「ずっと安心」を実現するために

Human’s eye

基幹病院は地域医療連携推進の「真の盟主」たれ

未曾有の大規模災害として私たちの記憶に刻まれている東日本大震災から、既に8年が経過しようとしています。発災直後から県内の多くの病院がDMAT(災害派遣医療チーム)や医療救護班を派遣されました。その時の経験から私たちが得た最も重要な教訓は、「大災害時には、地域の医療の問題点が先鋭化して現れるものであり、平時からの地域連携の充実強化が最も重要である」ことでした。予測困難な事態に立ち向うためには、地域の医療を担う病院や施設間の日頃の連携関係が「免震・耐震」の強靭さと、復元力とをあわせ持つことが必要です。災害対策と同様に、平時においても、これから先、医療介護の要請が増大して行く状況に対峙するために、限りある医療介護資源を、最大限有効に活用できる地域連携のネットワークづくりに、邁進しなければなりません。

現在、<地域における効率的かつ良質な医療提供体制>を実現するために、地域医療構想をツールとし、医療の機能分化と連携推進の取組みが国策として進行中です。急性期から在宅医療まで適切な医療が、将来にわたって継続的に受けられるようにすることを目的とし、2025年の医療提供のあるべき姿に向かって医療関係者が自主的な取組みを通じて、この目標に近づいて行くことが求められていますが、人口動態からみて、愛知県では2040年までの視野を持つべきであることは論をまちません。

緩やかなアライアンスとして、情報の共有・人材の交流・医療従事者の研修機会充実などの取組みは、今直ぐにでも可能であり、すでに取組まれていることです。そのような普段からの実質的な連携を充実させ、実態が伴って行く先に、『地域医療構想区域に立脚し、支配関係のない〝連携以上・統合未満〟の連携組織』たる、真の連携ネットワーク組織が誕生する筈です。遠くの親戚よりは、まずもって隣人です。それぞれの医療機関が、所在地の責任医療圏における、強固なネットワーク組織の確立へ積極的参画することが不可欠であり、それがあってこそ、病院個々の存在も担保できると考えています。地域における基幹病院は、地域医療構想達成へ向けた医療者の自主的な取組みのリーダーとしての自覚を持ち、連携強化の積極的な旗振り役を果たすとともに、地域医療構想の大義名分のもとに、大学対病院群(地域医療構想圏域内)としての発想で、各病院事業者のみならず自治体、医師会という地域のステークホルダーの叡智を結集して、大胆な戦術を繰り出すことが出来るのか、戦略性が大いに問われます。

一般社団法人愛知県病院協会 会長 浦田 士郎 氏

PROFILE

一般社団法人 愛知県病院協会 会長 
浦田 士郎
1981年、名古屋大学医学部卒業。日本整形外科学会専門医、日本手外科学会専門医、日本リハビリテーション医学会指導医、日本リウマチ学会専門医。2008年より愛知県厚生連安城更生病院病院長。2017年より愛知県病院協会会長、愛知県病院団体協議会代表。