療に対応。医師不足によりその機能を充分に発揮できない状況が続いてきた。そのため、本来、三次救急医療機関である岡崎市民病院に一次から三次までの救急患者が集中。それでも同院は、「24時間365日、受け入れ要請を断らない」ことを目標に掲げ、年間1万台前後の救急車を受け入れてきたのである。

「次から次へと救急搬送が続いても断らずに頑張ってきたというのは、私たちが誇りにするところです。でもその分、ER(救急外来)の最前線のスタッフに大きな負担がかかり、さまざまな課題を抱えていたことも事実」と小林は打ち明ける。同院でERのファーストタッチを中心に担うのは研修医だ。圧倒的な臨床経験を積める利点はあるが、激務だったことも否めない。

「余裕ができた分、上級医や指導医のフォローをもっと手厚くして、研修医教育を充実させ、当院の救急診療の質をワンランク上に引き上げていきたいと考えています」と小林は抱負を語る。また、時代変化への対応も大きな課題だという。「高齢の救急患者さんが急速に増え、ACP(コラム参照)について考えさせられる場面によく直面するようになりました。高齢化社会に対応していくため、私たち救急科の医師はこれまで以上に本人・家族の意向を尊重した医療を実現できるような体制づくりに貢献したり、ジェネラリスト(総合診療医)として全人的な医療を提供できるように努力し、時代にふさわしい新たな救急医療体制へ進化させていく必要があると考えています」。

最後に、今後の救急科の目標を聞いた。「端的に表すと、〈迅速・適切・高度〉の3つです。より迅速に患者さんを診察し、適切な検査・診断に繋げ、高度な治療を実践する。この3つを常に心がけ、地域の最後の砦としての役割をしっかり全うしていく決意です」。小林はそう言って明るく笑った。

  • 近年、医療で課題の一つとなっているのが、ACP(人生会議:アドバンス・ケア・プランニング)である。ACPとは、もしものときのために、自分が望む医療やケアについて、前もって考え、繰り返し話し合い、共有する取り組みのことである。
  • 高齢化に伴い、救急の現場でもACPを示すケースが増えている。そのとき、救急隊や医師はどのように対応すべきか、地域全体での新たな体制づくりが求められている。

医療機関の機能分化と
連携の重要性。

  • 救急医療を担う医療機関は、一次、二次、三次の役割分担が定められているが、西三河南部東医療圏では長年にわたり、その体制が充分に確立されてこなかった。それがようやく藤田医科大学岡崎医療センターの開院により、地域完結型の救急医療体制が確立されつつある。
  • 医療機関の高度な機能分化と連携のもと、岡崎市民病院は地域医療の守護神である病院としての機能を果敢に追求していこうとしている。今後の活躍に注目していきたい。

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