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誰もが安心して産み、
育てられる地域を作る。

周産期医療(ヨナハ産婦人科小児科病院)

医療法人 尚徳会

社会的・医療的問題を持つ妊婦にアプローチし、
妊娠、出産、子育てまで途切れなく支援していく。

社会的困難を抱えた
妊産婦を救え。

妊婦のなかには、子どもを産んで育てていく上でさまざまな社会的問題を抱えている人がいる。たとえば、経済的な問題、望まない妊娠、薬物依存、夫の暴力、シングルマザー、うつ・不安障害といったメンタルヘルス(心の健康)上の問題など。そうした困難な事情は、妊産婦の自殺、産後の児童虐待にも繋がることが指摘されており、大きな社会問題になっている。その難しい課題に真正面から挑み、社会的ハイリスクを持つ妊婦に寄り添い、サポートする新たな取り組みが、ヨナハ産婦人科小児科病院で始まった。

支援の入り口は、外来受診である。通常の産科医による問診に加え、保健師が妊婦一人ひとりに面談し、悩みや不安、生活状況を聞いていく。保健師は相手の表情や話し方にも細心の注意を払い、何か社会的なリスクが潜んでいないかを探る。そうして支援が必要と判断した妊婦、あるいは特定妊婦(※)と判定される人を探し出し、月1回開催する〈周産期メンタルヘルス・子育て支援会議〉でスタッフたちが情報を共有。妊娠中はもちろん、出産、子育て期までどのようにサポートしていくかという作戦を立てる。会議に集まるのは、同院の産科医、新生児科医、保健師、看護師、助産師、医療ソーシャルワーカー、医事課スタッフと多彩な顔ぶれだ。必要に応じて外部の保健所、自治体、児童相談所と密に連絡を取り合いながら、地域の社会資源もフルに活用し、産前・産後、子育て期まで切れ目なく支えていくという。

この画期的な仕組みを立ち上げたのは、平成31年4月、同院に赴任した周産期新生児小児科部長(三重大学周産期新生児発達医学講座教授)の松田 直医師だ。「一般の産婦人科クリニックであれば、安全なお産をすることが目的ですが、私たちヨナハにはもう少し上のニーズが求められていると考えました。すなわち、ハイリスク妊娠への対応です。リスクには医療と社会の両面がありますが、社会的ハイリスクはなかなか表に現れません。そこの部分を私たちが率先してすくい上げ、支援の必要な妊産婦を支えるために、地域の医療資源・社会資源の有機的な連携を作っていこうと思います」と話す。

※児童福祉法で、支援を行うことが特に必要と認められる妊婦のこと。

新病院に移転後は、さらに
周産期医療体制を進化させる。

ヨナハ産婦人科小児科病院は、令和3年秋開院予定の病院統合・新築移転を機に、医療的ハイリスク妊娠への対応を強化する計画を持つ。「当院は桑員区域の約半数の分娩を受け持ちます。その機能を維持しつつ、新病院では可能な範囲で、医療的リスクのある妊娠・分娩にも対応していく計画です。ただ、1.5㎏以下の小さな赤ちゃんについては、新生児集中治療機能を持つ病院にお任せしますが、退院後は当院で引き受け、地域連携ネットワークを軸に、脳性まひ障害の改善や発達支援、就学支援をしていきたいと考えています。また、そうした新体制は手厚いケアとサポートを要するため、医師主導ではできません。看護師をはじめとしたメディカルスタッフが中心となり、妊娠から子育てまでを継続して支える仕組みを作りたいと思います」(松田)。

松田が子育て支援に着目する背景には、小さく生まれた赤ちゃんが育てにくいという理由がある。小さいがゆえに障害や病気を持ちやすく、父母は大きな不安や苦悩を抱えながら育てることが少なくない。そうした家族を孤立させることなく、地域の医療・保健・福祉を結び、切れ目なくサポートしていくことが重要だと松田は言う。「社会的・医療的リスクがあっても、安心して赤ちゃんを産めるような環境。そして、出産後も地域のサポートを得ながら、安心して子育てできる体制を作りたい。そこまでの大きな視野を持ち、新しい周産期医療体制を構築していくつもりです」と、新病院での展開に情熱を燃やす。

もちろん、それを実現するには、医師をはじめとしたマンパワーの獲得などさまざまな課題はある。しかし今、同院では看護師を中心に意識改革が進み、新生児看護の質の向上に取り組むなど、母子支援の新たな拠点を作ろうという機運が胎動している。この地域に、新しい周産期医療体制が生まれる日は、もうすぐだ。

  • 松田医師は胎児生理学、周産期新生児医学、乳幼児の発達支援・就学支援を専門とする医学研究者。平成6年から北海道大学病院周産母子センター、平成15年から東北大学病院総合周産期母子医療センターで臨床と研究に従事。国内外の研究者と共同研究ネットワークを結び、人工胎盤システムの開発など新生児の命を救うための先端研究を推進してきた。平成29年八戸市立市民病院新生児集中治療センターを経て、平成31年より現職。

新生児の命を救うだけでなく
子育てを支援していく必要性。

  • 日本では医学の進歩とともに、小さく生まれる赤ちゃんの救命率は飛躍的に上昇している。しかし、それに伴い、障害や疾患を持つ赤ちゃんも増加し、産後の支援体制が課題となっている。一方で、社会的困難を持つ妊産婦も増加しており、こちらも子育て期までの長期の支援が求められる。妊産婦を取り巻くこうした問題は、病院だけでは解決できない。地域の医療資源・社会資源を有機的に活用したトータルな支援が必要だろう。

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