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医療の高度化を進め、
より安全・低侵襲の手術へ。

岡崎市民病院

整形外科と脳神経外科に、
新しい手術支援システムを導入。

外視鏡システムと、
手術支援ロボットの活用。

2023年10月、三河地域で初めて、岡崎市民病院の脳神経外科に外視鏡システムが導入された。これは、術野の様子を高精細な4K3D画像にして55インチの大型モニターに映し、それを見ながら手術を行うシステム。これまで顕微鏡の接眼レンズを覗いて行っていたところを、大画面で組織や血管などを正確に確認しながら、医療器具を操作できるようになった。導入から1年弱を経て、脳神経外科医師の佐藤祐介に手応えを聞いた。

「従来、顕微鏡で行っていた脳腫瘍などの手術はすべて外視鏡の手術に転換しました。脳手術の体位は仰臥位が最も安全性に優れていると思いますが、これまで病巣の位置によっては、患者さんに無理な姿勢や体位をお願いしていました。外視鏡ではカメラの位置を自由に変えられるので、仰臥位でできる手術が増え、それだけ安全性も高まります。また、大型モニターを見ながら、私たち医師は比較的らくな姿勢で手術できますし、手術室の全員が同じ視野を共有できるので、ときにディスカッションしながら安全第一で手術を進められます」と、佐藤は外視鏡のメリットを説明する。

同じように2024年、整形外科においても新たに人工関節手術支援ロボットを導入、8月から手術がスタートした。整形外科の加藤大三統括部長は「ロボットの運用にあたり、私たち医師も十分なトレーニングを積んできました。まだ日も浅いですが、着実に症例を積み重ねているところです」と話す。ロボットを用いた手術はどこが違うのだろうか。

「人工関節手術では、人工関節の位置や角度を計画通りに正確に収めることが重要な鍵を握っています。従来は、骨の軸に対して何度傾けて入れるか、私たちが手作業で設計図を描いていましたが、今はコンピュータが人工関節の入れ方を1ミリ・1度単位で正確に提案し、私たちがそれに修正を加えることで完璧な術前計画を立てることができるようになりました。手術中もロボットが計画通りに骨を削るよう補助し、手術の精度を担保できます」(加藤)。

医療の均質化と
低侵襲性を追求していく。

脳神経外科と整形外科、両科の手術の高度化の背景には、どのような狙いがあるのか。「一つは、医療の均質化です」と話すのは加藤である。「これまで医師のセンスや経験が担っていた部分をコンピュータが代行することによって、経験の浅い医師も同じ結果が得られるようになりました。少し大げさに言えば、これからは熟練した医師の技術に頼らなくても、誰でも高度で安全な手術を受けることができるわけで、市民の皆さんにとってそのメリットは非常に大きいと思います」。

もう一つのポイントとして佐藤があげるのが、低侵襲性の追求。すなわち、患者の体への負担の軽減である。「手術するときは、安全性を担保した上で、できるだけ小さな傷で最大の効果を出すことを目標にしています。その意味で、外視鏡のような高度な手術支援システムは大きな武器になります。第一に、大型モニターで小さな範囲も拡大して鮮明に観察できるので、開頭の範囲を狭く、傷を小さくすることができます。また、手術中の体位が安定するため、術後の体の痛みも軽減します。患者さんの体への負担を軽減できれば、それだけ術後の回復もスムーズになり、入院期間の短縮や早期生活復帰にも繋がると思います」。

その言葉に、加藤も同意する。「患者さんの退院後の生活を常に念頭に置くのは、私たち整形外科も同じです。ロボットを活用した人工関節手術では、術後の可動域を数字で明らかにできるので、〈これ以上動かすと骨が外れますよ〉という注意事項を正しく理学療法士や看護師に伝え、リハビリテーションに役立てることができます。そうしたメリットを最大限に活用し、患者さんが一日も早く回復して日常生活を取り戻せるように支援しています」(加藤)。

医療の進化の先に、患者さんの生活復帰をしっかり見据えながら、同院は今後も高度な医療を市民に届けていく方針である。

  • 医療の高度化は、若い医師の教育機会の創出にも繋がっている。たとえば、脳神経外科の外視鏡システムでは、手術中の映像を助手の医師と共有しながら、指導に役立てている。
  • 「顕微鏡と違って、モニターに映し出された術野をピンセットなどで示しながら、〈ここがこうなっているからこうしよう〉と実践的に指導できます。若手にとって非常にいい勉強になっていますし、医療の質の向上にも繋がると思います」と、佐藤は話す。

合併症を抱えた患者さんに
高度な医療を提供する使命。

  • 地域の中核病院である岡崎市民病院には、主疾患の脳や関節の病気以外に、心臓や肺などに複数の病気を抱えた患者さんが数多く紹介されて来院する。そういう場合も、同院は決して断ることはしない。高度な手術を行うと同時に、内科系の診療科と密に連携して全身管理を行い患者さんの回復につとめている。
  • すべての患者さんに最善の治療を。その市民病院の使命を果たすために、同院はこれからも医療の高度化を進めていく。

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