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2040年に向けて
我々の歩む道は...。

岡崎市民病院

岡崎市民病院の新院長が描く
これからの病院と地域医療とは?

すべての領域をカバーする
オールラウンドの病院として。

令和4年4月、岡崎市民病院の院長に就任した小林 靖医師に、これからの病院運営について話を聞いた。

---地域における岡崎市民病院の役割について、どのようにお考えですか。
小林 当院の役割は、大きく分けて二つあります。一つは、伝統として培ってきた救急医療です。以前は救急搬送が当院に一極集中し、多くの課題を抱えていました。でも、市内に藤田医科大学岡崎医療センターが新設され、互いに連携するようになり、本来の三次救急医療機関としての責務を果たせるようになりました。二つ目は、あらゆる領域の急性期疾患へのオールラウンドな対応です。どんな病気やケガでもきちんと診てほしい、という市民の期待に応えることが市民病院の大前提であり、これからも変わらない使命だと考えています。

---今後、とくに伸ばしていきたい疾患領域はありますか。
小林 すべての疾患領域に対応できる医療体制をしっかり整備しつつ、当院の得意分野である心・血管疾患(全身に血液を循環させる心臓や血管などが正常に働かなくなる疾患)の治療に力を入れていきたいと考えています。たとえば、経カテーテル的大動脈弁留置術(TAVI)をはじめとした高度急性期医療の機能をさらに充実させ、地域の患者さんにより質の高い医療を届けていくことを目指します。また、今後、スタッフの適正配置についても検討し、一ベッドあたりのスタッフ数を手厚くすることで、医療の質をさらに高めていきたいと構想しています。

---心・血管系疾患の治療では、再発予防を含めた退院後のサポートも重要になりますね。
小林 その通りです。退院した患者さんに安心して療養していただく体制づくりにも力を入れていく考えです。そのために重要なのは地域連携です。回復期の医療を担う病院や在宅医療・介護を担う事業所とさらに緊密に連携し、退院後の生活を支えていきたいですね。「心不全パンデミック」といって、高齢者の増加に伴い、心不全患者さんが大幅に増加することも予測されています。そうした将来も視野に入れて、しっかり取り組んでいきます。

2040年問題に
対応できる地域へ。

---地域医療において、問題意識として感じていることはありますか?
小林 最大の関心事は、高齢者数がピークを迎える2040年問題(詳しくはコラム参照)です。それまでに、新しい地域医療体制を構築しなくてはならないと考えています。

---具体的には?
小林 今後さらに増えていく在宅療養に、市民病院がもっと関わっていくべきだと思います。たとえば、訪問診療、訪問看護の展開。地域の在宅医療チームと役割分担し、重症度の高い患者さんを私たちが担当するなど、さまざまな形でサポートしていきたいですね。

---退院支援にも力を入れる方針ですか。
小林 すでに、看護師が地域に出ていって、退院した患者さんがスムーズに生活できるよう引き継ぐような活動をしていますが、そうしたことも拡充したいですね。また医師も、退院したら終わりではなく、その後の診療に積極的に関わり、患者さんが当院とかかりつけ医を循環して受診するような〈循環型の地域医療連携〉を進めたいと思っています。

---そのための何か計画はありますか。
小林 地域医療連携室を再編し、患者さんのサポートを専門に担う組織を新しくつくる計画です。退院支援も含め、より患者さん一人ひとりをきめ細かく支援していきます。

---最後に院長としての意気込みについてお願いします。
小林 職員によく言うのは「早く行くには一人で行った方がいい、遠くに行くにはみんなで行くといい」ということです。私たちがめざすのはもちろん、遠くに行くこと。そのためには、みんなの協力が必要です。院内の職員はもちろん、地域の皆さんとも手を携えて、みんなが同じ目標に向かって努力し、この岡崎に必要な地域医療体制をつくっていきたいと思います。

  • 日本の高齢者は2025年まで急増し、2040年頃にピークを迎える。その一方で、医療・介護の担い手は急減し、医療・介護は深刻な事態に陥ると危惧されている。
  • 今より少ない人員で、医療・介護サービスを提供するには、医療機関の役割分担の見直しや、安心して在宅療養を続けるための地域の体制づくりなどが必要である。岡崎市民病院は今から、2040年問題を見据えて、地域医療の新たな仕組みづくりをめざしている。

超高齢化社会における
市民病院の役割。

  • 地域の中核を担う病院には、幅広い急性期疾患にオールマイティに応える総合力が要求される。しかし、単にそれを実践するだけでは、地域の人々の安心の生活を支えることはできない。
  • 高齢になっても病気になっても、何の不安もなく暮らしていける地域づくり。そんな理想の地域のあり方を常に念頭におき、自分たちが何をすべきかを考え、実践することこそ、これからの市民病院に求められる使命ではないだろうか。

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