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ヨナハ総合病院
急性期を脱したが、症状の不安定な患者に
最適なリハビリテーションを提供するために。
ヨナハ総合病院の回復期リハビリテーション病棟では、二人の専門医を中心に、セラピスト(理学療法士・作業療法士・言語聴覚士)、看護師、栄養士、薬剤師、介護士、医療ソーシャルワーカーがチームを組んで、身体機能の回復とADL(日常生活動作)の自立をめざして訓練を行っている。専門医の一人は脳神経外科の今村暢希、もう一人は整形外科の杉村育生。二人の医師がそれぞれ、脳血管疾患発症後の患者、骨折手術後の患者を主に担当し、リハビリテーション計画を効果的に進める役割を担っている。
疾患に応じて専門医が患者を担当するメリットについて、今村は次のように語る。「リハビリテーションのゴールを設定する際、専門医として適切な提案ができます。たとえば、くも膜下出血(脳の血管が破裂する病気)の手術を終え、重い障害の残った患者さん。最初は訓練してもADLの自立は難しそうに思うこともありますが、脳疾患や頭部外傷の場合、損傷を受けた脳の部位によって、身体機能が著しく改善することがわかっています。そうした医学の専門知識を説明すると、チームのみんなは非常に納得し、前向きに訓練に取り組んでくれます。その結果、実際、歩いて帰れるまで回復する患者さんもたくさんいらっしゃいますね」。
一方の杉村は、「専門医が治癒経過を診ることで、安全なリハビリテーションを提供できます」と話す。「たとえば大腿骨骨折の手術を終えた患者さんのなかには、まだ骨の結合部が不安定で、急に訓練の量を増やすと、骨がずれてしまうことがあります。そうしたことが起きないように、私が毎日診察して、体重をかけた訓練を行うタイミングなどを慎重に判断しています」。さらに、杉村は、同院のリハビリテーション体制について次のように語る。「当院の誇りは、優秀なセラピストを中心としたチーム医療の質の高さだと考えています。多職種の一人ひとりが患者さんを〈自分の患者さん〉だという意識を持ち、症状や生活背景についてよく理解しています。だからカンファレンスでも話が通じ合うし、効果的なリハビリテーションを提供できていると思います」。
脳神経外科と整形外科の専門医を回復期リハビリテーション病棟に配している背景には、回復期において医療の必要な患者が増えているという事情がある。国の医療政策により、急性期病院における患者の平均在院日数は年々短縮化。急性期治療を終えた患者は、完全な治癒を待たずに回復期の病棟へ移り、再発や合併症を予防しながら生活復帰をめざしていかねばならないのだ。
そうした事情が、回復期の病棟に大きな負荷を与えているのも事実。「以前に比べ、症状が不安定な状態でもご紹介いただくケースが増えている」と、二人の医師は口を揃える。「ただ、それだけ私たちを信頼して、医療必要度の高い患者さんを送っていただいているわけですから、責任の重さを痛感しています。症状によっては紹介元の先生に相談するなど、常に緊密な連携を心がけています」と杉村は言う。
このように地域の急性期病院との連携を深める同院だが、地域連携は在宅医療・介護チームにも向けられている。「地域のケアマネジャーさんや介護施設の方々とも、顔の見える関係を築くよう努めています。今はコロナ禍で中断していますが、桑名市主催の〈在宅医療と介護の多職種研修会〉などにも積極的に足を運び、皆さんと情報交換しています。顔見知りの方が多いので、療養中の患者さんに何かあったときも相談しやすいと思います」と今村は話す。脳血管障害の患者の場合、生活復帰した後も何らかの後遺症が残り、リハビリテーションを継続することも多い。そんな患者の病状について、リハビリテーションに精通した脳神経外科医にいつでも相談できるのは大変心強いことだろう。同院の回復期リハビリテーション病棟は、桑名・員弁地区で唯一の存在である。「急性期病院と在宅を繋ぐ重要な拠点として、これからも地域の皆さんの信頼に応えていきたいと思います」。今村は力強い口調でそう締めくくった。
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