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LINKED plus 病院を知ろう

患者さんに後悔させない、
そのための新たな挑戦。

岡崎市民病院

検診・健診の要精査対象者を
早期発見・治療に繋げる。

病気を早期診断する
ための新しい外来。

令和4年8月、岡崎市民病院に検診・健診後の精密検査をおこなう外来枠が新設された。この外来は、健康診断や人間ドック、がん検診などで〈要精査・要医療〉となった人を対象にする、外来である。ここでは、医局長の朝田啓明を筆頭に、経験豊富な内科医が交代で診察にあたり、必要な精密検査の指示やスクリーニング検査(疾患のある人を発見することを目的に行う検査)などを行い、その結果に応じて各診療科へ紹介する機能を果たしている。

そもそもどのような目的でこの外来は開設されたのだろうか。朝田は次のように説明する。 「岡崎市には健康診断や人間ドックを受ける人はたくさんいらっしゃるのですが、検査の結果、最も重症な要精密検査や要医療(早急に専門科医師の精密検査が必要)になった人の受診率が他の地域に比べてかなり低いんですね。そうした人々を何とか精密検査に繋げたい。そのために、私たち市民病院にできることはないだろうかと考えたのが始まりでした」。また、この着想の背景には、これまで腎臓内科を専門に歩んできた朝田ならではの経験もある。

「腎臓は本当にナイーブな臓器で、全く症状がなかったのに症状が進んでいて、ある日突然、〈人工透析が必要〉と診断されることがたびたびあります。人工透析になると治療に時間を取られますし、生活の制約も増え、それまでの人生がガラッと変わってしまいます。そうなってから、〈何であのときに病院へ行かなかったのだろう〉と悔やまれる患者さんの声を何度も聞いてきました。そんな後悔を一つでも減らすように、検診・健診で引っかかった人を逃すことなく、次の医療へしっかり誘導する仕組みが必要だと考えていました」(朝田)。

朝田の長年の思いの詰まった〈検診・健診後の精査枠〉。開設以来、少しずつ患者も増え、朝田の思惑通り、尿検査や血液検査で腎機能の低下を指摘された人や糖尿病の疑いのある人、便潜血反応の陽性で大腸がんの疑いのある人などが病院を訪れている。それぞれに必要な精密検査をすることで、病気を早期診断し、その後の健康リスクを取り除くことに繋げている。

紹介状を持たずに
受診できる仕組みづくり。

順調に動き出したこの取り組みだが、開設までの道のりは決して平坦ではなかった。最も大きなハードルは〈非紹介患者初診加算料:7,700円(消費税込み)〉である。

これは、他の病院や診療所からの紹介状を持たずに同院を受診する場合等に発生するもので、その部分について地域住民の健康増進などの観点を含め院内幹部と協議。市の幹部の了承を得て、健康診断の結果を〈検診・健診後6カ月以内は紹介状〉とみなすことで、精密検査の必要な人が誰でも受診しやすい体制を整えた。また、同時に、院内の協力体制づくりも重要な課題だった。

「たとえば、肺がんの病気の疑いがある人の場合、呼吸器内科の先生に相談し、どんなふうにCTで撮影するか慎重に検討する必要があります。そうした協力がいつでも得られるように、各診療科の先生方にお願いして回りました」と朝田は振り返る。こうした準備を経て、新しい外来枠をスタートさせることができたのである。

今後の目標は、市民への周知活動に力を注ぐこと。「まだまだこの外来枠の存在を知らない方も多いので、紹介状がなくても市民病院で精密検査が受けられることをもっと伝えていきたいですね。また、検診・健診で要精密検査が出ると、何か重い病気なのではと思い、目を背けてしまう方もいらっしゃいます。でも、精密検査はそれほど恐れるものではありません。実際に当外来枠でも、進行した病気が見つかるよりも、早期の段階で見つかるケースが圧倒的に多く見られます。ですから、怖がらずにぜひ受診してほしいですね」と、朝田は話す。貴重な検診・健診の機会を有効に活かすことで、同院はこれからも一人でも多くの市民が重篤な病気にならないように力を注いでいく方針である。

  • 検診・健診後の精査が必要な方の外来枠の対象となる領域は、造血器・循環器・呼吸器・内分泌代謝糖尿病・消化器、がん検診後要精査の胃・大腸・肺・前立腺。病気が進行しないと症状が出にくい糖尿病や腎臓病、胃・大腸がん、肺がん、前立腺がんの早期発見に有効な検査と診断を行っている。
  • 診察は、火・水・木曜日の午後1時から午後3時まで。なお、眼科・耳鼻咽喉科・産婦人科・乳腺外科の領域は、各診療科での受診となる。

検診・健診を正しく活かすための、
市民病院の新たな取り組み。

  • 健康診断などで要精密検査や要医療であっても、検査を受けない人が少なくない。これは非常にもったいないことではないだろうか。検査は、症状がないうちに異常を見つける絶好の機会。「たいしたことない」と思わずに次へ進むことが、その後の健康寿命を大きく左右する。
  • 岡崎市民病院はその重要性に着目し、社会貢献の一環として新しい試みにチャレンジしている。今後、市民への周知が進み、どのような成果が生まれるのか注目していきたい。

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