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岡崎市民病院
循環器内科と心臓血管外科が緊密に連携し、
患者さんにとって最適な治療法を提案する。
心筋梗塞、狭心症、不整脈、心臓弁膜症など、多岐にわたる心臓病の治療法について、岡崎市民病院では循環器内科と心臓血管外科の合同カンファレンスを開き、幅広い角度から検討している。
ある日の合同カンファレンスをのぞいてみた。検討されていたのは、狭心症の患者、70歳代。狭心症は心臓を取り巻く冠動脈が狭くなり血流が不足する病気である。「狭窄の場所が複数ありますね。経皮的冠動脈インターベンション(カテーテルを血管に挿入し、狭窄した部位を広げる治療)は難しいかもしれません」「そうなれば、冠動脈バイパス術(詰まった冠動脈の先に迂回路を作る手術)になりますが、体力的に手術に耐えられるかどうか」「持病としては、糖尿病がありますね」「ご本人やご家族の希望はどうでしょうか」。医師たちは画像データやカルテ情報を見ながら、慎重に議論を重ね、最終的に冠動脈バイパス手術を提案することで合意した。
この議論を振り返り、副院長の田中寿和医師(循環器内科)は次のように説明する。「狭心症の主な治療法には、冠動脈インターベンションと冠動脈バイパス手術があります。冠動脈インターベンションは体への負担は少ないですが、再狭窄のリスクが残る。一方、バイパス手術は完全に血行再建できますが、体への負担が大きい。それぞれの特徴と、患者さんの年齢や症状、全身の病気を見極めながら、みんなで活発な意見交換を行っています」。
多職種による合同カンファレンスが同院で開かれるようになったのは、2017年から。循環器センターを開設し、多職種によるチーム医療を実践してきた。「以前は内科と外科がある程度、線引きをして治療していましたが、今は両者が得意な分野に積極的に関わり、難しいところは相互に助け合うハイブリッドな形になりました。これによって、治療の安全性と同時に、ベストな治療法を総合的に提案できるようになったと思います。私たちが大切にしていることは、患者さんの将来への視点です。患者さんが退院後もずっと元気に過ごすために何を選択すべきかをいつも第一に考えています」と田中は話す。
合同カンファレンスが求められる背景には、治療の選択肢の広がりがある。「たとえば大動脈弁狭窄症に対しては、TAVI(経カテーテル大動脈弁置換術)という新しい治療法があり、当院でも積極的に行っています。これによって、今まで手術をあきらめていた高齢の方にも大動脈弁膜症を根本的に治す選択肢が生まれました。また、重症心不全などの患者さんに対しては、インペラ(左心室内に留置し、循環を補助する超小型ポンプを内蔵したカテーテル装置)を用いることで、以前より安全に治療できるようになりました。新しい治療法や新しい医療機器の登場により、高齢の方でも安全に手術して、以前と変わらない生活を送っていただくことができるようになったと思います」と、田中は説明する。
しかし、こうした高度な治療の前に重要なのは、心臓病をいかに早く発見し、悪化を防ぐかにある。患者の多くは、ある日突然心臓が悪くなるわけではない。もともと糖尿病、高血圧症、脂質異常症などの生活習慣病を持っていて、それを十分にコントロールできなかったために動脈硬化を発症し、心臓に負担がかかり、冠動脈が詰まったり、破れたりしてしまう。「基本的に心臓病は生活習慣病がベースになっているので、いかに生活習慣病を管理していくかということが大切です。市民の皆さんには健診や人間ドックを定期的に受けて、健康管理を心がけてほしいですね」と田中。聴診や心電図、胸部レントゲンで異常が見つかれば、そこを手がかりに心臓病のリスクを早期発見できることも多い。何か異常があれば、かかりつけ医を受診し、より精密な検査が必要であれば、同院で超音波検査や冠動脈CT検査を受けることができる。「これからも地域の先生方と緊密な病診連携を図りながら、生活習慣病の改善と心臓病の予防に力を注いでいきたいと思います」と、田中はしめくくった。
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