十数年前からコツコツと計画を練り上げてきた新病院が、令和3年11月1日にオープン。ヨナハ総合病院とヨナハ産婦人科小児科病院が合併し、185床の「ヨナハ丘の上病院」として新しい一歩を踏み出した。これまで新病院計画の最前線で舵を取ってきた古橋亜沙子副理事長に、新病院の特徴や医療機能について話を聞いた。
「当院は、この地域の人々の命の誕生から在宅療養までの人生を一貫して支える病院です。その使命を実践するために、多様な医療機能をバランスよく強化していく考えです。まず、得意とする周産期医療ではこれまでの伝統を受け継ぎ、ハイリスクな症例も含め妊娠・出産から子育て期まで継続して支えていきます。次に救急医療ですが、国道421号線に面していることから、以前よりも需要が増えると想定しています。マンパワーを増強しながら、幅広い救急疾患を受け入れ、必要に応じて高度急性期病院へ紹介する体制を築いていきます。急性期の治療機能も強化します。3室の手術室は充分な広さを確保し、将来的にはロボット支援手術にも対応していきたいと考えています」。
「回復期では桑員地域で唯一の回復期リハビリテーション病床を持つ病院として、脳神経外科と整形外科の両分野においてさらなる充実を図っていきます。ゆとりを持たせた病室や廊下、屋上庭園など、院内全体を使って効果的なリハビリテーションに取り組める環境を整えています」と、古橋は話す。
このように急性期から回復期、療養期まで継続した医療を提供する体制は、在宅へと繋がっている。「この桑員地域においても高齢化が急速に進み、在宅医療のニーズが高まっています。新病院では、在宅療養中の急性増悪などにフレキシブルに対応する地域包括ケア病床を有効に活用し、在宅でも安心して療養できるよう支えていく計画です。さらに、在宅療養支援にも力を注ぎ、地域に根ざした医療・介護・福祉を実践していきたいと考えています」(古橋)。まさに新生児から高齢者まで、救急から在宅医療まで、あらゆる人々のニーズに満遍なく応え、地域医療に貢献していく計画である。
大勢のスタッフが力を合わせて準備を進めてきた、理想の病院づくり。しかし、令和2年2月頃から新型コロナウイルスの流行が拡大。一時は感染予防に追われて、新病院の計画が進まなかった時期もあったという。だが、その半面、かつて経験したことのないコロナ禍は、新病院のあり方にプラスの影響も与えた。「たとえば、感染症に配慮した外来や病室を設けるなど、より高度な感染予防対策を盛り込むことができたと思います。また、以前の施設は動線が複雑で、三密を避けられない場面もありました。その反省から、新病院では、透析患者さんが最短距離で2階の透析センターへ行けるようにするなど、患者さんの安全第一の設計になっています」と古橋は説明する。
さらに、新しい病院は、職員たちのチーム医療を推進する場として工夫されている。各病棟のスタッフステーションは広くオープンな設計で、スタッフ間の活発なコミュニケーションを促す空間だ。また、同院の敷地には病児保育室を設け、子育てしながら仕事に専念できる環境を整えている。「私たちは、医師が頂点に立つのではなく、多職種がそれぞれの専門性を活かし活躍する組織づくりをめざしています。その思想を最大限に映したのが、このヨナハ丘の上病院です。患者さんを真ん中において、お互いに高め合っていきたいと考えています」と古橋。その協業にかける思いは地域にも向けられている。新病院では会議室を充実させ、医療、介護、福祉に関わる人々と一緒に、勉強会などを積極的に開催していく計画だ。「近隣の方々に当院の施設を使っていただき、みんなで活発に議論して、地域全体の医療力・介護力を底上げしていきたいですね。医療・介護・福祉を繋ぐ連携拠点として、医療と生活を不断に繋ぎ、人々の安心の暮らしを支えていきたいと思います」。古橋はまっすぐ未来を見つめて、そう話した。
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